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エネルギー・貴金属:週次レビューと見通し

発行済 2022-04-03 18:34
© Reuters.

執筆:Barani Krishnan

Investing.com -- 米露の2大統領は非常に大胆な賭けに挑戦している。プーチン大統領は、ロシア産天然ガスの代金をルーブルで支払うよう欧州に要求し、バイデン大統領は、原油やガソリン価格の上昇を食い止めるために十分な量の石油を自国内で供給することを望んでいる。

両者の思惑がどこまで通用するのか、興味深く注視している。

すでに冬の暖房需要のピーク時期は終わっていることから、ロシアの「ルーブルで払うか、天然ガスを購入しないか」という脅しは、欧州の買い手がどれだけ必死になって要求に応じるか、疑問が残るところである。

春が訪れ、夏がやってくると、ロシアの対応も変わってくるかもしれない。

天然ガスはロシアにとって大きな外貨獲得手段である。

ロシアの天然ガス生産会社Gazprom (MCX:GAZP)から入手した最新のデータでは、2021年1月から9月の間に1760億立方メートル(176bcm)の天然ガスを輸出しており、欧州、トルコ、中国への販売による収入は2兆5千億ルーブル(310億ドル)であったとされている。

もしEUがロシアの要求を拒否した場合(拒否することを求める声はすでに十分ある)、欧州がロシアとの取引や妥協を検討するくらいにまで寒さが戻る晩秋まで、両者のにらみ合いが続く可能性もある。それは11月になるかもしれない。そしてロシアとの対立が深まった場合、その後の向こう7ヶ月間、欧州には天然ガスを販売しないということにもなりかねない。

その間にロシアは、約72bcmを貯蔵できる国内の貯蔵施設に天然ガスを送り込まざるを得なくなるかもしれない。Gazpromが所有する欧州の貯蔵施設には、9bcmを追加的に貯蔵することができる。

Gazpromは、ロシア国内の天然ガス需要が2020年の238bcmから2026年には260bcmに増加すると見込んでおり、貯蔵所の拡張を計画している。

短期的には、欧州向けの天然ガスを既存の貯蔵所に振り向けてしまうと、3〜4ヶ月で貯蔵所は満杯になり、その後一部の天然ガス生産は停止に追い込まれ、長期的な成長にダメージを与える可能性があると、アナリストは述べている。

SEB Researchのアナリストは、「ロシアにとって、供給制限の決定は自らの足を引っ張るようなものだ」と分析する。

またEUは、天然ガス供給の途絶を防止し、対応するための措置を網羅した規則を設けているとロイター通信は報じている。

この規則では、早期警戒、警戒、緊急の3つのレベルの危機を特定する。EU諸国は、3つの危機レベルにおいて、供給途絶の影響をどのように管理するかについて計画を立てることが求められている。

緊急事態において、欧州政府が介入できるのは、市場ベースの対策では家庭や必要不可欠なサービスを提供する顧客への供給を確保することができない場合のみである。各国の計画においては、各危機レベルにおける産業用天然ガス消費を含む事業者の責任を定義し、緊急時に天然ガスを利用可能にするための行動をリストアップして、各国がどのように協力するかについての計画を立てるべきである。

EUの規制では、加盟国は、天然ガス・インフラが接続する他のEU諸国が、家庭や必要不可欠な社会サービスに十分な天然ガスを供給できないために支援を要請した場合、その国を支援することが義務付けられている。

すでに引き伸ばされている世界の天然ガス市場でより多くを得ようとする以外に、いくつかの欧州諸国は石炭の使用を増やす必要があるとし、原子力発電所の寿命を延ばす可能性や再生可能エネルギーの出力を増やす可能性もあると述べている。

しかし、欧州の企業や家庭はこれ以上天然ガス価格の上昇を受け入れるわけにはいかないため、天然ガス価格の膠着状態が7カ月も続くとは思っていない向きも強い。すでにEUの天然ガスのスポット市場は、1年前と比較して500%も上昇している。ロシアは昨年、欧州に155bcmの天然ガスを供給しており、これはEUの供給量の3分の1にあたる。

米国の液化天然ガス(LNG)輸出業者は、すでに欧州の供給危機の大きな勝者として浮上しており、ノルウェーもまたその恩恵に浴している。先週、米国は今年中にEUに15bcmのLNGを供給するよう努力すると述べたが、これだけではロシアがパイプラインで欧州に送る分を完全に置き換えることはできない。

