Karin Strohecker Vincent Flasseur
[ロンドン 4日 ロイター] - 主要な先進国および新興国の中央銀行は、成長見通しとインフレリスクで先行きの不透明さが増す中、8月に金融引き締めが一休みとなり、利上げのペースと規模が一段とシフトダウンした。
8月は金融政策決定が少なくなりがちで、最も取引量の多い主要10通貨(G10)を管轄する中銀のうち政策決定会合を開いたのはわずか4行だった。このうち利上げはノルウェーと英国の2行。利上げ幅は計50ベーシスポイント(bp)と、G10中銀の月間合計利上げ幅としては1月以来の低水準だった。ロイターのデータによると、オーストラリアとニュージーランドは政策金利を据え置いた。
これに対して7月は計6回の決定会合が開かれ、利上げは計3回。年初来のG10中銀の利上げ回数は計33回で、合計利上げ幅は1075bpとなっている。
しかし先行きの見通しは不透明だ。米国の経済指標が予想外に底堅い一方、中国や欧州は大半の統計が予想を下回り、市場は主要中銀が金利緩和に踏み切るタイミングの手掛かりを探っている。
INGのマクロ経済グローバルヘッド、カーステン・ブルゼスキ氏は「この成長鈍化の流れが、インフレ圧力はさらに緩むはずだという明るい見方につながっている」と指摘。成長の鈍化は多くの中銀にとって、インフレ率が目標に戻るのには十分でないが、利上げのピークを視野に入れるのに十分な弱さだとした。ただ「中銀が利上げ打ち止めを正式に表明することはあり得ない。最初の利下げ時期について憶測を膨らませたくないからだ」という。
新興国経済全体では、金利サイクルの転換が一部地域で定着していることを示す証拠がさらに増えた。ブラジル中銀は予想を上回る50bpの利下げを決めて金融緩和サイクルに入った。中南米ではブラジルに先立ってチリが7月に利下げしたほか、既にコスタリカとウルグアイも利下げしている。
中国は、ロイターのサンプルに含まれる新興国中銀18行のうち、8月に利下げした2行のうちの1行。
しかし他の新興国は利下げからほど遠い状態だ。自国通貨安と根強いインフレとの戦いに直面し、政策当局者は利下げではなく利上げを迫られた。
トルコは8月に750bpの超大幅利上げを実施。ロシアは350bp、タイは25bp利上げした。
新興国市場の年初来累計利上げ回数は27回、合計利上げ幅は2850bp。これは前年同期の92回、7425bpを大幅に下回っている。
一方、新興国の年初来の金融緩和は計5回で合計幅は220bpだ。
主要中銀が2024年まで引き締め的な政策を維持すると予想される中、多くの新興国は政策の余地は限られるのではないかとアナリストはみている。
ムーディーズのシニア・バイス・プレジテントのマドハビ・ボキル氏は、「主要中銀は2024年まで制約的な政策スタンスを維持するだろう。先進国の中銀が今なおインフレと戦っており、米国の金利見通しも不透明であるため、新興国の中銀が大幅な金融緩和を行う可能性は低い」と述べた。
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