〇8月企業物価指数、8年10ヵ月ぶりの伸び〇
株価の持続的上昇の大きなバックボーンは企業業績の拡大である。
その企業業績拡大には、需要増、円安、金利低下、新製品・新技術、コストダウンなど、様々な要因が絡む。
5年目のアベノミクスは、黒田日銀の異次元緩和に依存しているが、中身は金利低下効果ではなく、円安依存であった。
ドル円が15年6月に125.66円で頭打ちになり、日経平均が同じ6月に20868円の高値を付けたことは連動する。
その後、2年強、高値を抜けないのは、他の上昇要因が弱過ぎるためと見ることができる。
現在の企業収益は為替安定を前提に、輸出・海外収益の拡大に支えられている。
二大輸出先の米国、中国情勢に過敏なのはそのためである。
その追い風の下、足を引っ張って来た「デフレ脱却の遅れ」が是正される可能性が出てきた。
13日、日銀が発表した8月国内企業物価指数は前年同月比+2.9%、7月の+2.6%から拡大し、08年10月(+4.5%、ただし消費増税の影響除く)以来の高い伸びとなった。
上昇は8カ月連続。
対象品目数744のうち、上昇は390、下落256。
ただ、素原材料+21.2%に対し、最終財+1.4%と明暗を分けたまま。
銅や鉄関連、古紙などの上昇が目立った。
やはり中国の生産・需要増の影響が大きく、普通は地味な素材関連が中心。
株式市場はこの影響を投影し、業種別株価指数の前年比上昇率(TOPIX+23.76%、13日現在)は、非鉄+42.74%、化学+40.68%、電機機器+39.49%が1~3位。
問題は、弱い最終需要を含め、持続的な上昇になって行くかどうか。
ある程度連鎖的な循環物色になって行かないと、価格体系が崩れ、一過性に終わるリスクがある。
代表的な事例は、ここ数年、何度も値上げを打ち出しながら、需要の弱さ(新聞、出版不況)から浸透しなかった紙製品が挙げられる。
政府・日銀が掲げる物価2%上昇には、最終需要の盛り上がりより、川上分野からの遡及のパターンが近道と考えられる。
原油相場の影響などが焦点になると考えられる。
最終財に絡む分野では、目下、物流コスト上昇の波及が焦点。
また、個人消費関連では、値上げの動きと値下げが交錯しているが、値引き是正のビールは天候不順もあって不振、一方、10月から1品当たり価格を280円から298円に値上げする焼き鳥チェーン鳥貴族の動向などが注目される。
鳥貴族は昨日発表の7月期決算で、今期予想前期比25.9%増収、同59.9%経常増益の強気見通しを打ち出してきた(前期は19.7%増収、7.8%経常減益)。
株式市場が、これらの動きを持続的に評価するかどうか注目ポイントとなろう。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/9/14号)