[8日 ロイター] - <為替> 通商懸念が再燃したことを受け、ドルが安全資産の円に対して下落した。ただ、米卸売物価が大幅に低下したものの、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が講演で追加利下げを明言しなかったことで、ドルはその他の通貨に対して上昇した。
米国務省はこの日、新疆ウイグル自治区のイスラム教徒への弾圧や虐待などを理由に中国政府や共産党の当局者に対するビザ発給を制限すると発表。ドルへの圧力となった。
米商務省は前日、中国の監視カメラ大手、杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン) (SZ:002415)や公安機関など28団体・企業について、ウイグル族などへの弾圧に関与しているとして事実上の禁輸リストである「エンティティー・リスト」に追加。またトランプ大統領は早期通商合意の可能性は低いと述べた。米中は10─11日の日程で閣僚級協議を開始する予定。終盤の取引で、ドルは対円で0.18%安の107.09円。
一方、パウエルFRB議長が追加利下げについて明言しなかったことを受け、主要6通貨に対するドル指数は0.15%上昇した。
この日の指標では、9月の米卸売物価指数が前月比0.3%下落し、1月以来の大幅なマイナスとなった。市場予想の0.1%上昇を下回った。前年比での伸びが約3年ぶりの低水準となったことでFRBが今月、今年3回目の利下げに踏み切る公算が大きくなった。
英ポンドは対ユーロ (EURGBP=D3)で1カ月ぶり水準に下落。英国の欧州連合(EU)離脱を巡り双方が決裂間近との報道を受けた。対ドルでは0.56%下落した。
<債券> 長短金利差が拡大。パウエルFRB議長が一段の利下げを排除せず、短期金融市場の円滑な運営に向けFRBのバランスシートを拡大させる方針を示したことで2年債利回りが低下したことが背景。
米短期金融市場でボラティリティーが高まったことで、FRBはバランスシートを縮小させ過ぎたのではないかとの懸念が出ていた。こうした中、パウエル議長はこの日の講演で「準備金供給を時間をかけて増やす措置を近く発表する」と表明した。
議長の講演を受け、政策金利変更を巡る市場の予測を反映しやすい2年債 (US2YT=RR)利回りは終盤の取引で4.1ベーシスポイント(bp)低下の1.424%。2年債利回りが低下したことで利回り曲線はスティープ化。2年債と10年債の利回り格差は10.8bpに拡大した。
CMEグループのフェドウオッチによると、FRBが今月の連邦公開市場委員会(FOMC)で25bpの追加利下げを決定する確率はこの日は83.9%と、前日の74.8%から上昇した。
市場ではFRBの動向のほか、週内に始まる米中通商協議も注目されている。
<株式> 大幅安。米国政府が中国当局者に対しビザ規制を課したことが嫌気された。
パウエルFRB議長は講演で、世界経済へのリスクを背景に追加利下げにオープンな姿勢を示唆したほか、短期金融市場の円滑化を確実にするため、保有資産を再び拡大させる考えを示した。
議長の発言後、株価は下げ幅を縮小した。だが、米国務省が中国の新疆ウイグル自治区のイスラム教徒への弾圧や虐待などを理由に中国政府や共産党の当局者に対するビザ発給を制限すると発表したことを受け、終盤にかけて下げ幅が拡大した。
前日には米商務省が中国の人工知能(AI)大手などを事実上の禁輸リストに追加したこともあり、今週ワシントンで行われる米中閣僚級通商協議を控えて緊張感が高まった。
ブルームバーグは8日、トランプ政権が中国への資本フローを制限する可能性を検討していると報じた。また、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは、今週の通商協議を前に中国側は期待を低くしていると伝えた。
この日は幅広いセクターで売りが出たが、金利に敏感なS&P500金融指数 (SPSY)が2%安、フィラデルフィア半導体指数 (SOX)が3.1%安と下げを主導した。
