[24日 ロイター] - <為替> 円が対ドルで上昇。新型コロナウイルス感染拡大への警戒感からリスクオフ取引となった。しかし、米株式・債券市場の動きに比べると、外為市場の動きは比較的落ち着いた展開となった。
中国本土外にも感染が広がる新型コロナウイルスはこの日、イタリアや韓国、イランなど複数の国で感染者が急増した。世界的な感染拡大を巡る懸念から、世界の株式市場は軒並み急落した。しかし、世界保健機関(WHO)は「パンデミック(世界的な大流行)」と宣言するのは時期尚早との認識を示した。[nL3N2AO3PR]
終盤の取引で、円は対ドルで0.73%高の110.74円。一時、110.34ドルまで上昇した。
主要6通貨に対するドル指数 (=USD)は0.095%安の99.33。米株価が軒並み3%超急落する中、ドル指数はほぼ終日マイナス圏を推移した。
ステート・ストリート・グローバル・マーケッツのシニア世界市場ストラテジスト、マービン・ロー氏は、安全資産とされる円やスイスフランの動向を指摘し、「全てがリスクオフ取引となった」とし、「市場はこれまで幾分楽観的だったため、調整の動きとなっているようだ」と述べた。
しかし、ドル/円はほぼ前週のレンジ内で推移。アナリストの間からは、日本でも多数の新型ウイルス感染者が出ていることで、安全資産としての円への投資妙味が幾分薄れている可能性が指摘された。
アクション・エコノミクスのアナリストは、新型ウイルス流行への懸念が高まり、リスクオフの展開となっている状況を踏まえると、「ドル/円は比較的しっかりと持ちこたえている」と指摘。日本の年度末前のドルへのポートフォリオフローがドル/円を下支えする可能性があるとの見方を示した。
<債券> 新型コロナウイルスの感染拡大による経済への影響は想定より大きくなる恐れがあるとの見方から安全資産に資金が流入し、米国債が買われたことで利回りは大きく低下した。中でも30年債利回りは過去最低水準を更新した。
この日はまた、10年債と3カ月物財務省証券の利回り格差が一段と逆転。景気後退(リセッション)入りの兆候が一段と深まった。
中国を発生源とする新型ウイルスの感染拡大が「パンデミック(世界的大流行)」に発展するリスクが意識され、この日は世界的に株価が急落。レイモンド・ジェームズ(テネシー州)の市場ストラテジスト、エリス・ファイファー氏は「安全資産への資金の逃避が起きている」と述べた。
10年債 (US10YT=RR)利回りは一時1.352%と、2016年夏以来の低水準を更新。午後の取引では11.6ベーシスポイント(bp)の1.3538%となっている。
過去最低水準は16年7月6日に付けた1.321%。
30年債 (US30YT=RR)利回りは1.811%まで低下し、過去最低水準を更新。午後の取引では10.5bp低下の1.8122%となっている。
2年債 (US2YT=RR)利回りは10.7bp低下の1.2435%と、17年5月以来の低水準を付けた。
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長はこの日の記者会見で、イタリア、イラン、韓国で新型ウイルスの感染が急速に拡大していることを「大きく懸念している」としながらも、ウイルスの封じ込めはなお可能とし、「パンデミック」という言葉を使うのは事実に即していないと述べた。[nL3N2AO3IH]
リーガル・アンド・ジェネラル・インベストメントマネジメントのポートフォリオマネジャー、ジャスティン・オヌエクウシ氏は、米経済はこれまでのところ比較的堅調に推移してきたが、「米債券市場では世界的な経済成長率が2%を下回るとの見方が意識されている」と述べた。世界的経済については、途上国の事情などを勘案し、成長率が2%を下回れば世界的な景気後退に入ったと一般的に考えられている。
IHSマークイットが21日に発表した2月の米購買担当者景気指数(PMI)速報値は、新型ウイルスへの懸念が高まる中、サービス業と製造業がともに低迷。サービスPMIは49.4と13年10月以来の低水準、製造業PMIは50.8と、かろうじて50は上回ったものの、19年8月以来の低水準を付けた。[nL4N2AL3XG]
これを受け、市場心理は悪化。ロンドン・アンド・キャピタルグループは「米サービスPMIが拡大と悪化の分かれ目となる50を下回ったことの衝撃で、新型ウイルスの感染拡大により米経済がどれほどリセッション入りに近づいているかが意識された」と述べた。
こうした中、市場は米国債の利回り曲線に注目。3カ月物財務省証券 (US3MT=RR)と10年債の利回り格差はマイナス19bpと、昨年10月以来最も大きく逆転した。2年債と10年債の利回り格差 (US2US10=RR)はプラス11bpと、まだ逆転はしていないものの、昨年10月以来の水準に縮小した。
<株式> 主要3指数が大幅続落。ダウ工業株30種は1000ドルを超える下げとなった。新型コロナウイルスの感染者が中国本土外で急増し、世界的な大流行(パンデミック)への不安が高まったことから、世界経済への影響を巡る懸念が拡大、質への逃避が加速した。
韓国やイタリア、イランなど複数の国で前週末に新型ウイルスの感染者が増加したことを受け、高リスク資産を売って米国債や金など安全とされる資産を買う動きが加速した。
ダウ (DJI)とS&P総合500種 (SPX)は年初来の騰落がマイナスに転じ、1日の下落率は2018年2月以来の大きさとなった。ダウが1日で1000ドル超下げるのは史上3回目。
ジャニー・モンゴメリー・スコットの首席投資ストラテジストは「新型ウイルス感染拡大の減速を確認するまで、株価上昇の可能性は低い」との見方を示した。
