[13日 ロイター] - <為替> ドルが対円で3%を超える大幅な値上がりになり、108円台に急上昇した。米国株の戻りでドル高の流れだったところへ、トランプ大統領が新型コロナウイルスの感染拡大を受け非常事態を宣言したことで一段高になった。
ドル/円は3.5%高の108.34円。上げは2013年4月以降で最大を記録した。トランプ大統領の会見前は107.66円付近で推移していた。前日は104円台後半で引けていた。
トランプ氏は13日、新型コロナウイルスへの対応で国家非常事態を宣言した。同宣言により、約500億ドルの連邦政府の支援金提供が可能になる。
スコシアバンク(トロント)の主任FXストラテジスト、ショーン・オズボーン氏は「新型コロナによる経済への悪影響を巡る懸念は根強い」とし、通貨スワップ市場でドルの調達コストは上がっていると指摘した。
こうした中、ウェルズファーゴは、金融市場の混乱リスクは継続しており、円相場は100円を超えて値上がりする見込みとした上で「利下げを含む中銀の金融政策対応が市場の動揺の沈静化にほとんどつながっていないのは、政府による財政政策対応の遅れによる可能性がある」と述べた。
ドル/スイスフランは1.1%高の0.9543フラン。ドルは通貨バスケット (=USD)に対し98.362。ドルは対ユーロ (EUR=)で0.9%高の1.1091ドル、対ポンドでは2%高の1.2302ドル。
<債券> トランプ米大統領が午後になって新型コロナウイルスへの対応で国家非常事態を宣言したことを受け国債利回りは上昇し、10年債利回りは1%台を回復した。
国家非常事態が宣言されたことで、約500億ドルの連邦政府の支援金提供が可能になる。10年債 (US10YT=RR) 利回りは非常事態宣言前は0.934%だったが、宣言を受け1.019%に上昇。前日終盤は0.852%だった。
連邦準備理事会(FRB)の金融調節を担うニューヨーク連銀は12日、1兆5000億ドル規模の追加レポオペを実施すると発表。ただ銀行の反応は鈍く、流動性が低くボラティリティーが高い状態は解消されていない。
パイパー・サンドラー(シカゴ)の債券戦略部門責任者、ジャスティン・ホーゲンドーン氏は、「市場のボラティリティーは極めて高く、流動性は乾ききっている」と述べた。
PGIMフィクストインカム(ニューアーク)の最高投資責任者(CIO)、ロバート・ティップ氏は、FRBの措置が市場の支援要因になったが、流動性はなお薄く、ボラティリティーは高いと指摘。市場ではFRBが来週の連邦公開市場委員会(FOMC)で大幅な利下げを決定するとの観測が出ているとし、「経済に対する基調的な衝撃がどの程度深刻なものになるのか、当面は誰にも分からない」と述べた。
30年債 (US30YT=RR)利回りは朝方の取引で1.41%まで下げたものの、午後の取引で1.623%に上昇。前日終盤は1.411%だった。
2年債 (US2YT=RR)利回りは0.518%。
<株式> 急反発。前日に1987年のブラックマンデー以降で最大の下げを記録したダウ平均株価 (DJI)はこの日、1985ドル高で取引を終えた。序盤から買い戻しが先行し、その後トランプ大統領が新型コロナウイルス対策で非常事態を宣言したことで買いの勢いが強まった。一方、週間では主要株価指数が軒並み8%を超える下げになった。
トランプ大統領は13日、新型コロナウイルスへの対応で国家非常事態を宣言した。トランプ氏は記者会見で「状況は悪化する可能性がある。今後8週間が重大な局面となる」とし「連邦政府の全権を解き放つために、非常事態を宣言する」と表明。さらに「新型コロナ対応に向け最大500億ドルの拠出に道を開く」と述べた。
オークブルック・インベストメンツ(イリノイ州)のピーター・ジャンコフスキス共同最高投資責任者(CIO)は「市場は当初、500億ドル相当の支援金の使途などについて懐疑的だったが、トランプ大統領とともに会見に出席した各分野のトップらが対応を説明するにつれ、市場は好感する流れになった」と述べた。
主要株価指数は2月中旬に付けた最高値から2割程度値下がりしている。民主党が多数を握る下院ではコロナ関連の景気対策法案が可決される見通しだが、上院やトランプ大統領が支持するかどうかは不透明だ。
業種別では全ての指数が上昇。金融株 (SPSY)は13.23%値上がりした。連邦準備理事会(FRB)の金融調節を担当するニューヨーク連銀は13日、総額370億ドルの国債買い入れを実施すると発表。買い入れ対象は前日の銘柄拡充に伴い、当初の短期債から中長期債にまで拡大する。連銀は国債買い入れについて、新型コロナによる「非常に特異な市場の混乱」に対応するものと説明した。
