■要約Jトラスト (T:8508)は、東証2部に上場しており、傘下に国内外の金融事業、非金融事業などを有するホールディングカンパニーである。
国内外で数々のM&Aにより成長を続けてきた結果、2018年12月末の総資産は6,700億円を超えるまでに拡大した。
現在は東南アジア金融事業及び投資事業の業績悪化に苦しむが、既に様々な施策を講じて早期の収益回復を目指しており、アジアでの金融事業を中心にグループの成長を図るとの収益モデルに変更はない。
1. 2019年3月期第3四半期は、考え得る限りのリスク手当てを実施2019年3月期第3四半期累計の営業収益は551億円(前年同期比3.1%減)、営業損失は297億円(前年同期は35億円の利益)であった。
日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業は堅調に推移したが、東南アジア金融事業で貸倒引当金115億円を計上し、投資事業でも同じく199億円を計上するなど、リスクに対して前倒しで保守的に手当てしたことが大幅赤字の原因である。
日本企業による海外事業戦略の難しさを示す結果になったが、リスクを将来に引きずらないための英断と評価できる。
2. 2019年3月期通期予想も大幅に下方修正同社では、第3四半期の業績を踏まえ、2019年3月期の業績予想を下方修正した。
すなわち、営業収益を833億円から754億円に、営業利益も70億円の利益から327億円の損失に修正した。
東南アジア金融事業において保守的に貸倒引当金の追加を見込んだことが、第3四半期までの297億円の損失に比べて赤字幅が拡大する主因である。
ただ、今期の決算で、現状想定できる限りのリスクに対して手当てを行うことで、来期からの業績V字回復を目指すための準備が整ったと言えるだろう。
業績の下方修正に伴い、配当予想も年間12円から7円に引き下げ、経営責任を明らかにするために役員報酬支給の取り止め・減額を発表した。
一方、同社株の中長期的な保有を促す目的で、楽天ポイントを付与する株主優待制度を継続している。
3. 今後は東南アジア金融事業がグループ業績をけん引すると期待2019年3月期中には現時点で考え得る限りのリスク対応を完了し、今後は成長可能性が大きい東南アジア金融事業を原動力として、同社グループは持続的かつ大きな成長を目指している。
同社グループの事業モデルに変更はない。
実際、2018年4月にインドネシアのマルチファイナンス会社であるOLYMPINDO MULTI FINANCE(現PT JTRUST OLYMPINDO MULTI FINANCE、以下、JTO)の買収を発表し、2018年5月にはカンボジアの商業銀行ANZ Royal Bank (Cambodia) (以下、ANZR)の買収計画を発表した。
いずれの会社も、今後、Jトラストグループとの大きなシナジーが期待され、東南アジア金融事業の業績改善に貢献すると見られる。
また、投資事業では、今回計上した貸倒引当金の戻入れによる利益計上が期待される。
■Key Points・2019年3月期第3四半期累計では297億円の営業損失であった。
東南アジア金融事業及び投資事業での損失が響いたが、現時点で想定できるリスクをすべて織り込んだ。
・2019年3月期の予想も、327億円の営業損失に下方修正した。
ただ、来期からのV字回復への体勢は整ったと言えるだろう。
・同社グループの収益モデルに変更はなく、今後は潜在成長性が大きい東南アジア金融事業が原動力となり、持続的かつ大きな成長を目指す計画である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)