【先週の概況】■ドル強含み、日米金利差拡大の思惑が再浮上先週のドル・円は強含み。
日本銀行の黒田総裁が国会答弁で「物価安定目標の実現に必要なら追加緩和を検討する」と発言したことや、20日に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)会合の議事要旨(1月29−30日開催分)には年内の利上げ停止に関しては明確ではないとの見解が記されていたことから、ドル買いにつながった。
米中通商協議において通貨安定が組み入れられるとの報道を受けてドル売りが一時優勢となったが、日本銀行による追加緩和の可能性は残されていることから、リスク選好的な円売りが活発となった。
22日のニューヨーク外為市場でドル・円は、110円89銭から110円56銭まで下落した。
ムニューシン米財務長官が中国との貿易協議において「通貨操作に関する合意が成立した」と伝えたことを受けたドル売りが観測された。
ただ、黒田日銀総裁は「インフレが勢いを失った場合は追加緩和を実施する可能性がある」との見方を改めて示したことを受けて日米金利差拡大の思惑が広がり、ドル買い・円売りは縮小しなかった。
ドル・円は110円66銭でこの週の取引を終えた。
先週のドル・円の取引レンジは110円39銭から110円95銭となった。
ドル・円の取引レンジ:110円39銭−110円95銭。
【今週の見通し】■底堅い展開か、米追加利上げの可能性残る今週のドル・円は底堅く推移すると予想される。
先週公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)会合の議事要旨(1月29−30日開催分)には、年内の利上げ停止を明示する記述は含まれていなかった。
年内追加利上げの可能性は残されており、日米金利差の拡大を想定したドル買いが入りやすい見通し。
米中両政府による閣僚級貿易協議で中国の知的財産侵害や技術移転の強要など構造問題への対応を巡り、双方は覚書を作成する作業に着手したが、3月1日の協議期限は延長される可能性があることから、懸案事項の処理について米中両国が合意できれば、リスク回避の円買いは一段と後退しそうだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)による年内追加利上げの可能性は残されていることや、サンフランシスコ地区連銀総裁が米国経済のリセッション入りに否定的な見解を示しており、来週発表される10−12月期国内総生産(GDP)などの重要経済指標が市場予想を上回った場合、年内追加利上げを期待したドル買いが見込まれる。
また、欧州中央銀行(ECB)の金融政策に影響を及ぼすインフレ指標や雇用情勢が悪化した場合、ユーロ売り・米ドル買いが強まり、この影響でドル・円の取引でもドル買いが優勢となる可能性がある。
英国の欧州連合(EU)離脱については、保守党や労働党から親欧州連合(EU)派の議員が離党しており、今後の議会採決に大きな影響を与える可能性があるため、ポンド売り(米ドル買い)に振れやすく、目先的に欧州通貨売りは継続しそうだ。
なお、今週27-28日にベトナム・ハノイで開催される2回目の米朝首脳会談では、米国が北朝鮮に対して非核化を促す一方、大規模な経済支援についても議論されるとの見方が浮上している。
また、朝鮮半島の非核化が早い時期に実現される可能性が浮上した場合、東アジアにおける地政学的リスクの大部分は将来的に除去されるとの見方が出ており、リスク選好的な円売り材料となる可能性もある。
【米・10-12月期国内総生産(GDP)】(2月28日発表予定)28日発表の10-12月期国内総生産(GDP)は、米国経済の減速を示す内容になりそうだ。
4-6月期は前期比年率+4.2%、7-9月期は同+3.4%と成長は徐々に鈍化。
10−12月期の成長率はさらに低下し、2%台になると予想されており、FRBの金融政策は弱気にならざるを得ないだろう。
【米・12月PCEコア指数】(3月1日発表予定)3月1日発表の米12月PCEコア指数は、前年比+1.9%の見通し。
FRBの目標でもある前年比+2.0%をやや下回るものの、インフレ鈍化の思惑はやや後退し、ドル買い材料になるとみられる。
予想レンジ:109円50銭−112円50銭