[東京 16日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は16日の金融政策決定会合後の記者会見で、新型コロナウイルスの世界的流行で市場が不安定な動きを続け、中小企業の資金繰り懸念が浮上する中では、マイナス金利深掘りよりも、上場投資信託(ETF)の購入増などの施策の方が効果的であるとの見方を示した。
日銀は同日、市場の安定確保と中小企業金融に万全を尽くす観点から追加緩和を決めた。 黒田総裁は、16日朝に発表したドル資金供給の拡充と併せ「日本経済に最も重要で効果的と判断した」と説明した。
市場のリスク回避姿勢を予防するためETFの買い入れペースを当面、従来の2倍とすると強調したが、「当面」がどの程度の期間かはわからないと述べた。
黒田総裁は、今後も必要であれば追加緩和を躊躇(ちゅうちょ)なく講じると指摘。今回、マイナス金利の深掘りは見送ったものの、「マイナス金利を深掘りすれば金融機関の利ザヤ圧縮する懸念があるが、経済にプラスなら金融機関にもマイナスではない」と語り、必要であればマイナス金利深掘りの選択肢を排除しない考えを示した。
新型コロナウイルスの感染の影響は地域によって時間差で現れると述べ、感染が終息すれば、各国の政策効果などが発現していくとの見通しを示した。
感染拡大終息がみえてきた中国経済は「第2・四半期にフル回復してもおかしくない」と述べる一方、地域により感染拡大・終息のタイミングがずれることで「世界経済に対しては、一定期間は下押し圧力が続く可能性がある」と述べた。
日銀は16日の東京株式市場の取引時間中に政策決定の声明文を公表したが、日経平均株価は400円超下落して取引を終えた。黒田総裁は「悲観する必要はない」と述べ、今回の決定内容が効果を表すことに自信を示した。
会合の開催を予定より前倒ししたことについては、新型コロナウイルスの感染が拡大していることで世界経済の不透明感が急速に高まっているためと説明。開催前倒しは、きょう決めたという。
*内容を追加しました。
(和田崇彦、竹本能文 編集:田中志保)