Naveen Thukral
[シンガポール 26日 ロイター] - 近年は食料価格の高騰が続いたため、世界中の農家は穀物の作付けを拡大しているが、来年も消費者は主要穀物の供給引き締まりに直面するとみられる。エルニーニョ現象の継続や、生産国による輸出制限、バイオ燃料需要の強さなどが予想されるからだ。
数年にわたって力強く上昇してきた小麦とトウモロコシ、大豆の国際価格は今年、黒海の輸送ルートの制約が和らいだことや世界的な景気後退懸念を受けて、下落に転じる見通し。ただ供給ショックや新年の食品価格上昇に影響を受けやすい地合いは変わらないとみられる。
IKONコモディティーズのオレ・ホウエ氏は「今年は幾つかの重要な産地で収穫が増えたため、穀物の供給環境が改善したのは間違いない。しかしまだ本当に苦境を抜け出したわけではない」と述べた。
同氏によると、エルニーニョ現象は少なくとも4─5月まで続いてトウモロコシの収穫量を減らすのはほぼ確実なほか、中国が国際市場で小麦とトウモロコシを予想より大規模に購入して市場を驚かせているという。
今年アジアの大部分に乾燥した気候をもたらしたエルニーニョ現象は来年前半も解消されないと見込まれ、コメや小麦、パーム油などの生産国や輸入国に悪影響を及ぼしつつある。
例えば来年前半のアジアのコメ生産量については、作付け時の乾燥や貯水池の水量縮小によって減少する、というのが取引業者や当局者の見立てだ。
エルニーニョ現象のせいで既に今年、コメの世界的な供給が引き締まり、最大の輸出国であるインドは出荷を制限している。他の主要穀物が値下がりする中でも、今年のコメの価格は15年ぶりの高水準に跳ね上がった。
インドでは小麦の次の収穫期も雨不足に脅かされており、小麦消費世界2位の同国は6年ぶりに輸入を迫られる恐れが出てきた。
小麦輸出量世界2位のオーストラリアでは何カ月も続いた熱波で今年の小麦の収穫が打撃を受け、来年4月の作付け時期も土壌に十分な水分が確保されないかもしれない。
こうしたオーストラリアの状況を受け、中国やインドネシアなどの大口の買い手は北米や欧州、黒海沿岸諸国など別の供給先からの購入を拡大する可能性が大きく、世界の需給全体に影響しそうだ。
コメルツ銀行は「2023/24穀物年度の(小麦の)供給環境は前期に比べて悪化するだろう。主要生産国からの輸出が大幅に下振れするからだ」と記した。