[バンコク 16日 ロイター] - タイ国家経済社会開発評議会(NESDC)が16日発表した第2・四半期の国内総生産(GDP)は季節調整済みの前期比で0.4%増と、市場のマイナス予想に反しプラス成長となった。輸出と政府支出の伸びが成長を支えた。
ロイターがまとめた市場予想は1.4%減だった。ただ、足元では新型コロナウイルス感染が拡大し、封鎖措置が実施されており、景気に影を落としている。
前年同期比では7.5%増と、市場予想の6.4%増を上回った。前年同期がコロナ危機当初で景気が大きく落ち込んだことによるベース効果で、高めの成長率となった。
NESDCは2021年通年のGDP成長率の予測を0.7─1.2%と、従来の1.5─2.5%から引き下げた。20年は6.1%のマイナス成長だった。
タイは現在、これまでで最大の感染拡大に直面し、感染者や死者が急増。バンコクや周辺地域では7月に感染対策が強化され、今月に入って延長された。ロックダウン(都市封鎖)の対象地域はGDPの約8割を占める29都県に拡大された。
NESDCは今年の輸出の伸びを16.3%と予測し、従来見通しの10.3%から引き上げた。
一方、今年の外国人観光客の訪問は15万人にとどまると予想し、従来見通しの50万人から引き下げた。19年は4000万人近い外国人が訪問していた。
タイ中央銀行のセタプット総裁は別途、記者会見で、雇用と所得を下支えするため、追加で1兆バーツ(299億ドル)の資金が必要だと述べた。年末の失業者数は340万人と予想されている、と付け加えた。
中銀は今年の成長率見通しの0.7%を維持しているが、ロックダウンが第4・四半期まで続くようであれば修正する可能性がある、とした。ロックダウンによりGDPは月0.3─0.4%減少するという。
同総裁は先週、ロイターのインタビューで、今年のGDP成長率がマイナスになる公算は小さいものの、ロックダウンがさらに延長されれば可能性はあるとの見方を示した。
カシコン銀行のKobsidthi Silpachai資本市場調査部長は「今日の統計は明るい内容だったが、デルタ株の影響で逆風は依然として強い」と指摘。
二番底を避けるため、金融・財政・医療面で大規模な政策支援が続いているとし、「政策金利を引き下げても、実体経済に資金が流れるように補完しなければ、学術的な演習に終わってしまう」と述べた。
NESDCのダヌチャ事務局長は会見で、まだ景気後退には突入していないが、4月に感染拡大が始まって以降、失速していると指摘。
「第3・四半期に感染拡大に歯止めがかからず、第4・四半期にロックダウンが緩和されなければ、今年の経済成長率は0.7%を下回る可能性がある」と述べた。