*12:07JST ダイコク電 Research Memo(7):「スマート遊技機」時代に向けた中期経営計画を推進
■中期経営計画
ダイコク電機 (TYO:6430)は、「スマート遊技機」による新たな時代を迎えるにあたり、遊技機市場やパチンコホールの設備投資の活発化に向けた道筋が見えてきたことから、3ヶ年の中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)をスタートし最終年度を迎えている。
経営理念である「イノベーションによる新しい価値づくりを通じ、これからも一貫して持続的な成長を果たしてまいります。
」に基づき、将来の市場環境の変化に対応するため、事業ドメインの再設定に取り組む方針である。
また、2024年6月公表の社長メッセージ動画では、中長期の成長戦略として、AIやビッグデータ等の最新技術を活用しパチンコ業界のDXリーダーを目指す方向性を示している。
1. 前提となる環境認識
「新規則」機への完全移行、さらには「スマート遊技機」の普及に伴って、遊技機市場及びパチンコホール業界は新たな時代を迎えようとしている。
「スマート遊技機」への入れ替えは、利便性やゲーム性の幅が広がることでファンの拡大やホール経営のあり方に大きく影響を与える。
特に、パチンコホールごとに集客力の差が顕著となることから、有力企業による業界再編の流れが加速している。
同社では、「スマート遊技機」の入れ替えが進むにつれて、勝ち残りをかけたパチンコホールの設備投資(新規出店を含む)が活性化され、同社業績が大きく拡大するシナリオを描いている。
2. 重点施策(事業ドメインの再設定)
(1) 情報システム事業
戦略の目玉は、クラウドサーバーを活用した業界唯一のプラットフォームを構築である。
このほか、AIホールコンピュータ「Χ(カイ)」の普及を進める。
また、「スマート遊技機」に柔軟に対応した製品・サービスに加え、省力化・省人化をさらに具現化し、ホールスタッフの働き方や集客戦略を変える製品群をタイムリーに市場投入することで各製品のシェアを広げる。
具体的には業界データ及び外部データをクラウドサーバーに集約・活用するプラットフォーム※をスタートさせ、新MGサービスの拡充による安定収益の底上げを目指す。
※自社及び他社のホールコンピュータ、ファン行動、サイトアクセス、Wi-Fiアクセス、スタッフ情報、カメラ映像などの業界データのほか、人口統計、行動心理、商圏特性、人流データ、SNS・アプリなどの外部データをクラウドサーバーに集約するとともに、予測エンジンや異常検知エンジン、レコメンドエンジンなどの機能により、データを有効に分析・活用できるプラットフォーム。
(2) アミューズメント事業
事業の主軸を「パチンコ」から「スマートパチスロ」へ移行する方針を掲げている。
2021年3月期下期より開始したパチスロ遊技機の一括受託開発をさらに推し進めるとともに、遊技機メーカーとして自社ブランドによるスマートパチスロ機の開発にも取り組み、2025年3月期の市場投入を予定している。
3. 投資計画
3年間の投資計画(累計)として、研究開発費40億円(前中期経営計画の合計は28億円)、設備投資62億円(同41億円)を予定している※。
なお、研究開発費は主にスマートパチスロ関連(アミューズメント事業)、設備投資は主にサーバー開発費(情報システム事業)に投下される計画である。
※2024年5月時点では、3年間の投資実績として、研究開発費約35億円、設備投資約65億円で着地する見通しとなっている。
4. 数値目標
数値目標については、研究開発費や設備投資を積極投入しながらも、各製品群における付加価値の向上や、MGサービスによるストック型ビジネスを軸とした収益構造の転換(収益の底上げ)を目指してきた。
「スマート遊技機」登場に伴う市場の活性化が想定よりも早いペースで進んできたことや、2024年7月からの新紙幣流通に先駆けたカードユニットの改刷対応需要などにより、当初計画を大きく上回る見通しである。
5. 中長期的な注目点
弊社でも、「スマート遊技機」による新時代を迎えるにあたって、同社の強みであるデータ活用によるMGサービスをさらに拡充させるため、ホールコンピュータからクラウドサーバーを活用したビジネスへと展開する戦略は、自らの優位性を生かすうえでも理にかなっていると評価している。
