■富士ソフト (TYO:9749)の事業内容
4. 底入れ気配が感じられるアウトソーシング
アウトソーシングは、データセンターやシステム運用・保守等のサービスを提供しており、売上高構成比は5.3%(2022年12月期上期)、営業利益構成比は6.0%(同)、セグメント利益率は7.1%(同)である。
2022年12月期上期の売上高は前年同期比10.3%増、営業利益は同7.0%増、セグメント利益率は同0.3ポイント低下、受注高は同9.9%増、期末の受注残高は前年同期末比11.9%減となっている。
事業構造改革等により2018年12月期以降のセグメント利益率は全社平均を上回っている。
その一方で、売上高については、流通・サービス向け継続案件の減少等模索局面が続いていたわけだが、アフターコロナを視野に入れた海外市場における運用保守案件の需要回復を牽引役に2022年12月期第2四半期にかけて3四半期連続で前年同月比増収に転じている。
データセンター事業における他社クラウドサービスとの競争等、構造的な問題を抱えつつも底入れの気配が感じられよう。
5. ノンコア領域ながら高収益のファシリティ事業
保有するオフィスビルの賃貸を収入とするファシリティ事業の売上高構成比は0.9%(2022年12月期上期)、営業利益構成比は4.1%(同)で、セグメント利益率は27.9%(同)と極めて高い。
2022年12月期上期の実績としては、前年同期比7.0%増収、同8.1%減益、セグメント利益率は同4.6ポイント低下となった。
同社は基本的に自社活用目的で不動産を保有しており、ファシリティ事業は空きスペースが有効活用された結果と位置付けてよい。
よって、その業績変動に一喜一憂する必要はないわけだが、セグメント利益率は全社平均を大きく上回っており、ノンコア領域ながら利益水準の下支え役を安定的に果たしている。
有価証券報告書で確認できるファシリティ事業向け保有不動産は、横浜本社(土地取得年:2000年、土地建物等簿価:11,135百万円)、秋葉原オフィス(同:2005年、同30,594百万円)、錦糸町オフィス(同:2000年、同6,065百万円)、両国オフィス(同:2018年、同1,760百万円)の4棟である。
6. その他区分の主軸は上場子会社の富士ソフトサービスビューロ(株)
その他の売上高構成比は4.4%(2022年12月期上期)、営業利益構成比は4.4%(同)、区分内の主軸は子会社の富士ソフトサービスビューロ (TYO:6188)が手掛けるBPOサービス事業やコンタクトセンター事業である。
2022年12月期上期は、地方自治体の外部委託需要(新型コロナ関連で期間限定)の取り込みと年金関連業務の受託が寄与するなかで、案件の採算良化も加わり、売上高は前年同期比33.5%増、営業利益は同916.6%増、セグメント利益率は同5.6ポイント上昇の6.4%となった。
7. 区分横断的な技術戦略「AIS-CRM」のさらなる強化を目指す
同社は、2017年12月期から区分横断的な技術戦略として「AIS-CRM(アイスクリーム)」領域を重点技術分野に掲げ、新製品・新事業のシーズ創出や既存事業の付加価値向上に注力している。
「AIS-CRM」領域とはAI、IoT、Security、Cloud computing、Robot、Mobile&AutoMotiveの頭文字を並べた同社の造語であり、中長期的に成長が期待される領域を網羅している。
一見、流行り言葉の羅列のようだが、「AIS-CRM」戦略の上位概念には同社のコアコンピタンスが据えられており、同領域の2021年12月期単体売上高は959億円(過去3年の年平均成長率:15.8%増)と単体売上高の55%程度を占める存在となっている。
その内訳は、「AI」が開発中心に19億円(過去3年の年平均成長率:16.6%増)、「IoT」が開発中心に31億円(同33.6%増)、「Security」が開発及びライセンスで123億円(同16.9%増)、「Cloud computing」がライセンス及びSI、インフラ関連、ネットビジネス分野等で495億円(同26.6%増)、「Robot」が開発中心及びPALRO、ロボSI等で44億円(同8.8%減)、「Mobile」が開発及びプロダクト等で65億円(同2.7%増)、「AutoMotive」が開発中心で181億円(同5.8%)、となっている。
特にクラウド分野の好調が目立つほか、セキュリティ分野における近年の取り組みも成果を実らせつつあるように見える。
セキュリティ分野における一連の動きとしては、2020年11月に(株)レッドチーム・テクノロジーズとの協業(販売店契約の締結、2020年11月発表)を受けて、インターネットサービスを提供する金融機関等の企業向けに、クラウドソースペンテストプラットフォーム「Synack」を活用した新しいセキュリティサービス(脆弱性診断)の提供を開始したのに続き、2021年6月にはサイバーセキュリティの国内リーディングカンパニーである(株)FFRIセキュリティとサイバーセキュリティ分野における協業の強化について合意、2021年10月にはサイバー攻撃を可視化するセキュリティ対策ソフトウェアであるオープンXDR(Endpoint Detection and Response)のパイオニア的企業Stellar Cyber社から「2021 1st Half Outstanding Partner Japan」を受賞、等が列挙される。
一連の技術戦略が成果を実らせつつあるなかで、同社はビジネス上の重点分野を「AIS-CRM」から「DX+AIS-CRM+SD+(5)G2」へとさらに拡大し、DXソリューションやITバリューチェーンの上流工程(SD:サービスデザイン及びITコンサルティング)、(5)G2(通信の5G技術と事業のグローバル展開)という領域での取り組み強化に踏み出している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
