■今後の見通し
2.明光義塾事業の再成長戦略
明光ネットワークジャパン (T:4668)は個別指導学習塾の先駆者としてFC方式により全国展開を進め、教室数、生徒数の増加により成長を続けてきたが、2016年8月期以降は3期連続で教室数、生徒数が減少し、苦戦を強いられている状況にある。
少子化が進むなかで個別指導学習塾市場に参入する企業が増え、生徒獲得競争が激化するなかで、有効な差別化戦略を打ち出せなかったこと、また、業界トップ企業として既に全国で2,000教室超を展開するなかで、新規エリアの開拓余地が少なくなっていたことが苦戦の要因と考えられる。
競争激化により教室当たり生徒数が減少し、不採算教室の閉鎖・休校数が新規開設・増設数を上回る状況が続いているため、まずは教室当たり生徒数を回復させることが再成長に向けての重要な課題と言える。
ちなみに、FC教室における損益分岐点となる教室当たり生徒数は、地域によって差があるものの(家賃の多寡による違い)、オーナーが教室長を兼務している場合は概ね30人前後、教室長を雇用している場合は、50人前後の水準となっている。
こうした状況下、2019年8月期の重点施策として、1)塾サービスの基本に立ち返り、学習指導力やコミュニケーション等、サービスレベルを徹底的に磨き上げ、顧客満足の向上を図ること、2)「MEIKO式コーチング」と「明光eポ」等のICTの活用を全教室に完全浸透させ、あわせて教室環境整備等を進めることで、競合他社との差別化を図ること、3)小学生、中学生、高校生と幅広い生徒層の拡大を図るために、それぞれに最適なサービスを提供するための取組みを開始すること、の3点を掲げている。
特に、「MEIKO式コーチング」は、2020年度からの教育改革でポイントとなる主体的な学びを実践する学習指導法として、生徒獲得のための差別化戦略として注力していく。
「MEIKO式コーチング」は「学ぶ」と「振り返る」をひとつのサイクルとし、生徒が主体的に学び、振り返ることで様々な「気づき」を体得し、本質的な理解の定着を図ることを目的とした指導法となる。
同社は従来から「MEIKO式自立学習」という指導方針のもと、生徒が自ら考えて答えを導き出せる力を身に着ける学習指導法を行ってきたが、さらに主体性に重点を置いたものとなる。
具体的には、生徒自身が主体的に言葉や文字で自分の考えを表現しながら学習プログラムを進め、授業の終了5~10分前に当日に学習した内容を生徒自身が「振り返りノート」にまとめ、今後の学習計画を作成する。
これら学習記録については、iPadを用いて撮影し、「明光eポ」のシステムに取り込んでいくことになる。
「明光eポ」に学習記録を残すことで、学習プロセスを継続的に蓄積・振り返ることができ、生徒自身が成長を実感できるようになるとともに、主体的な学びを身に着けていくことが可能となる。
また、「明光eポ」に保存された学習記録は、保護者がスマートフォンでいつでも確認することが可能となっている。
従来は、子どもが塾で何を学んでいるのか、また学力がどの程度向上しているのかについては、定期的な講師との面談でしか確認できず、また、不明瞭なことも多いことから休会・退会の理由の1つにもなっていた。
「明光eポ」を活用することで、子どもの学習記録や学力の向上具合がタイムリーかつ客観的に把握できるようになるため顧客満足度も向上し、継続率の向上につながるといった効果が期待される。
課題は実際に現場で学習指導する講師に対して、これら新たな学習指導法やICTの活用法等をいかにスムーズに浸透させていくことができるかという点が挙げられる。
FC教室では研修を受けた教室長が講師に対して研修を行っていくことになるが、講師研修に時間を取られたことで生徒募集活動の時間が少なくなるといった事例も2018年春、夏のシーズンでは見られた。
「MEIKO式コーチング」に対する生徒や保護者からの評価は概ね良好なことから、全教室に完全に浸透すれば、生徒数の増加につながるものと期待される。
また、小・中・高校生とすべての生徒層の拡大を図るため、ICTを活用したコンテンツも充実させていく。
前期からスタートした小学生向けの「明光みらい英語」、中学生向け「明光の中学リスニング」が好評なほか、従来から提供している高校生向け映像学習コンテンツ「MEIKO MUSE」についても着実に受講者数が増加している。
現在、小学生向けの英語検定コースも新たに開発中で、今後提供していく予定となっている。
2018年8月期の生徒数構成比は中学生が全体の57.1%と最も多く、次いで高校生が25.2%、小学性が17.4%となっており、中学生の依存度が大きかったが、今後は小学生や高校生の比率も上昇していくものと予想される。
特に、小学性については「明光みらい英語」が好評なこともあり、2018年8月期にいち早く前期比で増加に転じており、今後の伸びが期待される。
その他の課題としては、Web経由の問合せに対する入会率向上が挙げられる。
2018年8月のWeb経由での問い合わせ件数は前年同月比で37.6%増加しているが、入会者数は9.2%増にとどまっている。
理由は、比較サイトからの一括資料請求の割合が全体の6割強を占めるようになり(前年同月は5割弱)、こうした比較サイトからの入会率が低いことに起因する。
このため、同社ではWeb広告の反応や入会プロセスの分析を行い、公式HPへのアクセス件数を増やす施策を打つことで入会率の向上を図り、生徒数の増加につなげていく考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
