[フランクフルト 7日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は7日、政策金利を予想通り据え置いた。金利を引き下げる準備はまだできていないとしながらも、インフレ見通しを下方修正して想定よりも早い鈍化を確認し、年内の利下げ着手に向け慎重な地ならしを行った。
中銀預金金利は昨年9月の利上げ以降、過去最高の4.0%に据え置いている。インフレ鈍化を反映して声明は小幅に修正。今回新たに発表したECBスタッフ予測でインフレ低下の見込みが示されたことで、今後発表されるデータ、特に賃金に関するデータでこの傾向が裏付けられれば、ECBが6月の理事会で利下げに着手する準備を進めている可能性があることが示唆された。
<6月の利下げ示唆>
ラガルドECB総裁は理事会後の記者会見で「今回の理事会では利下げについて議論しなかった」としながらも、「制約的なスタンスの縮小について討議し始めたところだ」と言及。第1・四半期の賃金データが発表された後の6月6日の理事会で利下げが決定される公算があることを示唆した。
ECBの次の理事会は4月11日。ラガルド氏は「4月の理事会までにあと少しのデータが入手される。6月の理事会までにはさらに多くのデータが得られる。われわれはデータに依存しているため、この違いは重要になる」と述べた。
ただラガルド氏は、ECBが利下げに踏み切るにはより多くの証拠が必要として、慎重な見方も表明。「(インフレ率の)明確な低下が進行中であり、インフレ目標に向けて順調に前進している。その結果、われわれはより自信を深めているが、十分ではない」と語った。
<インフレ見通し下方修正>
ECBは声明で「1月の前回理事会以降、インフレ率は一段と低下した。基調インフレの多くの指標は一段と鈍化しているが、賃金の力強い伸びを一因に域内の物価圧力は依然として高い」とし、「インフレ(見通し)は下方修正されており、特に2024年は主にエネルギー価格の寄与度の低下を反映している」と指摘した。
今後の決定について、一部は変動しやすく粘着的な物価を除いた基調インフレの経路次第であることを再確認した。
インフレ見通しは2四半期連続で下方修正し、今年の物価上昇率は2.3%、来年は2%と予測した。
<市場は年内3、4回の利下げを予想>
市場では、ECBが年内に3回、もしくは4回の利下げを実施し、中銀預金金利は3.25%か、3.0%に引き下げられる公算が大きいと予想されている。
コメルツバンクのチーフエコノミスト、イェルク・クレーマー氏は「ECBが6月に最初の利下げを実施できると考えていることをラガルド総裁は初めて示唆した」とし、「ラガルド氏は最初の利下げに向けて慎重な一歩を踏み出した」と述べた。