また、同社が目指すプラットフォームビジネスは、データが集まるところに会員が集まり、会員が集まるところにデータが集まるという正の循環(ネットワーク性)が働くため、圧倒的なポジションをさらに強固なものとする可能性が高い。
さらに、パチンコホールには「スマート遊技機」の導入に向けて相応の設備投資が必要となることから、業界の再編が一気に加速される一方、ゲーム性の進化とともに、これまで減少傾向にあったパチンコ・パチスロファンが、新たな利用者層の取り込みも含めて、回復に向かうことが期待されている※。
このような構造的な変化は、同社にとってもシェア拡大及び収益力向上の絶好のチャンスになると考えられる。
※同社提供資料に掲載されている日本生産性本部「レジャー白書2023」によると減少傾向にあったパチンコ参加人口は2021年に720万人(2020年は710万人)と底を打ち、2022年も770万人と2年連続で増加している。
さらに中長期的な視点からは、スマート遊技機が一巡した後のドライバーをどこに見出していくかが課題となる。
今後の成長戦略として、パチンコ業界のDXリーダーを目指す方向性を打ち出し、1) 需要を満たすのではなく、競争力の源を販売し、全国に広げていく、2) 売れる商品を売るのではなく、顧客(マーケット)を作り出していくことの2点が示されたが、AIやビッグデータといった最新技術の活用により、ホール経営さらにはパチンコ業界の発展を支えるサービスをどのように創り上げていくのか、具体的なソリューションの中身にも期待したい。
また、業績が好調な今だからこそ、将来に向けた準備をしておきたいとの意向が窺えることから、テクノロジーやIT人材の獲得、さらには異業種参入などを目的としたM&Aや業務提携の取り組みにも目が離せない。
データが集まるところでは、ビジネスの可能性も広がることから、様々なパートナーや人材を惹きつけることになるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
ダイコク電機 (TYO:6430)は、「スマート遊技機」による新たな時代を迎えるにあたり、遊技機市場やパチンコホールの設備投資の活発化に向けた道筋が見えてきたことから、3ヶ年の中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)をスタートし最終年度を迎えている。
経営理念である「イノベーションによる新しい価値づくりを通じ、これからも一貫して持続的な成長を果たしてまいります。
」に基づき、将来の市場環境の変化に対応するため、事業ドメインの再設定に取り組む方針である。
また、2024年6月公表の社長メッセージ動画では、中長期の成長戦略として、AIやビッグデータ等の最新技術を活用しパチンコ業界のDXリーダーを目指す方向性を示している。
1. 前提となる環境認識
「新規則」機への完全移行、さらには「スマート遊技機」の普及に伴って、遊技機市場及びパチンコホール業界は新たな時代を迎えようとしている。
「スマート遊技機」への入れ替えは、利便性やゲーム性の幅が広がることでファンの拡大やホール経営のあり方に大きく影響を与える。
特に、パチンコホールごとに集客力の差が顕著となることから、有力企業による業界再編の流れが加速している。
同社では、「スマート遊技機」の入れ替えが進むにつれて、勝ち残りをかけたパチンコホールの設備投資(新規出店を含む)が活性化され、同社業績が大きく拡大するシナリオを描いている。
2. 重点施策(事業ドメインの再設定)
(1) 情報システム事業
戦略の目玉は、クラウドサーバーを活用した業界唯一のプラットフォームを構築である。
このほか、AIホールコンピュータ「Χ(カイ)」の普及を進める。
また、「スマート遊技機」に柔軟に対応した製品・サービスに加え、省力化・省人化をさらに具現化し、ホールスタッフの働き方や集客戦略を変える製品群をタイムリーに市場投入することで各製品のシェアを広げる。
