[28日 ロイター] -
<為替> ドルが対円で20週間ぶり(訂正)の安値を付けた。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて景気の下支えに適切に対応すると表明したことで、利下げ観測が一段と高まったことが背景。
パウエル議長はこの日の午後に声明を発表し、「米経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は依然として力強い一方、新型ウイルスが経済活動へのリスクとして台頭している。FRBは種々の動向や経済の先行きへの影響を注視しつつ、景気の下支えに向けあらゆる手段を活用しながら適切に対応する」と表明した。[nL3N2AS592]
円は対ドル
主要6通貨に対するドル指数 (=USD)は終盤の取引で0.324%安の98.127。米利下げ観測が高まる中、週初からの下落率は約1%に達した。
市場では、FRBが3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で少なくとも25ベーシスポイント(bp)の利下げを実施する確率が完全に織り込まれているが、パウエル議長の声明を受け、これよりも早い時期に利下げに踏み切る可能性があるとの見方も台頭。ダイヤモンドヒル・キャピタルの最高投資責任者(CIO)、ビル・ゾックス氏は「市場で利下げ観測が高まっていることで、FRBは3月17─18日の次回FOMCより前に利下げに動く可能性もある」と述べた。
この日はアフリカのナイジェリアのほか、バルト3国の1つであるリトアニアなど6カ国が国内初の感染例を報告。世界保健機関(WHO)はこの日、新型ウイルスの感染拡大リスクについて、世界全体の評価を「非常に高い」に引き上げた。危険性評価で最高水準となる。[nL3N2AS1K7][nL3N2AS52Y]
TD証券のグローバル外為戦略部門責任者、マーク・マコーミック氏は「先週は円はもはや安全通貨ではないと見なす動きも出ていたが、円は現在は先週の水準と比べると格段に上昇しており、適切な水準に戻した」と指摘。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)によるリバランスの動きも円の支援要因になっているとの見方を示した。
NY外為市場:[USD/J]
<債券> 新型コロナウイルスを巡る懸念が強まる中、国債への買いが継続し、2年債利回りは1%を割り込んだ。こうした中、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が緊急声明を出し、「あらゆる手段で適切に対応」すると表明した。
10年債利回り (US10YT=RR)は16ベーシスポイント(bp)低下の1.1388%。一時1.1159%と4日連続で過去最低を更新した。
パウエル議長は、米経済は引き続き底堅いものの、新型コロナウイルスの感染拡大が経済へのリスクになっており、景気の下支えに向けFRBとして適切に対応すると表明した。[nL3N2AS592]
DAダビッドソン(シアトル)の債券トレーディング部バイスプレジデント、メアリー・アン・ハーレー氏は、パウエル氏の声明を受け当初は売りが出たものの、その後はFRBが利下げを急がないとの見方から再び買いが優勢になったと指摘。「議長が『適切に対応する』と発言するものと既に分かっていた」と話した。
新型ウイルスの感染を巡っては、ナイジェリアなど新たに世界6カ国で初の感染例が報告されており、市場ではパンデミック(世界的大流行)への移行や経済への影響が懸念されている。
CMEグループのフェドウオッチによると、米金利先物市場が織り込むFRBによる3月の利下げ確率は100%で、利下げ幅予想は0.25%と0.50%が五分五分になっている。[nL3N2AS59I]
2年債利回り (US2YT=RR)は22.4bp低下の0.8795%と、2016年終盤以来の低水準近辺。2年債と10年債の利回り格差
米金融・債券市場:[US/BJ]
<株式> S&P総合500種が7日続落し、週間では2008年の世界金融危機以来の大幅な下げとなった。新型コロナウイルスの急速な感染拡大がリセッション(景気後退)につながるとの懸念が高まった。
ダウ工業株30種とナスダック総合指数も週間の下落率は08年10月以降で最大となった。
もっとも、この日は引けにかけて急速に値を戻し、ナスダックは取引時間中に一時3.5%下落したものの、終値で0.01%高。ダウも値下がり幅が一時1000ポイントを超え4.2%安となったが、終値は1.4%安だった。
引け後の取引では、S&P500Eミニ先物
前日には主要3株価指数がいずれも終値ベースの過去最高値から10%超下落し、調整局面入りが確認された。
株価の支援材料となったのはパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の声明だ。パウエル議長は28日午後に声明を発表し、米経済は引き続き底堅いものの、新型コロナウイルスの感染拡大が経済へのリスクになっており、景気の下支えに向けFRBとして適切に対応すると表明した。[nL3N2AS592]
ただ投資家は株式から安全資産である米債への資金シフトを強めており、米10年債利回りは4日連続で過去最低を更新した。
新型ウイルスの感染はこの日も一段と広がった。4大陸の少なくとも6カ国で初の感染例が伝わり、世界保健機関(WHO)は28日、新型コロナウイルスの感染拡大リスクについて、世界全体の評価を「非常に高い」に引き上げた。[nL3N2AS52Y]
ナティクシス・インベストメント・マネジャーズのチーフ・ポートフォリオ・ストラテジスト、ジャック・ジャナシーウィックツ氏は「市場は危機が去った兆しとして、新型ウイルスが制御され、新たな国で感染が拡大せず、米国内でも大幅な感染が見られないという証拠を求めている」と指摘。中国以外での新型ウイルスの感染拡大はリスク資産へのエクスポージャー縮小を促しているとし、次の試金石は米国内での感染拡大だろうと述べた。