エネルギー株 (SPNY)は8.84%高。原油価格の上昇につられる格好となった。一方、原油価格は週間ベースで2008年の世界金融危機以来の下落率を記録。新型コロナの感染拡大のほか、サウジアラビアとロシアの価格競争が重しになった。
個別銘柄ではアップル (O:AAPL)が12%急騰。中国の販売店42店舗全ての営業を再開すると明らかにした。
ニューヨーク証券取引所では値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を4.73対1の比率で上回った。ナスダックでも2.95対1で値上がり銘柄数が多かった。
米取引所の合算出来高は171億株。直近20営業日の平均は130億2000万株。
<金先物> 米政府による新型コロナウイルス経済対策の内容に注目が集まる中、ドル相場の上昇に伴う割高感などに圧迫され、4日続落した。中心限月4月物の清算値は、前日比73.60ドル(4.63%)安の1オンス=1516.70ドル。週間では9.31%安となった。
新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、世界経済の景気後退(リセッション)観測が浮上する中、この日は米政府が発表間近としている景気対策への期待を手掛かりに市場のリスク警戒ムードが幾分緩和。金塊相場は朝方にかけ、横ばい圏で浮動していた。しかし、ダウが前日に1987年10月のブラックマンデー(暗黒の月曜日)以来の大幅な下落率を記録した米株式市場では、この日も不安定な値動きが続いた。このため、損失補填(ほてん)の換金売りが再燃したほか、外国為替市場で基軸通貨のドル買いが進行したこともドル建てで取引される金塊の割高感につながり、金相場は午後に一時1504.00ドルの安値を付けた。
金塊現物相場は午後1時36分現在、79.375ドル安の1515.775ドル。
<米原油先物> 前日の急落の反動から買い戻しが入り、反発した。米国産標準油種WTIの中心限月4月物の清算値は前日比0.23ドル(0.73%)高の1バレル=31.73ドルだった。今週、新型コロナウイルス感染拡大の影響による需要減退観測の中での主要産油国の「価格戦争」懸念から大幅安となり、週間では23.1%安。
ロイターによると、下落率は2008年以来の大きさ。5月物は0.13ドル高の32.11ドルとなった。前日の原油相場は、欧州からの米入国禁止措置を受けて、エネルギー需要見通しに警戒感が広がり、4%を超える大幅安。この日は売られ過ぎとの見方からの持ち高調整目的の買い戻しや、安値拾いの買いが優勢となった。また、この日は米株価が急反発、投資家のリスク回避姿勢が和らぐ中、株式と並ぶリスク資産である原油にも買いが入った。
ただ、外国為替市場では、対ユーロでドル高が優勢。ドル建てで取引される原油などの商品に割高感が生じたことから、原油の上値は重かった。
ドル/円 NY終値 107.91/107.94
始値 106.24
高値 108.49
安値 106.22
ユーロ/ドル NY終値 1.1105/1.1108
始値 1.1159 (EUR=)
高値 1.1186
安値 1.1055
米東部時間
30年債(指標銘柄) 17時05分 109*17.50 1.5973% (US30YT=RR)
前営業日終値 114*10.50 1.4110%
10年債(指標銘柄) 17時05分 104*28.00 0.9829% (US10YT=RR)
前営業日終値 106*05.00 0.8520%
5年債(指標銘柄) 17時05分 101*29.25 0.7311% (US5YT=RR)
前営業日終値 102*09.75 0.6520%
2年債(指標銘柄) 17時05分 101*06.38 0.5082% (US2YT=RR)
前営業日終値 101*07.75 0.4890%
終値 前日比 %
ダウ工業株30種 23185.62 +1,985.00 +9.36 (DJI)
前営業日終値 21200.62
ナスダック総合 7874.88 +673.07 +9.35 (IXIC)
前営業日終値 7201.80
S&P総合500種 2711.02 +230.38 +9.29 (SPX)
前営業日終値 2480.64
COMEX金 4月限 1516.7 ‐73.6
前営業日終値 1590.3
COMEX銀 5月限 1450.0 ‐150.5
前営業日終値 1600.5
北海ブレント 5月限 33.85 +0.63 (LCOc1)
前営業日終値 33.22
米WTI先物 4月限 31.73 +0.23 (CLc1)
前営業日終値 31.50
CRB商品指数 140.8376 ‐1.1045 (TRCCRB)
前営業日終値 141.9421
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