<金先物> 米中貿易摩擦激化への懸念が再燃する中、「質への逃避」の金買いが先行したものの、利益確定の売りに押され、ほぼ横ばいとなった。中心限月12月物の清算値は前日比0.50ドル(0.03%)安の1オンス=1503.90ドル。
米商務省は7日、中国の少数民族ウイグル族らに対する弾圧の制裁として、監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術や新疆ウイグル自治区当局など28団体・ 企業への輸出を原則禁止すると発表。米中閣僚級の貿易協議の再開を10日に控え、中国が米国の措置に対して反発する可能性があり、両国の交渉が難航するとの懸念が台頭した。このため市場のリスク投資意欲が後退し、米株式が急落。安全な資金の逃避先として金に買いが入り、相場は朝方に一時1514.30ドルまで上昇した。
ただ、買い一巡後は利益確定の売りに押され、上げ幅を一掃。外国為替市場で、ドルが対ユーロで反転上昇し、ドル建てで取引される金に割高感が生じたことも相場を下押しした。
<米原油先物> 米中貿易協議の進展期待が薄れる中、小幅続落した。米国産標準油種WTIの中心限月11月物の清算値は、前日比0.12ドル(0.23%)安の1バレル=52.63ドル。12月物は0.09ドル安の52.62ドルだった。
米商務省は7日、中国が少数民族ウイグル族らを弾圧しているとして、中国の監視カメ ラ大手など28団体・企業への輸出禁止を発表。中国側はこれを「内政干渉」と強く批判し、10日から始まる閣僚級の貿易協議に及ぼす影響への懸念が増大した。また、ブルームバーグは8日、公務員年金基金などを通じた中国市場への投資についてトランプ米政権が規制の検討を進めていると報道した。
これら一連の報が投資家心理を圧迫し、原油相場は8日未明ごろにマイナス圏に転落。また、朝方発表された9月の米卸売物価指数が予想を下回ったほか、米原油在庫が4週連続で増加したとの市場調査も売りに拍車をかけ、相場は一時51.81ドルの安値を付けた。ただ、イラクやエクアドルで反政府デモが続く中、原油供給混乱への警戒感もくすぶり、昼ごろからは幾分買い戻しの動きもみられた。
ドル/円 NY終値 107.07/107.10
始値 106.94
高値 107.29
安値 106.82
ユーロ/ドル NY終値 1.0954/1.0958
始値 1.0986 (EUR=)
高値 1.0992
安値 1.0942
米東部時間
30年債(指標銘柄) 17時05分 104*26.00 2.0341% (US30YT=RR)
前営業日終値 104*18.50 2.0440%
10年債(指標銘柄) 17時05分 100*27.00 1.5323% (US10YT=RR)
前営業日終値 100*21.00 1.5530%
5年債(指標銘柄) 17時05分 100*22.00 1.3566% (US5YT=RR)
前営業日終値 100*17.75 1.3840%
2年債(指標銘柄) 17時05分 100*04.50 1.4275% (US2YT=RR)
前営業日終値 100*02.25 1.4640%
終値 前日比 %
ダウ工業株30種 26164.04 -313.98 -1.19 (DJI)
前営業日終値 26478.02
ナスダック総合 7823.78 -132.52 -1.67 (IXIC)
前営業日終値 7956.29
S&P総合500種 2893.06 -45.73 -1.56 (SPX)
前営業日終値 2938.79
COMEX金 12月限 1503.9 ‐0.5
前営業日終値 1504.4
COMEX銀 12月限 1770.0 +16.0
前営業日終値 1754.0
北海ブレント 12月限 58.24 ‐0.11 (LCOc1)
前営業日終値 58.35
米WTI先物 11月限 52.63 ‐0.12 (CLc1)
前営業日終値 52.75
CRB商品指数 173.3202 +0.2199 (TRCCRB)
前営業日終値 173.1003 OLJPBUS Reuters Japan Online Report Business News 20191008T223817+0000