2.明光義塾事業の再成長戦略
明光ネットワークジャパン (T:4668)は個別指導学習塾の先駆者としてFC方式により全国展開を進め、教室数、生徒数の増加により成長を続けてきたが、2016年8月期以降は3期連続で教室数、生徒数が減少し、苦戦を強いられている状況にある。
少子化が進むなかで個別指導学習塾市場に参入する企業が増え、生徒獲得競争が激化するなかで、有効な差別化戦略を打ち出せなかったこと、また、業界トップ企業として既に全国で2,000教室超を展開するなかで、新規エリアの開拓余地が少なくなっていたことが苦戦の要因と考えられる。
競争激化により教室当たり生徒数が減少し、不採算教室の閉鎖・休校数が新規開設・増設数を上回る状況が続いているため、まずは教室当たり生徒数を回復させることが再成長に向けての重要な課題と言える。
ちなみに、FC教室における損益分岐点となる教室当たり生徒数は、地域によって差があるものの(家賃の多寡による違い)、オーナーが教室長を兼務している場合は概ね30人前後、教室長を雇用している場合は、50人前後の水準となっている。
こうした状況下、2019年8月期の重点施策として、1)塾サービスの基本に立ち返り、学習指導力やコミュニケーション等、サービスレベルを徹底的に磨き上げ、顧客満足の向上を図ること、2)「MEIKO式コーチング」と「明光eポ」等のICTの活用を全教室に完全浸透させ、あわせて教室環境整備等を進めることで、競合他社との差別化を図ること、3)小学生、中学生、高校生と幅広い生徒層の拡大を図るために、それぞれに最適なサービスを提供するための取組みを開始すること、の3点を掲げている。
特に、「MEIKO式コーチング」は、2020年度からの教育改革でポイントとなる主体的な学びを実践する学習指導法として、生徒獲得のための差別化戦略として注力していく。
「MEIKO式コーチング」は「学ぶ」と「振り返る」をひとつのサイクルとし、生徒が主体的に学び、振り返ることで様々な「気づき」を体得し、本質的な理解の定着を図ることを目的とした指導法となる。
同社は従来から「MEIKO式自立学習」という指導方針のもと、生徒が自ら考えて答えを導き出せる力を身に着ける学習指導法を行ってきたが、さらに主体性に重点を置いたものとなる。
具体的には、生徒自身が主体的に言葉や文字で自分の考えを表現しながら学習プログラムを進め、授業の終了5~10分前に当日に学習した内容を生徒自身が「振り返りノート」にまとめ、今後の学習計画を作成する。
これら学習記録については、iPadを用いて撮影し、「明光eポ」のシステムに取り込んでいくことになる。
「明光eポ」に学習記録を残すことで、学習プロセスを継続的に蓄積・振り返ることができ、生徒自身が成長を実感できるようになるとともに、主体的な学びを身に着けていくことが可能となる。
また、「明光eポ」に保存された学習記録は、保護者がスマートフォンでいつでも確認することが可能となっている。
従来は、子どもが塾で何を学んでいるのか、また学力がどの程度向上しているのかについては、定期的な講師との面談でしか確認できず、また、不明瞭なことも多いことから休会・退会の理由の1つにもなっていた。
「明光eポ」を活用することで、子どもの学習記録や学力の向上具合がタイムリーかつ客観的に把握できるようになるため顧客満足度も向上し、継続率の向上につながるといった効果が期待される。
課題は実際に現場で学習指導する講師に対して、これら新たな学習指導法やICTの活用法等をいかにスムーズに浸透させていくことができるかという点が挙げられる。
FC教室では研修を受けた教室長が講師に対して研修を行っていくことになるが、講師研修に時間を取られたことで生徒募集活動の時間が少なくなるといった事例も2018年春、夏のシーズンでは見られた。
「MEIKO式コーチング」に対する生徒や保護者からの評価は概ね良好なことから、全教室に完全に浸透すれば、生徒数の増加につながるものと期待される。
また、小・中・高校生とすべての生徒層の拡大を図るため、ICTを活用したコンテンツも充実させていく。
前期からスタートした小学生向けの「明光みらい英語」、中学生向け「明光の中学リスニング」が好評なほか、従来から提供している高校生向け映像学習コンテンツ「MEIKO MUSE」についても着実に受講者数が増加している。
現在、小学生向けの英語検定コースも新たに開発中で、今後提供していく予定となっている。
2018年8月期の生徒数構成比は中学生が全体の57.1%と最も多く、次いで高校生が25.2%、小学性が17.4%となっており、中学生の依存度が大きかったが、今後は小学生や高校生の比率も上昇していくものと予想される。
特に、小学性については「明光みらい英語」が好評なこともあり、2018年8月期にいち早く前期比で増加に転じており、今後の伸びが期待される。
その他の課題としては、Web経由の問合せに対する入会率向上が挙げられる。
2018年8月のWeb経由での問い合わせ件数は前年同月比で37.6%増加しているが、入会者数は9.2%増にとどまっている。
理由は、比較サイトからの一括資料請求の割合が全体の6割強を占めるようになり(前年同月は5割弱)、こうした比較サイトからの入会率が低いことに起因する。
このため、同社ではWeb広告の反応や入会プロセスの分析を行い、公式HPへのアクセス件数を増やす施策を打つことで入会率の向上を図り、生徒数の増加につなげていく考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)