[25日 ロイター] - ウクライナに侵攻したロシア軍は24日、北部のチェルノブイリ原子力発電所を占拠した。同原発は1986年に起きた事故の影響で今も放射能に汚染されているが、ロシアが早期に掌握した理由を考えると次の狙いがうかがえる。
チェルノブイリはベラルーシからウクライナの首都キエフへの最短ルートにあり、ロシア軍が北部から侵攻を進める上でチェルノブイリ原発掌握は論理的な戦略と言える。
米陸軍元参謀総長のジャック・キーン氏は、チェルノブイリに「軍事的な意味はない」としながらも、ベラルーシからキエフへの最短ルートに位置し、ウクライナ政府を追放するロシアの戦略の標的になっていると指摘する。
キエフの北方100キロ余りにあるチェルノブイリ原発の4号炉は86年4月、安全実験の失敗で爆発し、欧州だけでなく米東部にまで放射能が拡散した。
米カーネギー国際平和財団のジェームズ・アクトン氏は、チェルノブイリ内で事故が起きれば大きな問題になるが、立ち入りが禁止されていることから市民には大きな影響は与えないだろうと指摘。
また、ウクライナ国内にある原発4基は安全に稼働しているが、施設には核燃料があり、「周辺での戦闘のリスクは著しく高い」と懸念した。
25日に日本外国特派員協会で会見したセルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ特命全権大使は、チェルノブイリ原発の従業員がロシア軍に拘束されたと明らかにした。