去年後半はリーマンショック以来の原油急落の半年だったが、ここにきて原油のトレンドが変わりつつある。NY先物市場の原油価格は去年6月に1バレル=107ドルのピークをつけた後下げ始め、今年1月には44ドルと半額以下になった。その後しばらくは45~50ドルで推移していたが、3月には安値を更新して一時42ドル台をつけた。
ただそれから動きが変わり、上昇が続いている。5月1日現在ですでに60ドル寸前の59ドル台まで上昇し、また4月は久しぶりに月間10ドル以上の上げで終わった。
原油のトレンドが変わったのにはいくつかの理由がある。1つには、原油価格が急落したために競合品であるシェールオイルのプロジェクトが次々と中止・縮小に追い込まれたこと。そして同時に、原油の採掘プロジェクトも同様に中止・縮小が増えた。そのために原油の供給量が減る見通しとなり、またシェールオイルの減産は原油の需要を拡大させた。
去年後半の下落は、世界最大の原油輸出国であるサウジアラビアが減産に消極的だった要因が大きい。サウジは今になっても減産をする気はなく、それを考えると原油価格が上昇しているとはいえ、極端な高騰は考えにくい。
しかし原油が上がってくると、日本や他国への影響が当然出てくる。去年10月の日銀追加緩和で円安が進行し、食料品などの調達コストが上がり値上げが相次いだ。それでも原油安があったから、ガソリンなどの価格は上がらずなんとかやっていけた。ここに来て原油価格が上がったら、国内のガソリン価格が上昇し国民の生活はさらに苦しくなるだろう。