[モスクワ 23日 ロイター] - 制裁によって欧州に燃料を輸出しにくくなったロシアが、アフリカと中東諸国に向けたガソリンやナフサの輸出を増やしている。リフィニティブEikonのデータと、複数の関係者らの話で明らかになった。
一方、アジアは既にロシア産原油の輸入を拡大。アジア向けの燃料輸出トップスリーであるロシア、サウジアラビア、米国の間で、アジア顧客の獲得競争が激しさを増しそうだ。
欧州連合(EU)は3月以来、ロシア産原油および燃料の輸入を徐々に減らしており、今年末までの全面禁輸に合意した。
アジアはロシア産原油の購入を急拡大しているものの、アジアは国内需要を上回る量の石油精製を行っており、燃料については純輸出地域だ。
このためロシアにとって、アフリカや中東など新たな燃料の輸出先を確保することは、世界市場におけるシェアを維持する上で極めて重要になる。
ロシア産石油製品の取引に携わる貿易筋はロイターに対し、「ロシアの石油製品供給業者にとって、アフリカと中東は主な選択肢のようだ。従ってEUの禁輸措置が近づく今年後半には、これら地域への出荷がさらに増えるだろう」と述べた。
ロシア金融セクターへの制裁が発動される前、同国は欧州に日量250万バレル余りの原油と日量約200万バレルの燃料を輸出していた。
制裁前、ロシア産ガソリンおよびナフサのアフリカ、中東向け輸出は大半が黒海から出荷されていたが、貿易関係者らによると、現在はバルト海から出発している。
リフィニティブのデータを見ると、5、6月にはバルト海のウストルガ港からオマーンとアラブ首長国連邦(UAE)の石油拠点フジャイラに向けて、ガソリンとナフサを運ぶ貨物少なくとも5個が出荷され、合計約23万トンを供給した。
ロシアからオマーンおよびUAE向けのナフサ・ガソリン輸出は、昨年1年間はゼロだったのが、今年初めからの合計は55万トンに達している。
アフリカではナイジェリアとモロッコが主な輸出先。この他にセネガル、スーダン、コートジボワール、トーゴにも一部貨物が向かった。
ロシア産軽油のアフリカ諸国向け輸出は年初来の合計が100万トンと、昨年1―6月の計80万トンから増えた。
<国内市場は混乱>
ロシア産燃料の輸出先が変わったことで、ロシア国内市場では前代未聞の不均衡が生じている。通常はガソリンの方が軽油よりも高いが、ロイターのデータによると現在は夏用の軽油がガソリンを30―40%上回る価格で取引されている。
これは従来、欧州に輸出していたガソリンとナフサについて他の輸出先を探さざるを得なくなった結果、国内で供給がだぶついて価格が急落したことが原因だ。