[29日 ロイター] - <為替> ドルがユーロに対して小幅に下落した。欧州連合(EU)が発表した7500億ユーロ(8280億ドル)の新型コロナ復興基金案が引き続きユーロの追い風となっているほか、月末フローが影響したという。
トランプ米大統領がこの日、香港の統制強化に向けた中国政府の「国家安全法」制定計画に対抗するため、香港に対する優遇措置を撤廃するよう政権に指示したと明らかにしたが、ドルへの影響は限定的だった。
テンパスのディーリング・トレーディング担当バイスプレジデント、ジョン・ドイル氏は、「市場は新たな関税や制裁、第1段階の米中通商合意の撤回などに身構えていたが、そうならなかった」と述べた。
ユーロ (EUR=)は0.13%高の1.1091ドル。4日続伸となった。週間では1.7%高と9週間で最大となり、3月下旬以降で初めて200日移動平均線を上抜いた。
アクシコープのチーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト、スティーブン・イネス氏によると、米国株が5月に3%超上昇したことを受け、月末のポートフォリオ調整において「中規模のドル売りが出た」という。
ポンド
<債券> 米国債利回りが低下した。トランプ米大統領が記者会見で香港に対する優遇措置を撤廃するよう指示したと明らかにしたものの、米中通商合意は維持する姿勢を示したことが背景。
中国全国人民代表大会(全人代)が28日に香港国家安全法の制定方針を圧倒的賛成多数で採択したことを受け、トランプ大統領はこの日にホワイトハウスで行った記者会見で、中国は香港の高度な自治に関する約束を破ったとし、「香港に対する優遇策を撤廃する措置を取る」と述べた。
市場では、米中の対立が精鋭化する中、両国のこれまでの通商合意が撤回されるとの懸念が出ていたが、トランプ氏のこの日の発言は主に香港問題が中心。DRWトレーディング(シカゴ)の市場ストラテジスト、 ルー・ブライエン氏は「一段と厳しい罰則や制裁措置が打ち出されれば、株式市場に対するリスクになる」とし、「トランプ氏は、中国に対する反応と通商合意を別々のものとして捉えることができている」と述べた。
市場では、トランプ大統領が中国が保有する米国債の一部償還の拒否を表明する可能性があるとの見方も出ていた。アナリストは、実際にこうした事態になれば債券市場が大きな打撃を受け、国債利回りは上昇すると予想。ブライエン氏は「壊滅的な状況となる」と述べた。
10年債 (US10YT=RR)利回りは6ベーシスポイント(bp)低下の0.648%。2年債と10年債の利回り格差
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長はこの日、ウェブキャストのイベントで、種々の政策手段を活用しなから新型コロナウイルス禍で打撃を受けた経済への下支えを継続すると強調。一方で、新型コロナの感染第2波は経済回復の頓挫につながるとの見方を示した。
この日発表の米経済指標では、4月の個人消費支出が前月比13.6%減と、1959年の統計開始以降で最大の落ち込みとなった。ただ、新型コロナ対策として1人当たり1200ドルの現金が支給されたほか、失業給付が寄与し、個人所得は10.5%増と、過去最大の伸びとなった。
<株式> 全般的に不安定な相場展開となる中、ダウ平均株価 (DJI)が17ドル安で引けたほか、S&P総合500種指数 (SPX)は小幅高で終了した。トランプ大統領がこの日行った中国に関する発表で、米中の「第1段階」通商合意を損なうような発言を控えたことが、市場に一定の安心感をもたらしたという。
週間や月間では主要3指数がそろって値上がりした。
トランプ大統領は、香港の統制強化に向けた中国政府の「国家安全法」制定計画に対抗して、香港への優遇措置を撤廃するよう政権に指示したと明らかにした。
インディペンデント・アドバイザー・アライアンス(ノースカロライナ州)のクリス・ザッカレッリ氏は「市場はトランプ氏が米経済に打撃を与えるような発言をするのではないかと心配していたが、実際の発言は予想ほど深刻な内容ではなかった」と述べた。
トランプ氏は、世界保健機関(WHO)が実質的に中国の傀儡(かいらい)機関になっていると批判した上で、WHOとの関係を断絶し、資金拠出を停止するとも表明した。
ニューヨーク州のクオモ知事は、ニューヨーク市が6月8日から第1段階の経済再開を始める見通しで、同州北部5地区では第2段階の経済再開に移行すると発表した。
