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エネルギー・貴金属 - 週次レビューと見通し

発行済 2022-03-13 18:50
更新済 2022-03-13 17:36
© Reuters

執筆: Barani Krishnan

Investing.com -- 先週、「クレイジー・コモディティ」の世界は、資源業界の2大マクロ資産である原油と金がともにパラボリックな動きをみせず、やや小休止となった。

とはいえ、ニッケルは先週一時96%という驚異的な上昇をみせたあと、先々週の19%上昇に続き、先週は66%上昇して引け、市場の狂気が再確認された。ステンレス鋼と電池製造に使用されるニッケルは、1年前に比べて200%、1トン当たり32,000ドルも上昇している。

小麦やロンドンで取引されているガスオイルなどの一部のコモディティは、ロシアとウクライナの戦争によってファンダメンタルズは大きく悪化し、投資家からの評価や消費者の需要を伸ばすことには限界があるとみられ、最近の上昇の大部分から大きく値を下げた。

ロシアと西側諸国との対立は3週間目を迎え、バイデン大統領とその同盟国はロシアへの経済制裁を次々と打ち出している。消費者の忍耐力は限界まで試され、エネルギーと食品価格の今後の変動にすぐに終わりがみえるとは思われない。

今週も簡単にはいきそうにない。3月に行うかどうかを巡って何ヶ月も憶測が飛び交った後、連邦準備制度理事会(FRB)は今週開かれる政策決定機関である連邦公開市場委員会(FOMC)で、コロナ禍以降で最初の利上げを行うことが99.99%確実となった。

パウエル議長が25bpsという「軽い」アプローチを貫くのか、それともセントルイス連銀の Bullar総裁やFRBのWaller高官らタカ派が言うように、より積極的な利上げ(50bps)をせざるを得ないのかは、まだ不明である。確かに、Investing.comが公開しているFed Rate Monitor Toolでは、来週に25-50bpの引き上げが行われる確率は94.9%となっている。

ブルームバーグは今週の解説で、パウエル議長が試みた経済的軟着陸(ソフト・ランディング)について、興味深い飛行機着陸の例えを用いて説明している。

2009年にChesley “Sully” Sullenberger機長が、故障したUSエアウェイズ機を安全に操縦し、マンハッタンの極寒のハドソン川に不時着させた「ハドソン川の奇跡」のように、パウエル議長は3億3千万人の国民のために、奇跡のソフト・ランディングを試みている。

飛行機の不時着とは異なり、パウエル議長はより巧妙な軟着陸をしなくてはいけないということだ。パウエル議長の使命は需要を冷やし、経済を後退させない程度に金利を上げることで、40年来の高水準にあるインフレを抑制することである。

FRBはこれまでにもこのようなことをやってきた。四半世紀前、FRBの最も象徴的なスターである当時のアラン・グリーンスパン議長は、1994-95年に、債券市場と株式市場の大暴落にもかかわらず、インフレ圧力を押さえるために厳しい利上げと穏やかな利上げを組み合わせ、このようなソフト・ランディングを成功させた。

しかし、ブルームバーグが指摘するように、パウエル議長にとっての問題は、ロシアのウクライナ侵攻によって世界の金融・エネルギー市場に動揺が生じ、その抑制が困難になったことである。毎月の記者会見で議長は金融政策の見通しに関して言及しているが、今後の発言内容には注目が集まる。

Moody’s Analyticsのチーフ・エコノミスト、Mark Zandi氏は、「非常に厄介なことになりそうだ」と述べ、エネルギー・コストの上昇を指摘し、株式市場やクレジット市場の低迷とともに、消費者の需要を減退させ、景気後退の可能性を高めると述べた。

「パウエル議長が舵を握る米国経済という飛行機は、パンデミックによる厳しい横風と、地政学的リスクによる不確実性から生じる多くの霧にさらされながら、非常に速い速度で滑走路に入ってきている」と同氏は述べた。

「3月会合での25bpsの利上げは、ほとんど意味を成すものではなくなってきてしまっている。そして、間違いなく(ロシア・ウクライナ紛争によって)さらに煽られているインフレの勢いにハンド・ブレーキをかけることにはならないだろう」とAllianzのETF戦略部長、Johan GrahnはInvesting.comに語っている。

パウエル議長は当初、FRBの迅速な景気刺激策によってコロナ禍に伴う不況が完全な恐慌に発展するのを防いだことで称賛を得たが、FRBはインフレ問題を一過性のものと完全に見誤っていたと認めた後は特に、インフレ対策がうまくいかないことの主犯に挙げられてしまっている。  

FOMCの会合回数と同様に今年最大で7回の利上げを行う見込みだ。FRBは2020年3月にコロナ禍が発生して以来、経済を支えるために米国債と住宅ローン担保証券を大量に購入してきた。今後は現在8兆9千億ドルにまで膨らんだバランス・シートを縮小する予定である。

