■今後の見通し1. 2020年12月期の業績見通しすららネット (T:3998)の2020年12月期の業績は、売上高1,364百万円(前期比19.5%増)、営業利益152百万円(同136.2%増)、経常利益172百万円(同161.7%増)、当期純利益114百万円(同160.3%増)と予想されている。
人員補強とコンテンツの拡充によりID数の増加を図り増収を目指す。
利益面では、マス広告からWeb広告への切替による広告宣伝費の縮小などから利益率が改善する見込みで、営業利益は大幅な回復が予想されている。
2. 2020年の重点施策(1) 学習塾:独立開業に加えてローカル中堅大手や放課後等デイサービスにも注力今後の学習塾市場においては、少子化傾向の中、市場環境は安定的に推移するがM&Aや新たな差別化などの戦略展開が必要になり、さらに「個別最適化されたEdTech」を戦略的に活用する時代になると予想される。
そのような環境下、同社ではそれぞれの市場に対して積極的に営業活動を展開する計画だ。
以下は、各市場においての「すらら」採用によるメリットである。
a) 独立開業:「すらら」の採用で、従来の個別指導FC塾の問題点を解決した新業態で拡大できる1) 低コスト経営が可能(加盟金・ロイヤリティ0円)2) アルバイト講師の雇用ゼロ3) 中小企業の新規事業ニーズの取り込みb) ローカル中堅大手:大手塾の合併や統合⇒差別化のためのEdTechが必要1) 紹介連鎖/セミナー集客(チェーン同士のつながり)2) 人口減少時代に勝ち残るための戦略提案3) EdTechを使いこなせる組織への変革支援c) 放課後等デイサービス:事業所・利用者は年々増加⇒競争激化⇒「すらら」を活用した学習支援型放課後等デイサービスが増加1) 差別化(教科学習できる事業所へ)2) 運営コンサルティング(ICTを活用するオペレーションを提案)(2) 学校:確かな成績向上実績より新規マーケットの開拓を狙う政府の「公人教育の1人1台環境」政策推進により、私立学校のEdTech導入も加速する。
課題は「コンテンツ不足」から「運用ノウハウと学力向上成果」に変化する。
競合参入が増加し、5教科対応、学力向上などの「成果」で差別化が必要。
このような環境下、同社では以下の戦略を推進する方針だ。
a) マーケット拡大(成功事例より)b) 新規分野開拓(専門学校、大学、公立校、通信制高校への導入等)c) 利用ID数の拡大(大規模校舎導入強化)d) 提携先強化(販路の活用、商品ラインナップ強化等)(3) BtoC:社会の課題を解決することで事業の成長エンジンに変える市場の特性としては、発達障がい・学習障がい児や不登校が引き続き増加すると予想される。
このような環境下、特に不登校生の出席扱いの啓蒙で同社の認知度を向上させる。
発達障がい・学習障がい児や不登校の子どもたちでも一から体系的に理解できる唯一のサービスとして「すらら」を展開することで、潜在ニーズを顕在化し急成長を狙う。
(4) 海外展開市場環境としては、途上国や新興国を中心にデジタル化による教育への期待・効果が高まる。
特に競合の少ないブルーオーシャン市場である小学校をターゲットに拡大していく。
さらに国内大手企業や現地財閥等との取り組みを模索する。
具体的な施策として以下を実行していく。
a) 引き続きインドネシア、スリランカに注力する。
b) 2019年JICA中小企業・SDGsビジネス支援事業調査事業でエジプトにおいて調査を開始。
c) インド、フィリピンでのトライアルを開始。
(5) 提携先の拡大:最新技術を取り入れ、大手と協力することで可能性を追求するこれまでの主な提携先(凸版印刷 (T:7911)、NTTドコモ (T:9437)、(株)Z-KAI、チエル (T:3933)等)に加えて、様々な企業との提携を進める。
3. 中長期の展望(1) 市場予測:入試制度改革と求められる人材の変化現在の日本の教育市場では、今後は以下のようなスケジュールで入試制度改革が行われる計画になっている。
2020年:新学習指導要領小学校スタート2021年:新学習指導要領中学校スタート、大学入学共通テスト開始2022年:新学習指導要領高等学校スタートまた文部科学省が「GIGA※スクール構想」を発表しているが、その骨子は「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018−2022年度)」であり、各単年度1,805億円に加えて2019年度補正予算2,318億円が講じられている。
具体的な内容としては、公立校における校内通信・ネットワーク整備、児童生徒1人1台端末、個別最適化EdTechの活用となっている。
※GIGA=Global and Innovation Gateway for All一方で、実際の教育現場では「多様な生徒への対応(学力差・地域差・不登校など)」「教師の働き方改革」「主体的な学びの実現」などが求められているが、これらは「すらら」で解決することが可能であり、同社にとっては追い風と言える。
(2) 定量的目標同社では、2021年12月期を最終年度とする中期経営計画を発表していたが、2019年12月期のTVCMの効果が期待値に届かず、売上高は計画を下回った。
これを受けて、新たに中長期経営計画(数値目標)を見直している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)