 Wood Mackenzieの主席アナリスト、Kateryna Filippenko氏は、「欧州が貯蔵する天然ガスは、春と夏には需要抑制なしに十分対応可能かもしれないが、何らかの省エネ対策を講じないと、10月末には貯蔵天然ガスは10%程度しかない状態で冬を迎えるリスクがある」と指摘している。

他の地域からより多くのLNGを得るためには、欧州の天然ガス卸売価格をアジアのLNG基準価格よりも高く維持する必要がある。天然ガス価格の高騰はすでに消費者や産業界に打撃を与えており、各国政府はそれを抑制しようと何十億ユーロもかけて対策を講じている。

「ガスプロムと長期契約を結んでいる企業は、LNG市場よりもかなり安い価格で天然ガスを受け取っていることを認識しなければならない。したがって、我々のエネルギー価格にも影響が出るだろう」とEUのKadri Simson担当委員は先月、EUの議員に対して語った。

最後に、ウクライナ侵攻後2週間で暴落したルーブルが底を打ったのは、ロシア経済に対するトレーダーの楽観論というより、ロシアの中央銀行がルーブルを支えようとする並々ならぬ努力によるものであった。そのためにとられた措置とは、商業銀行による顧客へのドル売り、ロシアの証券会社による外国人顧客への証券売り、ロシア人が銀行口座から引き出せるドルの制限などである。

中央銀行の努力もさることながら、ロシアは原油や天然ガスの輸出で安定的に稼いでいる。その理由の一つは、欧州がエネルギーに依存していることを考えると、制裁そのものがロシアのエネルギー販売を損なわないように設計されているからである。今ロシア産の原油や天然ガスを輸入していない国は、ウクライナに同調するか、政治的な影響を恐れて、そうせざるを得なくなっている。インドはその顕著な例外である。

米国とEUは、ロシアからウクライナ戦争の資金を奪う唯一の方法は、同国に対する既存の制裁措置を微調整し、より効果的な新しい制裁措置を打ち出すことであることを理解している。米国とその同盟国は、原則として、ロシアが戦争を継続するために必要な軍備を購入するのを阻止する必要がある、とWally Adeyemo米財務副長官は話す。

興味深いことに米国に戻ると、バイデン大統領はライバルの共和党議員の間でロシアへの制裁を追加するための支持を得た。しかしその支持を受け入れることに少し躊躇している。11月の中間選挙を前に、自分をさらに政治的陥穽に陥れようとするライバルの策略ではないか、と考えているからだ。

現有関連では、バイデン大統領は木曜日に、世界的な供給不足を緩和するため、今後6カ月間に米国の戦略的石油備蓄(SPR)から過去最高の日量100万バレルの石油を放出すると発表した。大統領にとって最大の問題は、OPEC(石油輸出国機構)とその同盟国、つまりOPEC+と呼ばれる国々の動きであろう。

サウジアラビアとロシアが主導するOPEC+は、原油市場に十分な供給をさせるつもりはない。そのため、原油価格は1バレルあたり100ドルに戻るどころか、150ドルに達する可能性もある。仮に供給量を増やしたとしても、欧米によるロシアへの経済制裁によって、日量300万バレルの供給不足をOPEC+が埋め合わせることはできない。

米国がロシア産原油の輸入禁止を継続し、他の多くの国もウクライナでのいわゆる軍事作戦をめぐるロシアへの制裁により同国との取引を避けているため、エネルギー部門全体のアナリストは今後数ヶ月で供給不足が悪化することを警告している。

このような警告にもかかわらず、OPEC+は木曜日に、5月以降に43万2000bpdの小幅な増産を行うことだけを決定した。これは、アナリストが約500万バレルの増産が必要だと指摘する市場において、通常の月40万バレルの増産からわずかに増加させただけである。

OPEC+はまた、最近の原油価格の変動は「ファンダメンタルズによるものではなく、進行中の地政学的リスクによるもの」であり、ウクライナ戦争に言及したものとみられると発表した。ブレント原油は、ロシアへの制裁措置の直後に14年ぶりの高値となる140ドル近くをつけ、過去1カ月間はほぼ100ドル以上を維持している。

