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エムアップ Research Memo(7):VR事業の立ち上げや電子チケット事業への参入を図る

発行済 2019-02-15 15:27
更新済 2019-02-15 15:41
© Reuters.  エムアップ Research Memo(7):VR事業の立ち上げや電子チケット事業への参入を図る
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■決算動向3. エムアップ (T:3661)の主な活動実績(1) VR MODE設立によるVR事業の立ち上げVRコンテンツ制作や360度動画の撮影及び配信、販売プラットフォームの構築等を主軸とする子会社VR MODEを設立し、VR事業の立ち上げに着手した。

すなわち、ファンクラブサイト事業などで培った、アーティスト、タレント、アイドル、俳優、声優といった各権利元とのリレーションを生かし、VR(仮想現実)を中心とした先端表現技術を用いたライブ動画の生配信など、新たな事業の創出と発展、拡大を図るところに狙いがある。

VR/AR(拡張現実)は、ゲームや映像領域との親和性が高く、将来の市場規模として2021年には18兆円超にまで達すると予測※されており、2020年の東京オリンピックを見据えたスポーツVRライブ中継なども既に始まっている。

また、臨場感や迫力が魅力のアーティストやアイドルのライブ公演については、VR/ARとの親和性が非常に高く、エンタテインメント領域においても今後さらに需要が増加すると予想されていることから、同社では以前より事業参入を検討していた。

今回のタイミングとなったのは、1)VRゴーグル(ヘッドマウントディスプレイ)が身近になってきたこと(価格面や装着・操作のしやすさなど)、2)5Gや8Kなど映像を綺麗に見ることができる(高画質)環境が整ってきたこと、3)EMTGのM&Aにより事業基盤が強化されたこと、4)アニメ動画見放題サービスの運営等を通じて、動画配信サービスに関する開発ノウハウを蓄積できたこと、などが背景と考えられる。

※出所:IDC Japan(株)。

なお、VR MODEの事業開始に当たっては、同社の子会社という位置付けではなく、技術開発から通信、コンテンツ制作まで、様々な事業会社が参加することにより、VRに関連する総合的な機能を有し、事業を強力に推進するためのコンソーシアムとする構想であり、既に各事業会社※との提携も開始している。

※(株)TBSテレビ(コンテンツ制作・供給、映像利用)や(株)セップ(ライブ映像、各種イベントの企画・制作・運営)、Jストリーム (T:4308)(動画配信プラットフォーム)、(株)クロスデバイス(VR撮影、VR配信システム)など。

2019年3月期中にサービスの概要を公表するとともに、2020年3月期には本格的にスタートする計画である。

具体的には、VRライブ(生配信・オンデマンド配信)のほか、VRドラマ(インタラクティブ)、VRデート(2D・3D)、VRグラビア写真集、ユーザー参加型双方向課金VRコンテンツ等を予定しているが、普通とは違う独自のVR体験※1で勝負をかける方針のようだ。

さらには、2020年の東京オリンピック直前には、アイドルグループ多数参加型の日本一のVRライブイベント※2を構想している。

※1 例えば、単なるVRライブの視聴だけにとどまらず、ライブ終了後の打ち上げの会場にいるような体験ができ、さらにはアーティスト等との双方向のコミュニケーションが可能になる。

同社にとっても、ライブチケットの販売だけでなく、課金のポイントも様々な場面に応じて豊富に設定できるなどのメリットが考えられる。

※2 将来の次世代高速通信5Gの普及により、100万人が同時視聴できるプラットフォーム構築を目指しており、日本の誇るエンタテインメント文化を世界に向けて発信する構想である。

(2) EMTGの完全子会社化(電子チケット事業への参入)資本業務提携先であったEMTGをM&A(株式の取得及び株式交換)により完全子会社化し、2018年10月1日から連結を開始した。

EMTGは、同社同様、ファンクラブサイト(約130アーティスト)を運営するほか、音楽ライブやスポーツ等のチケット事業(年間約200万枚の電子チケット発券)も展開している。

特に、ファンクラブサイト事業ではファンサイトクラウドシステム※1など同社にはない特徴を有している。

また、電子チケット分野においても、スマートフォン画面にスタンプを押す電子チケットアプリ※2を他社に先駆けて開発し、スマートフォンならではの利便性やセキュリティの高さを生かし、チケット発券枚数を大幅に伸ばしているほか、チケットトレードセンター機能により、現在音楽業界が抱えているチケット不正転売対策にも貢献している。

※1 無料のオフィシャルサイトと有料のスマートフォンサイト、ファンクラブサイトが、低コストかつスピーディに提供できるクラウドシステムである。

また、電子チケットやアプリ、入会施策・ゲーム、SNS、ECなど、各種連携システムも自社開発している。

※2 QRコードを用いた電子チケットと比べ、QRリーダー等の機材や専門スタッフの必要がなく、簡単なオペレーションを実現しているほか、自分が行ったライブや試合の内容、写真などの記念コンテンツなどの配信、来場者へのPUSH通知による継続的な情報配信、楽曲・写真販売やカードコレクションなどの課金、電子マネーの実装(開発中)など、紙チケットにはない電子チケットならではの様々な機能で利便性や楽しさを提供している。

同社とEMTGは、2017年1月に資本業務提携を締結し、電子チケットサービスの同社ファンクラブサイトへの導入や、同社のファンメール配信及びコンテンツ制作のEMTGへの提供など、両社の得意分野を生かした相互発展を図ってきた。

今回、完全子会社化に至ったのは、ファンクラブサイト事業におけるスケールメリットの享受※のほか、市場拡大が見込まれる電子チケット事業へ同社自らが参入するところにある。

特に、電子チケット事業については、同社の運営するファンクラブサイトや今後予定するVRライブ事業への導入はもちろん、チケットトレードセンター機能による2次流通市場の創出などによって、同社グループの事業の柱とする方針である。

※ターゲットとするアーティストの重複や競合が少ない上、両社のリソースやシステムの共有など経営資源を相互活用することで投資や業務の効率化、収益性の向上を図るところに狙いがある。

なお、2018年11月21日には、EMTGの電子チケット事業を分離し、新会社(株)エンターテイメント・ミュージック・チケットガードを設立した。

機動的な事業展開による更なるマーケットシェアの獲得、同社グループの他事業との連携による事業規模の拡大などが目的である。

以上から、2019年3月期上期を総括すると、EMTGの完全子会社化に伴う会計技術的な特殊要因を除けば、業績面で堅調に推移したことに加え、活動面においても、VR事業の立ち上げや電子チケット事業への参入など、今後の成長ドライバーの育成に向けて大きな成果を残したと評価できる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)

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