[上海 18日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)の劉国強・副総裁は、火力発電や鉄鋼、セメントなどの炭素集約型産業での気候関連コスト上昇によって、中国の銀行がデフォルト(債務不履行)リスクの高まりに直面すると警告した。18日に発表された人民銀の『チャイナ・ファイナンス』でコメントした。
中国人民銀行は昨年、23の主要銀行を対象とした気候変動リスクのストレステストの第1段階を完了し、このテストで3業種が炭素排出に対して支出が必要となる可能性に焦点を当てていた。
劉氏は「テストの結果、火力発電や鉄鋼、セメントの各部門の企業が低炭素化を進めなければ、(異なる)ストレスシナリオ下で程度の差はあれ、返済能力が低下することが示された」と説明している。
排出コストの上昇や「産業の代替」を促進する政策によって「移行リスク」が生じるとも指摘している。
劉氏は、銀行が他の排出量が多い産業部門からどのような影響を受けるかを確認するために、さらにテストを実施するとも説明した。
世界最大の温室効果ガス排出国である中国は、カーボンプライシングを進めるべく国家排出権取引制度を昨年導入した。
この制度には2000を超える石炭火力発電所が参加しているが、セメントや鉄鋼などより多くの部門が含まれ、コンプライアンス(法令順守)にかかるコストが上昇する可能性が高い。
炭素1トン当たりの認可価格は60元(9.48ドル)未満だが、アナリストは数年以内に200元まで引き上げられる可能性があると予測している。
中国は、よりクリーンなエネルギーへの移行を進めているが、金融機関は化石燃料への支援を続け、新規の石炭火力発電所の建設のための融資や査定業務を手掛けている。
中国は外国での石炭火力発電所への金融支援の終了を表明しているが、現在予定されている事業が進むかどうかは明らかになっていない。