[東京 14日 ロイター] - 日銀が14日発表した12月短観は、大企業・製造業の業況判断指数(DI)がプラス7と、4四半期連続で悪化した。原材料コスト高が企業の景況感の重荷となっている。新型コロナウイルスの感染抑制と経済活動の両立が進む中、人出が回復して非製造業DIはプラス19と3期連続で改善した。
大企業・製造業の業況判断DIはロイターがまとめた予測中央値(プラス6)を上回ったが、2021年3月以来の低水準となった。
「石油・石炭製品」は市況下落によるマージン悪化で、9月のプラス7からマイナス33へ大きく低下。「紙パルプ」や「化学」は原材料コスト高が、「生産用機械」や「電気機械」は半導体需要の一服が重しとなった。
一方、「繊維」や「非鉄金属」などは改善。供給制約の緩和やそれに伴う自動車生産回復などが貢献した。
先行き判断DIはプラス6と、小幅な悪化を見込む。海外経済の先行き不透明感や原材料コスト高などが懸念されている。
大企業・非製造業の業況判断DIは新型コロナの感染が広がる前の19年12月以来の高水準で、ロイターがまとめた予測中央値(プラス17)を上回った。行動制限の緩和や観光支援策が対面型サービス業の景況感を上向かせた。「対個人サービス」はプラス20、「宿泊・飲食サービス」はゼロとなり、ともに19年12月以来の高水準。
先行きはプラス11と、悪化を見込む。新型コロナや物価高に対する先行き不透明感が幅広い業種で聞かれた。
大和証券の末広徹チーフエコノミストは「製造業は、世界経済不安という新しいテーマがすでに重しになっている可能性がある。非製造業はコロナからの回復余地で相対的によくみえるものの、インフレ懸念もある。製造業・非製造業ともに、先行きの見通しは明るくない」とコメントしている。
<想定為替レート、さらに円安方向に>
今回の短観の調査期間は11月10日から12月13日。回答基準日は11月28日で、回答基準日までで7割台半ばが回答した。
調査期間中、外為市場ではドル/円が下落に転じたが、11月28日時点でも139円付近で前年対比では大幅な円安水準。事業計画の前提となっている想定為替レート(全規模・全産業)は22年度通期で1ドル=130.75円と、前回9月調査から5円程度円安方向に修正された。
<販売価格・仕入価格、歴史的高水準を継続>
大規模・製造業の販売価格判断DI(「上昇」-「下落」)はプラス41と前回から5ポイント上昇。1974年5月の調査開始以来最高だった。仕入価格判断DI(同)はプラス66と前回から1ポイント上昇、80年5月以来の高水準。非製造業の販売価格判断DIはプラス28、仕入価格判断DIはプラス53でともに83年5月の調査開始以降で最高となった。
販売価格判断DIは、大企業・製造業で先行きがプラス34に鈍化する一方、中小企業では製造業、非製造業ともに先行きが現状を上回った。日銀の担当者は、大企業の価格転嫁の先行きは見通しにくいものの、中小企業は「これから価格転嫁する、価格転嫁したいという期待が入り混じってプラスの変化幅になっている」と指摘した。
企業の物価見通しは、全規模・全産業で1年後が前年比プラス2.7%、3年後がプラス2.2%と、ともに前回を0.1%ポイント上回って過去最高を更新した。5年後はプラス2.0%で前回から横ばいだった。
設備投資計画は堅調を維持した。22年度の全規模・全産業の設備投資計画は前年度比15.1%増。前回から下方修正されたものの、過去平均を大きく上回る状況が続き、12月調査としては1989年以来の増加率だった。
(杉山健太郎、和田崇彦 グラフ作成・編集:田中志保 石田仁志)