この措置は、金融システム内の資金を減らすことになるが、債券市場や株式市場にも先行き不透明感が漂う。危険なのは、こうした最初の動きに呼応してインフレが沈静化しなければ、政策立案者は結局、金利を上げすぎて景気を後退させ、金融市場を低迷させる可能性があることだ。

Lawrence Lindsey前FRB理事は、Bloombergの記事を引用し、2023年末までの景気後退の確率を50%以上として、「一方向にかつ深刻なほど間違っている場合、景気悪化を防ぐためには多くの困難に対処しなくてはならないだろう」と述べている。

要約すると、25bpsの利上げは今週、市場全体にほとんど波乱をもたらさず、株式から債券、為替、コモディティへのリスク・テイクをさらに促進する可能性があると予想される。

50bpsの利上げは、株式市場の暴落が意識される中で、金や原油も急落するなど、深刻な影響を与えるだろう。インフレも一時的に停止する可能性はある。しかし、落ち着いていた物価上昇圧力が再び高まることを望まないのであれば、FRBはもっと多くのことを行う必要があることは間違いないだろう。

RBCのコモディティ・アナリスト、Michael Tran氏がAustralian Financial Reviewに語ったように、ほんの1ヶ月前には馬鹿げていると思われたことが、今では実現する可能性があるのだ。

「夏までに価格が1バレル200ドルに跳ね上がり、不況に拍車がかかり、年末には50ドルに近づくことも不可能ではない」と、原油価格が上昇し続けた場合の石油需要破壊への懸念が高まっていることに言及した。

「はっきり言って、これは我々の既定路線ではないが、このようなシナリオは今日、あり得ない話ではないと思う」と同氏は述べた。「2週間前なら、このような考えは馬鹿げていただろう。この24時間、ブレント原油は20ドルのレンジで取引された。もう何が起きても不思議ではない。」

原油:価格動向とテクニカル分析による見通し

世界の原油ベンチマークブレント原油は、先週金曜日の取引で3.09ドル(2.8%)上昇し、1バレル112.42ドルで取引を終えた。週を通してみると4.6%の下落だ。

ウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)は、金曜日の取引を3.18ドル(3%)高の1バレル=109.20ドルで終えた。週を通してみると5.8%下落した。

「前週は、WTIが130ドルを試し、103ドルまで急落した後、週足で109ドルに落ち着くなど、激動の週となった」とskcharting.comのチーフ・テクニカル・ストラテジスト、Sunil Kumar Dixit氏は言う。

同氏は、WTIの週足終値がフィボナッチ・リトレースメント23.6%で終わっていなければ、表面上は「極めて弱気」とみなされる可能性があると述べた。

「このレベルを維持すれば、原油はフィボナッチ38.2%レベルの113ドル、50%レベルの116ドルまで上昇する可能性がある 」という。

WTIの更なる上昇は、このフィボナッチ50%レベルの116ドルに対する市場の反応に大きく依存し、この上を維持することで61.8%レベルの120ドル、78.6%レベルの124ドルまで回復を拡大することができるかもしれない。

「50%~61.8%の116~120ドルのレジスタンスに阻まれると、WTIは再び103ドルまで下落する可能性がある」と警告している。「これらの水準を下回って維持されると、原油は95ドル、86ドル付近まで下がる恐れもあり、リスク・プレミアムなしのフェア・バリューとなるかもしれない」と同氏はみる。

金:価格動向とテクニカル分析による見通し

ニューヨークのComexで最も活発な金先物取引である4月限は、金曜日、8.15ドル(0.4%)下がり、1オンス=1992.25ドルで引けた。週次では0.9%の上昇だ。

スポット金は、8.47ドル(0.4%)下落し、1,988.55ドルで金曜日の取引を終えた。週次では、0.9%の上昇だ。

Dixit氏は、高値2074ドルを超えようとしたスポット金の大きな動きは、2070ドルで萎み、金曜日に1958ドルまで一気に下げたが、その日の安値を30ドルほど上回る1988ドルで週明けを迎えることができたと指摘した。

「週に大きな変化や記録的な高値がなかったにもかかわらず、金は1,977ドルから2,070ドルまで93ドル上昇し、その後1,958ドルまで112ドル下落したことは、この週の変動が大きかったことを示している」と同氏は話す。

今後1週間、1,974ドルと1,958ドルの安値の間の値動きを見守ることになるだろうと述べた。

「注目すべきマイナー・レンジは、1,958ドルから2010ドルだ。価格は、2,020ドルと2,032ドルのレベルを再び試すために、2,010ドルを突破して維持する必要があり、これらは、下値を狙う売り手に再び狙われる可能性がある」という。

その反面、1,985~1,980ドル以下の弱さは、1,958ドルを再び試す動きに向けた売りバイアスを示すかもしれない。

「このレベルを破り、維持すると、調整は1,934ドル、1,900ドルまで拡大する可能性がある。月曜日のアジア時間序盤は、市場がギャップを持って始まる可能性が高いため、注目される。」

免責事項:Barani Krishnanは、自身が執筆しているコモディティおよび証券のポジションを保有していない。

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