金融当局者発言では、連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が、種々の政策手段を活用しなから新型コロナウイルス禍で打撃を受けた経済への下支えを継続すると強調する一方、新型コロナの感染第2波は経済回復の頓挫につながるとの見方を示した。
個別銘柄では、交流サイト(SNS)のツイッター (N:TWTR)が2%安。フェイスブック (O:FB)は0.2%安。トランプ大統領は28日、SNS企業などを保護する法律を撤廃するか効力を弱める法律を導入すると表明し、大統領令に署名した。
ニューヨーク証券取引所では値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を1.04対1の比率で上回った。ナスダックでは1.04対1で値上がり銘柄数が多かった。
米取引所の合算出来高は136億2000万株。直近20営業日の平均は113億株。
<金先物> 米中対立激化への警戒感を背景に続伸した。中心限月8月物の清算値は前日比23.40ドル(1.35%)高の1オンス=1751.70ドル。月間ベースでは約3%高。
中国の全国人民代表大会(全人代)は前日、香港統制を強化する「国家安全法」の導入方針を採択。これを受け、トランプ米大統領は29日の清算値確定後に記者会見し、香港の特別な地位剥奪に向けたプロセスを開始するなどと発表した。
米中関係の悪化は必至で、安全資産とされる金塊の需要は高まっている。米商務省が朝方発表した4月の米個人消費支出(PCE)やミシガン大学発表の5月の消費者景況感指数などの経済指標も軒並み軟調で、金相場を下支えした。
金塊現物相場は午後3時17分現在、18.470ドル高の1731.215ドル。
<米原油先物> 欧米での経済活動再開による需要増への期待や、米国の在庫余力拡大を好感し続伸した。米国産標準油種WTIの中心限月7月物の清算値は前日比1.78ドル(5.28%)高の1バレル=35.49ドルとなった。
中心限月ベースで前月末比88.38%高と大幅に上昇した。8月物は1.78ドル高の35.84ドルだった。
新型コロナウイルスの感染拡大で事実上停止していた経済活動を再開する動きが欧米で続いており、石油需要増加への期待が継続している。
28日に米エネルギー情報局(EIA)が発表した統計で、WTI先物の受け渡し場所となるオクラホマ州クッシングなどの在庫余力が増加したことが、安心感につながった。一方、中国は全国人民代表大会で、反体制活動を取り締まる「国家安全法」を香港に導入する方針を決定。トランプ米政権は対抗措置を検討している。米中対立の激化が景気回復の足を引っ張り、石油需要を抑制するとの見方が強まり、相場が伸び悩む場面もあった。
ドル/円 NY終値 107.77/107.80
始値 107.2
高値 107.89
安値 107.09
ユーロ/ドル NY終値 1.1098/1.1100
始値 1.1129 (EUR=)
高値 1.1144
安値 1.1082
米東部時間
30年債(指標銘柄) 17時05分 96*02.50 1.4110% (US30YT=RR)
前営業日終値 94*18.00 1.4750%
10年債(指標銘柄) 17時05分 99*23.50 0.6526% (US10YT=RR)
前営業日終値 99*07.50 0.7050%
5年債(指標銘柄) 17時05分 99*23.50 0.3036% (US5YT=RR)
前営業日終値 99*16.75 0.3460%
2年債(指標銘柄) 17時05分 99*29.50 0.1642% (US2YT=RR)
前営業日終値 99*28.75 0.1760%
終値 前日比 %
ダウ工業株30種 25383.11 -17.53 -0.07 (DJI)
前営業日終値 25400.64
ナスダック総合 9489.87 +120.88 +1.29 (IXIC)
前営業日終値 9368.99
S&P総合500種 3044.31 +14.58 +0.48 (SPX)
前営業日終値 3029.73
COMEX金 8月限 1751.7 +23.4
前営業日終値 1728.3
COMEX銀 7月限 1849.9 +53.2
前営業日終値 1796.7
北海ブレント 7月限 35.33 +0.04 (LCOc1)<0#LCO:>
前営業日終値 35.29
米WTI先物 7月限 35.49 +1.78 (CLc1)<0#CL:>
前営業日終値 33.71
CRB商品指数 132.2442 +2.4849 (TRCCRB)
前営業日終値 129.7593
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