S&Pの主要11セクターはいずれもマイナス圏で終了。エネルギー (SPNY)、情報技術 (SPLRCT)などの下げが目立った。
アップル (O:AAPL)は4.8%安。1月の中国のスマートフォン販売台数が約36%減少したことを示す統計が嫌気された。[nL3N2AO3EL]
このほか中国に対するエクスポージャーが大きい半導体銘柄が売られ、フィラデルフィア半導体指数 (SOX)は4.8%安。渡航制限の拡大を巡る懸念から航空株も売り込まれ、NYSEアーカ航空指数 (XAL)は6%下落した。
ゴールドマン・サックスが第1・四半期の米経済成長率見通しを下方修正し、新型ウイルスによる一段と大きな影響を予想したことも、投資家の不安を強めた。[nL3N2AO3JI]
米株式投資家の不安心理の度合いを示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(VIX指数) (VIX)は、終値ベースで2019年1月以来の高水準となる25.03で終了した。
ユナイテッドヘルス・グループ (N:UNH)やシグナ (N:CI)など医療保険大手も8%近く急落。米大統領選に向けた民主党の候補者選び第3戦となったネバダ州党員集会で、民間保険の廃止を支持するサンダース上院議員が勝利したことが重しとなった。
<金先物> 新型コロナウイルスの感染拡大に対する懸念が強まる中で買われ、8営業日続伸した。中心限月4月物の清算値は前週末比27.80ドル(1.69%)高の1オンス=1676.60ドルと、清算値ベースで2013年2月以来約7年ぶりの高値を再び更新した。
韓国やイタリア、中東など世界各地で新型コロナウイルスによる肺炎が拡大。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は世界的流行を意味する「パンデミック」が起こる可能性に各国は備える必要があると強調した。新型コロナウイルスの感染拡大が世界経済を下押すとの懸念から世界的に株安が進行。投資家のリスク回避姿勢が強まり、金には「質への逃避買い」が集まった。
また、午後にかけて外国為替相場がユーロ高・ドル安に振れた。ドル建てで取引される金塊などの商品の割安感につながり、金塊相場の押し上げ要因となった。
<米原油先物> 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を懸念した売りが殺到し、大幅続落した。米国産標準油種WTIの中心限月4月物の清算値は、前週末比1.95ドル(3.65%)安の1バレル=51.43ドル。5月物は1.92ドル安の51.58ドルだった。
中国国内での新型肺炎拡大に一定の歯止めがかかる中、週末にかけては韓国やイタリア、さらにイランを中心とした中東地域で感染報告が相次いだ。これを受け、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は24日、各国は世界的流行を意味する「パンデミック」が起こる可能性に備える必要があると指摘。米紙ワシントン・ポストも、複数の関係者の話として、ホワイトハウスが対策強化に向けて10億ドル近くを議会に要請する可能性があると報じた。
事態が新たな局面を迎えたとの見方が浮上する中、この日は世界的に株安が進行するなどリスク回避一色。景気の冷え込みで石油需要が落ち込むとの懸念も改めて強まり、原油先物相場は23日夜の取引からじりじりと値を削り、24日午後には一時50.45ドルの安値を付けた。
ドル/円 NY終値 110.71/110.74
始値 111.30
高値 111.42
安値 110.34
ユーロ/ドル NY終値 1.0852/1.0856
始値 1.0818 (EUR=)
高値 1.0871
安値 1.0814
米東部時間
30年債(指標銘柄) 17時05分 103*27.00 1.8327% (US30YT=RR)
前営業日終値 101*28.50 1.9170%
10年債(指標銘柄) 17時05分 101*06.50 1.3705% (US10YT=RR)
前営業日終値 100*09.00 1.4700%
5年債(指標銘柄) 17時05分 100*25.75 1.2064% (US5YT=RR)
前営業日終値 100*09.00 1.3160%
2年債(指標銘柄) 17時01分 100*07.63 1.2496% (US2YT=RR)
前営業日終値 100*01.50 1.3500%
終値 前日比 %
ダウ工業株30種 27960.80 -1,031.61 -3.56 (DJI)
前営業日終値 28992.41
ナスダック総合 9221.28 -355.31 -3.71 (IXIC)
前営業日終値 9576.59
S&P総合500種 3225.89 -111.86 -3.35 (SPX)
前営業日終値 3337.75
COMEX金 4月限 1676.6 +27.8
前営業日終値 1648.8
COMEX銀 3月限 1887.6 +34.6
前営業日終値 1853.0
北海ブレント 4月限 56.30 ‐2.20 (LCOc1)
前営業日終値 58.50
米WTI先物 4月限 51.43 ‐1.95 (CLc1)
前営業日終値 53.38
CRB商品指数 170.5657 ‐4.0801 (TRCCRB)
前営業日終値 174.6458 OLJPBUS Reuters Japan Online Report Business News 20200224T225734+0000