4. 底入れ気配が感じられるアウトソーシング
アウトソーシングは、データセンターやシステム運用・保守等のサービスを提供しており、売上高構成比は5.3%(2022年12月期上期)、営業利益構成比は6.0%(同)、セグメント利益率は7.1%(同)である。
2022年12月期上期の売上高は前年同期比10.3%増、営業利益は同7.0%増、セグメント利益率は同0.3ポイント低下、受注高は同9.9%増、期末の受注残高は前年同期末比11.9%減となっている。
事業構造改革等により2018年12月期以降のセグメント利益率は全社平均を上回っている。
その一方で、売上高については、流通・サービス向け継続案件の減少等模索局面が続いていたわけだが、アフターコロナを視野に入れた海外市場における運用保守案件の需要回復を牽引役に2022年12月期第2四半期にかけて3四半期連続で前年同月比増収に転じている。
データセンター事業における他社クラウドサービスとの競争等、構造的な問題を抱えつつも底入れの気配が感じられよう。
5. ノンコア領域ながら高収益のファシリティ事業
保有するオフィスビルの賃貸を収入とするファシリティ事業の売上高構成比は0.9%(2022年12月期上期)、営業利益構成比は4.1%(同)で、セグメント利益率は27.9%(同)と極めて高い。
2022年12月期上期の実績としては、前年同期比7.0%増収、同8.1%減益、セグメント利益率は同4.6ポイント低下となった。
同社は基本的に自社活用目的で不動産を保有しており、ファシリティ事業は空きスペースが有効活用された結果と位置付けてよい。
よって、その業績変動に一喜一憂する必要はないわけだが、セグメント利益率は全社平均を大きく上回っており、ノンコア領域ながら利益水準の下支え役を安定的に果たしている。
有価証券報告書で確認できるファシリティ事業向け保有不動産は、横浜本社(土地取得年:2000年、土地建物等簿価:11,135百万円)、秋葉原オフィス(同:2005年、同30,594百万円)、錦糸町オフィス(同:2000年、同6,065百万円)、両国オフィス(同:2018年、同1,760百万円)の4棟である。
6. その他区分の主軸は上場子会社の富士ソフトサービスビューロ(株)
その他の売上高構成比は4.4%(2022年12月期上期)、営業利益構成比は4.4%(同)、区分内の主軸は子会社の富士ソフトサービスビューロ (TYO:6188)が手掛けるBPOサービス事業やコンタクトセンター事業である。
2022年12月期上期は、地方自治体の外部委託需要(新型コロナ関連で期間限定)の取り込みと年金関連業務の受託が寄与するなかで、案件の採算良化も加わり、売上高は前年同期比33.5%増、営業利益は同916.6%増、セグメント利益率は同5.6ポイント上昇の6.4%となった。
7. 区分横断的な技術戦略「AIS-CRM」のさらなる強化を目指す
同社は、2017年12月期から区分横断的な技術戦略として「AIS-CRM(アイスクリーム)」領域を重点技術分野に掲げ、新製品・新事業のシーズ創出や既存事業の付加価値向上に注力している。
「AIS-CRM」領域とはAI、IoT、Security、Cloud computing、Robot、Mobile&AutoMotiveの頭文字を並べた同社の造語であり、中長期的に成長が期待される領域を網羅している。
一見、流行り言葉の羅列のようだが、「AIS-CRM」戦略の上位概念には同社のコアコンピタンスが据えられており、同領域の2021年12月期単体売上高は959億円(過去3年の年平均成長率:15.8%増)と単体売上高の55%程度を占める存在となっている。
その内訳は、「AI」が開発中心に19億円(過去3年の年平均成長率:16.6%増)、「IoT」が開発中心に31億円(同33.6%増)、「Security」が開発及びライセンスで123億円(同16.9%増)、「Cloud computing」がライセンス及びSI、インフラ関連、ネットビジネス分野等で495億円(同26.6%増)、「Robot」が開発中心及びPALRO、ロボSI等で44億円(同8.8%減)、「Mobile」が開発及びプロダクト等で65億円(同2.7%増)、「AutoMotive」が開発中心で181億円(同5.8%)、となっている。
特にクラウド分野の好調が目立つほか、セキュリティ分野における近年の取り組みも成果を実らせつつあるように見える。
セキュリティ分野における一連の動きとしては、2020年11月に(株)レッドチーム・テクノロジーズとの協業(販売店契約の締結、2020年11月発表)を受けて、インターネットサービスを提供する金融機関等の企業向けに、クラウドソースペンテストプラットフォーム「Synack」を活用した新しいセキュリティサービス(脆弱性診断)の提供を開始したのに続き、2021年6月にはサイバーセキュリティの国内リーディングカンパニーである(株)FFRIセキュリティとサイバーセキュリティ分野における協業の強化について合意、2021年10月にはサイバー攻撃を可視化するセキュリティ対策ソフトウェアであるオープンXDR(Endpoint Detection and Response)のパイオニア的企業Stellar Cyber社から「2021 1st Half Outstanding Partner Japan」を受賞、等が列挙される。
一連の技術戦略が成果を実らせつつあるなかで、同社はビジネス上の重点分野を「AIS-CRM」から「DX+AIS-CRM+SD+(5)G2」へとさらに拡大し、DXソリューションやITバリューチェーンの上流工程(SD:サービスデザイン及びITコンサルティング)、(5)G2(通信の5G技術と事業のグローバル展開)という領域での取り組み強化に踏み出している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)