バイデン政権の国際エネルギー問題担当特使であるAmos Hochstein氏は、SPRからの1億8000万バレルの放出は、さらなる供給の始まりに過ぎないと述べている。

しかし、エネルギー市場のアナリストは、この計画の成功に懐疑的なようだ。

オンライン取引プラットフォームOANDAのアナリスト、Ed Moya氏は、「今後6カ月間にSPRから1日100万バレルを放出するという発表による軽率な判断は、原油価格に長期的な影響を与えないために、地政学リスクが激化し続ければ、原油は先週の下落からほとんどを取り戻すだろう」と述べた。

バイデン大統領は、中国、日本、インド、韓国、英国など他の国の備蓄放出と連携し、11月に5000万バレル、3月に3000万バレルのSPRからの放出を命じた。

米国エネルギー情報局によると、3月25日に終了した週の時点で、SPRには5億6830万バレルの在庫があった。半年間で1億8000万バレルを取り崩すと、備蓄量は現在の3分の1にまで減る可能性がある。

バイデン大統領は昨年からSPRを活用し、米国の製油所に対して、支払いは不要だが若干のプレミアムを付けて規定期間内に返却する石油の貸与を開始した。こうすることで、一般市場での石油の取引が少なくなり、原油とガソリンやディーゼルなどの燃料製品の価格が下がることが期待できるからだ。

ここ数週間、政府はSPRから毎週約300万バレルを放出している。しかし、この時期には製油所が通常よりも多くの製品を生産しているため、政府の努力は今のところ価格にはほとんど影響を及ぼしていない。原油の供給が増えても、需要も増加していることから原油価格、石油製品価格もともにほとんど変動がない。

結論として、世界で最も権力を持つ2人の人物が、その地位と巨大な資源を背景に、市場を自分たちの思うように歪曲しようとしているのである。両者の行動がどの程度成功するか、今後の動向に注意する必要がある。

原油:週次センチメント&WTIのテクニカル動向

ロンドンで取引されるブレント原油は、世界の原油ベンチマークであり1バレルあたり102.37ドルと日中安値をつけた後、36セント(0.3%)下落し、104.35ドルで引けた。週次では、ブレント原油は13%下落し、2020年4月以降で最大の下げ幅となった。先週木曜日には、ブレント原油は39%上昇して第1四半期を終えていた。

ニューヨークで取引される米国原油ベンチマークWest Texas Intermediate(WTI)原油は、1バレルあたり100ドルの重要なサポートを下回って推移した。WTIは0.90ドル(0.9%)下落し、日中安値である97.81ドルをつけた後、99.38ドルで取引を終了した。WTIは週次でも約13%下落し、2020年4月以降で最大の下げ幅となった。木曜日、第1四半期の取引は33%増となっている。

WTIの主要トレンドは強気を維持しているものの、週次での弱気な終値は米原油ベンチマークから魅力を奪っていると、skcharting.comのチーフ・テクニカル・ストラテジスト、Sunil Kumar Dixit氏は述べた。

「今後1週間、WTIのサポートは96.45ドル、レジスタンスは108.45ドルとみている」とDixit氏は話す。「101.45ドルを持続的に上回れば、104~106、109ドルをターゲットに買いが集まるはずだ。情緒基調に入れば、111.50ドル~113ドル、117ドルまで値上がりするかもしれない。」

逆に、101.45~106ドルで反落した場合には、WTIは98ドル~93ドルのサポート・エリアまで下げる売り圧力を誘発する可能性がある。

「トレンドが中途半端な場合、92ドル以下まで弱気になり、WTIは88~80ドルにさらされる可能性もある」と同氏は付け加えた。

金:週次市場動向 

発表された雇用統計では、経済がそれほど悪くないかもしれないことを示唆するような労働市場の大幅な改善がみられたが、米国の失業率も低下したため、先週はかなり大きく下落して、金は4月の取引を開始した。これは投資家が今後、金のような安全な資産への依存度を下げる可能性を示唆するものであった。

ニューヨークのコメックスで取引されている金先物前月限は、25.35ドル(1.3%)下落し、1オンス=1923.85ドルで取引を終了した。木曜日に終了した第1四半期の取引では6.6%上昇したのとは対照的に、先週は1.8%下落し週次で下落がみられた過去3回の週次リターンとしては2番目に大きな下落となった。