具体的には業界データ及び外部データをクラウドサーバーに集約・活用するプラットフォーム※をスタートさせ、新MGサービスの拡充による安定収益の底上げを目指す。
※自社及び他社のホールコンピュータ、ファン行動、サイトアクセス、Wi-Fiアクセス、スタッフ情報、カメラ映像などの業界データのほか、人口統計、行動心理、商圏特性、人流データ、SNS・アプリなどの外部データをクラウドサーバーに集約するとともに、予測エンジンや異常検知エンジン、レコメンドエンジンなどの機能により、データを有効に分析・活用できるプラットフォーム。
(2) アミューズメント事業
事業の主軸を「パチンコ」から「スマートパチスロ」へ移行する方針を掲げている。
2021年3月期下期より開始したパチスロ遊技機の一括受託開発をさらに推し進めるとともに、遊技機メーカーとして自社ブランドによるスマートパチスロ機の開発にも取り組み、2025年3月期の市場投入を予定している。
3. 投資計画
3年間の投資計画(累計)として、研究開発費40億円(前中期経営計画の合計は28億円)、設備投資62億円(同41億円)を予定している※。
なお、研究開発費は主にスマートパチスロ関連(アミューズメント事業)、設備投資は主にサーバー開発費(情報システム事業)に投下される計画である。
※2024年5月時点では、3年間の投資実績として、研究開発費約35億円、設備投資約65億円で着地する見通しとなっている。
4. 数値目標
数値目標については、研究開発費や設備投資を積極投入しながらも、各製品群における付加価値の向上や、MGサービスによるストック型ビジネスを軸とした収益構造の転換(収益の底上げ)を目指してきた。
「スマート遊技機」登場に伴う市場の活性化が想定よりも早いペースで進んできたことや、2024年7月からの新紙幣流通に先駆けたカードユニットの改刷対応需要などにより、当初計画を大きく上回る見通しである。
5. 中長期的な注目点
弊社でも、「スマート遊技機」による新時代を迎えるにあたって、同社の強みであるデータ活用によるMGサービスをさらに拡充させるため、ホールコンピュータからクラウドサーバーを活用したビジネスへと展開する戦略は、自らの優位性を生かすうえでも理にかなっていると評価している。
また、同社が目指すプラットフォームビジネスは、データが集まるところに会員が集まり、会員が集まるところにデータが集まるという正の循環(ネットワーク性)が働くため、圧倒的なポジションをさらに強固なものとする可能性が高い。
さらに、パチンコホールには「スマート遊技機」の導入に向けて相応の設備投資が必要となることから、業界の再編が一気に加速される一方、ゲーム性の進化とともに、これまで減少傾向にあったパチンコ・パチスロファンが、新たな利用者層の取り込みも含めて、回復に向かうことが期待されている※。
このような構造的な変化は、同社にとってもシェア拡大及び収益力向上の絶好のチャンスになると考えられる。
※同社提供資料に掲載されている日本生産性本部「レジャー白書2023」によると減少傾向にあったパチンコ参加人口は2021年に720万人(2020年は710万人)と底を打ち、2022年も770万人と2年連続で増加している。
さらに中長期的な視点からは、スマート遊技機が一巡した後のドライバーをどこに見出していくかが課題となる。
今後の成長戦略として、パチンコ業界のDXリーダーを目指す方向性を打ち出し、1) 需要を満たすのではなく、競争力の源を販売し、全国に広げていく、2) 売れる商品を売るのではなく、顧客(マーケット)を作り出していくことの2点が示されたが、AIやビッグデータといった最新技術の活用により、ホール経営さらにはパチンコ業界の発展を支えるサービスをどのように創り上げていくのか、具体的なソリューションの中身にも期待したい。
また、業績が好調な今だからこそ、将来に向けた準備をしておきたいとの意向が窺えることから、テクノロジーやIT人材の獲得、さらには異業種参入などを目的としたM&Aや業務提携の取り組みにも目が離せない。
データが集まるところでは、ビジネスの可能性も広がることから、様々なパートナーや人材を惹きつけることになるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)