またもやEURは、ユーロ圏の経済に関するニュースが予想よりも良好であったにも拘わらず、上昇することはなかった。一方、USDは、米国に関する良いニュースを受けて着実に上昇した。月曜日に発表されたユーロ圏の製造業PMIの上昇にも拘わらず、EUR/USDが支持されることはなかったが、製造業ISM指数における予想外の上昇を受け、USDは、火曜日、全面高となった。同指数は、7月の55.4と堅調な水準から、8月には54.0へと低下することが予想されていたが、55.7へとさらに上昇した。同指数は、新規受注と生産に関する極端に高い数値によって押し上げられたのである。特に新規受注の好調さが奏功し、これは将来の製造業を占う先行指標であることから、9月のISMが同様に好調であることが伺える。オバマ大統領を応援する共和党の長老の中には、シリアでの軍事行動を推奨する者もあるというニュースが、強気なセンチメントに水を差したが、FFレート先物による金利予想が、5bp程度上昇して7月5日のピークの水準に並んでその日を終えた。G10通貨中、対USDで顕著に上昇した唯一の通貨は、AUDであり、火曜日のオーストラリア準備銀行の会議後に始まった上昇が続いた。
リスクセンチメントが回復し、世界経済に対する見通しが全般的に明るくなったにも拘わらず、新興市場通貨が下落し続けている点は注目に値する。INRとIDRがこれほどまでに毎日下落するとは思いもよらないことであるが、実際にはそうなっている。この点が懸念材料である。大きな危機は、小さな始まりから生じる可能性があることを肝に銘じるべきだろう。タイがアジア危機の口火を切った1997年当時、同国は、世界経済の中のほんの小さな部分にすぎなかった。今年の新興市場の元凶となっているブラジル、インドネシア、インド、南アフリカ、トルコの5か国は、当時のタイに比べ15倍の規模である。これが、他の大半のアナリストほど、私がCHFに対して弱気になっていないひとつの理由である。今後より多くの危機が訪れ、スイスの巨額な経常黒字に支えられた安全資産であるCHFに対する需要が続く可能性は高いと考えられる。
本日、ユーロ圏に対する8月のサービス業PMI確報値が発表されるが、月曜日の製造業指数が、市場にほとんど影響を与えなかったことを考えれば、これらの指標もそれほど影響を与えることはないだろう。ユーロ圏の7月の小売売上高は、前月比で、6月の-0.5%から一転0.2%のプラスに転じると予想され、この月に関して見られた消費者信頼感の小幅な回復と一致するするだろう。これがある程度EURに対する支持材料となるだろう。本日は、第2四半期のユーロ圏のGDP修正値も発表される予定であるが、総合指数が修正されることはまずないだろう。米国では、6月の貿易赤字が342億ドルと予想外の縮小を示したが、7月に関しては388億ドルと、より通常の水準にまで拡大したとみられる。この日遅くには、FRBがベージュブックを発表する。カナダ銀行の金融政策委員会が開催され、エコノミストは、全会一致で、オーバーナイト・レートを1.0%で据え置くと予想される。
マーケット
EUR/USD
• EUR/USDは引き続き下方への小幅な動きとなり、1.3152(S1)と1.3231(R1)の間の水準に留まった。本原稿執筆現在において、同ペアは、1.3152(S1)のサポートを若干上回っている。この水準を明らかに突破すれば、次のサポートである1.3077(S2)を目指すだろう。20期間移動平均が200期間移動平均を下回っている上、MACDの数値が弱気な領域にあり、同ペアの弱気な様相を裏付けているため、EUR/USDは、この方向に動くと予想される。
• サポート:サポートは、1.3152(S1)水準に見出され、1.3077(S2)と心理的水準である1.3000(S3)がこれに続くだろう。
• レジスタンス:レジスタンス水準は、1.3231(R1)に存在し、心理的水準である1.3300(R2)と1.3400(R3)がこれに続くだろう。
USD/JPY
• USD/JPYは、上昇チャネルの上限でレジスタンスを見出した後、横ばい推移となった。同ペアは、依然として上昇トレンドにあるが、現在、99.13(S1)と心理的に切りの良い数字である100.00(R1)の間にある。この重要な水準を明らかに突破すれば、投資家の意図が明らかになるだろう。次に彼らが試すのは100.84(R2)だろう。しかし、RSIもストキャスティック・オシレーターも、買われ過ぎの水準に近いところにあるため、近い将来戻しがあったとしても不思議ではない(ただし、最近の数ヵ月間において、USD/JPYは、かなりの期間において、テクニカル的観点からは買われ過ぎの領域にとどまったことがたまにあった)。より長期的な枠組み(日足チャート)では、価格は、シメトリカル・トライアングルの上限を突破し、同ペアの強気な様相の有意性を高めた。
• サポート:サポート水準は、99.13(S1)に存在し、98.09(S2)と心理的水準である97.00(S3)がこれに続くだろう。
• レジスタンス:レジスタンス水準は、切りの良い数字である100.00(R1)にあり、100.84(R2)と101.52(R3)がこれに続くだろう。
GBP/USD
• 昨日、GBP/USDは横ばいとなり、依然として1.5569(R1)のレジスタンス水準を下回って苦戦した。買い圧力が十分に強ければ、価格はこの水準を超えて押し上げられ、下落調整の収束と、次のレジスタンスである1.5674(R2)に向けた上昇トレンドの継続を示唆するだろう。MACDオシレーターは、均衡を意味するゼロ水準を上回ってクロスし、同ペアに対する強気なモメンタムを示唆しており、このシナリオを支持している。
• サポート:サポート水準は、1.5425(S1)、1.5296(S2)、1.5200(S3)にある。
• レジスタンス:レジスタンスは、1.5569(R1)に認められ、1.5674と1.5752(R3)がこれに続くだろう。
金
• 金は、1394(S1)水準(昨日のレジスタンス)をどうにか上回った後、上昇した。現在、価格は、1422(R2)のレジスタンス水準に向かっている。買い手が十分に強く、この水準を上回るところへ価格を押し上げることができれば、その次のターゲットは1440(R2)水準となり、短期的な高値を更新するだろう。MACDは、なじみ深いゼロを上回る水準に回帰しており、価格上昇のモメンタムの有意性が高まっている。しかし、価格上昇に失敗すれば、先週以来経験している短期的な調整の継続を示唆することになるだろう。
• サポート:サポート水準は、1394(S1)に存在し、1376(S2)と1347(S3)がこれに続くだろう。
• レジスタンス:レジスタンスは、1422(R1)水準に認められ、1440(R2)と1485(R3)がこれに続くだろう(日足チャート)。
原油
• 米国の共和党の長老たちが、オバマ大統領がシリアへの攻撃を決定したことを承認したため、WTIは大幅に上昇した。107.53(S1)水準(昨日のレジスタンス)を上方突破し、108.85(R1)にある取引レンジの上限に達した。現在、価格は、この水準を下回っており、長期的保有者が、この水準での攻防に勝つだけの強さを持ち合わせているなら、横ばい推移からの本当の脱出が生じる可能性がある。しかし、RSIの数値もMACDの数値も、中立的水準に近いため、次の価格動向を示す示唆は何ら見当たらない。
• サポート:サポート水準は107.53(S1)105.50(S2)、103.44(S3)に存在する。
• レジスタンス:レジスタンス水準は、108.85(R1)に存在し、112.14(R2)と114.21(R3)がこれに続くとみられ、これらは週足チャートに見出される。
通貨レートベンチマーク - 今日の勝者と敗者
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