金は通常、経済や政治の問題に対するヘッジとして機能する。3月にコメックスの前月限は2070ドルまで上昇し、これは2020年8月の過去最高値2121ドルをわずか42ドル下回る水準だ。米国のインフレが過熱し、ロシアによるウクライナ侵攻直後の地政学的緊張が高まっていたための上昇と考えられる。

しかし金曜日には、3月の米失業率が2月の3.8%から3.6%に改善したにもかかわらず、月の雇用増加数は43万1000人増と、エコノミストの予想を12%ほど下回り、金価格は下落した。

連邦準備制度理事会(FRB)は、失業率が4%以下であることを「完全雇用」と定義している。米国は12月に失業率が3.9%に低下して以来、定義上は完全雇用状態にある。

オンライン取引プラットフォームOANDAのアナリスト、Ed Moya氏は、米国10年債利回りが6日ぶりに跳ね上がる中、「強い雇用統計のあと、米国債のイールド・カーブが再び反転する勢いである中、金の動向を不透明なものにしている」と述べた。

「イールド・カーブの短期ゾーンがスティープ化しており、この先の景気後退リスクは高まっているが、今の経済はまだ非常に良好にみえる」と同氏は話す。「金はまだ1900ドルから1950ドルのレンジで取引できるように思えるが、弱気の勢いが勝つリスクは大きくなっている。」

過去40年間で最も速いペースで成長しているインフレを抑制するために必要となる利上げペースを決定するために、FRBは雇用統計の内容を注意深く見守っている。

コロナ禍によって強いられた混乱から2020年に経済は3.5%縮小した後、2021年に米国経済は5.7%と、1982年以来最も速いペースで成長した。

しかし、インフレ率はさらに伸びた。個人消費支出価格指数はFRBが注視する米国のインフレ指標であるが、12月までの1年間で5.8%、2月までの12カ月間で6.4%上昇し、いずれも1982年以来の高い伸びを示している。本来FRBが許容するインフレ率は年率わずか2%である。

FRBは2020年3月のコロナ禍発生後、金利をほぼゼロに切り下げ、景気回復を可能にするため2年間このゼロ金利政策を据え置いた。 先月、FRBの政策決定機関である連邦公開市場委員会(FOMC)は、パンデミック後初めて25bp利上げを決定した。

現在、インフレ率の高止まりがFOMC高官を突き動かしており、5月と6月に開かれる次の2回の会合で50bpsの引き上げを検討するよう促している。FRBはインフレ率を目標としている年率2%に戻すため、今年最大7回の利上げを行い、2023年まで金融引き締めを継続する可能性があると表明している。

FRBのパウエル議長は先月、労働市場は旺盛な需要と控えめな供給で「引き締まりは極めて強い」と述べた。また、今年最初の2カ月間で100万人以上の雇用が埋まったと指摘した。

今週初めに政府が発表した月次報告書求人労働異動調査によると、労働者に圧倒的に有利な状況にあり、求人数が採用数を上回り続け、2月の求人数は過去最高付近で推移していることが分かった。

金:テクニカル動向

WTIと同様、金の主要トレンドは強気であり、ロング勢は大きく下落するたびにポジションを増やし続ける可能性が高いとskchartingのDixit氏は分析する。

1週間続いた弱気トレンドは、金を1,960ドル以下で止まり、1,890ドルでロングが入るか試したが、1,924ドルまで買い戻されたと指摘した。

「今後1週間、金価格の先行き見通しは面白いほどに不安定である」と同氏はみている。「信頼できる一目均衡表による分析では、1888ドルから1877ドルまでの限られた下降の可能性を示しており、1873ドルまで値下がる可能性もある」と分析する。

同氏は、これまでしばしば需要ゾーンとして機能してきたバリュー・エリアで、強い買いが現れると予想している。

「これらのエリアからの旺盛な買いは、金を1928ドル〜1958ドル、1980ドル〜2010ドルまで上昇させる可能性が高い。逆に、もし金が1888ドル〜1873ドル付近で買いが入らなければ、1850ドル〜1820ドルまで深く調整されることが予想される」と懸念する。

免責事項:Barani Krishnanは、自身が執筆しているコモディティおよび証券のポジションを保有していない。

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