「恐怖指数」として知られるシカゴ・オプション取引所のボラティリティー指数(VIX)は一時49.48まで上昇したが、終値は0.95ポイント高の40.11とこの日の安値圏で引けた。
S&Pの主要11セクターでは、金利動向に敏感な金融 (SPNY)が最もS&P500を押し下げ、終値は2.6%安。公益事業 (SPLRCU)は下落率トップで、3.3%安となった。金利に敏感でディフェンシブ銘柄としても見られがちな不動産<.SPLRCR>と主要消費財 (SPLRCS)は共に2%超下げた。
一方、エネルギー (SPNY)や情報技術 (SPLRCT)、通信サービス (SPLRCL)は上昇した。
ニューヨーク証券取引所では値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を3.39対1の比率で上回った。ナスダックでも1.95対1で値下がり銘柄数が多かった。
米取引所の合算出来高は193億1000万株。直近20営業日の平均は92億5000万株。
米国株式市場:[.NJP]
<金先物> 世界的な金融市場の混乱を背景に投資家心理が冷え込む中、4日続落した。中心限月4月物の清算値は前日比75.80ドル(4.61%)安の1オンス=1566.70ドルと、2月5日以来約1カ月ぶりの安値水準。週間下落率は4.98%となった。
新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が中国国外で鮮明となる中、金融市場は世界的に混乱。米国では、この日も株価と金利が下げ止まらず、ろうばい売りは安全資産とされる金塊にも波及した。また、新型ウイルスの発生地とみられる中国経済への打撃は必至の情勢となっており、中国勢による金塊買い需要が落ち込むとの懸念も強い。相場は早朝まで横ばい圏を保っていたものの、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が世界全体での新型コロナウイルスのリスク評価を従来の「高い」から「非常に高い」に引き上げたと発表すると、急ピッチで下落。午後には一時1564.00ドルの安値を付けた。
金塊現物相場は午後1時51分現在、64.750ドル安の1575.745ドル。
NY貴金属:[GOL/XJ]
<米原油先物> 世界経済減速に伴う需要減退懸念を背景に売りが加速し、6営業日続落した。米国産標準油種WTI4月物の清算値は前日比2.33ドル(4.95%)安の1バレル=44.76ドルと、中心限月ベースで2018年12月下旬以来1年2カ月ぶりの安値となった。週間では8.62ドル(16.15%)安。5月物の清算値は2.35ドル安の44.94ドルだった。
中国で発生した新型コロナウイルスの感染が世界各地に飛び火し、実体経済に悪影響を及ぼすとの懸念が広がっている。投資家のリスク回避姿勢が一段と強まり、景気減速懸念に伴うエネルギー需要の先細り観測が台頭。世界的な株安連鎖もリスク資産である原油の圧迫材料となり、相場は朝方から下げ足を速め、一時43.85ドルまで下落した。その後、急ピッチで下げた反動や週末要因から買い戻しが入ったが、戻りは限定的だった。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は27日、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国が3月に開く予定の会合で、サウジアラビアが日量100万バレルの追加減産を提案すると報道。ただ、一部の市場関係者からは、産油国の見通しは楽観的過ぎだったとの指摘も出ており、積極的な買いにはつながらなかったもようだ。
NYMEXエネルギー:[CR/USJ]
ドル/円 NY終値 108.07/108.10
始値 108.68
高値 108.86
安値 107.52
ユーロ/ドル NY終値 1.1025/1.1028
始値 1.0993 (EUR=)
高値 1.1045
安値 1.0952
米東部時間
30年債(指標銘柄) 17時05分 107*13.00 1.6841% (US30YT=RR)
前営業日終値 105*00.50 1.7830%
10年債(指標銘柄) 17時05分 103*05.00 1.1633% (US10YT=RR)
前営業日終値 101*28.00 1.2990%
5年債(指標銘柄) 17時05分 100*27.00 0.9516% (US5YT=RR)
前営業日終値 100*02.75 1.1070%
2年債(指標銘柄) 17時05分 100*12.25 0.9308% (US2YT=RR)
前営業日終値 100*01.38 1.1030%
終値 前日比 %
ダウ工業株30種 25409.36 -357.28 -1.39 (DJI)
前営業日終値 25766.64
ナスダック総合 8567.37 +0.89 +0.01 (IXIC)
前営業日終値 8566.48
S&P総合500種 2954.22 -24.54 -0.82 (SPX)
前営業日終値 2978.76
COMEX金 4月限 1566.7 ‐75.8
前営業日終値 1642.5
COMEX銀 5月限 1645.7 ‐127.8
前営業日終値 1773.5
北海ブレント 5月限 49.67 ‐2.06 (LCOc1)<0#LCO:>
前営業日終値 51.73
米WTI先物 4月限 44.76 ‐2.33 (CLc1)<0#CL:>
前営業日終値 47.09
CRB商品指数 159.4459 ‐3.6722 (TRCCRB)
前営業日終値 163.1181
*日本時間29日配信の記事で、英文の訂正により外為の本文1段落目の「7週間ぶり」を「20週間ぶり」に訂正します。 OLJPBUS Reuters Japan Online Report Business News 20200228T225841+0000