欧州時間の外国為替市場は、午後11時に予定されているパウエルFRB議長の講演を前に全般的に落ち着いた値動きとなっている。午後5時24分時点でのドルインデックスは0.18%高の98.238となっている。
貿易摩擦や減税効果の減少からくる景気減速の懸念が高まっている。この情勢を背景に利下げを要求するトランプ大統領からの政治的圧力を受けているパウエル議長の講演内容が注目されている。
中国や欧州、日本の減速に続き、米国でも製造業PMIが約10年ぶりに50を下回った。しかし、小売売上高でも示されたように米国内の消費は堅調であり、FRBが積極的な金融緩和に踏み込む必要性に疑義を生む大きな要因となっている。前回のFOMCで利下げに反対票を投じたジョージ・カンザスシティー地区連銀総裁は木曜日に利下げに反対を表明し、今年投票権はないハーカー・フィラデルフィア地区連銀総裁も同様に利下げの必要性を認めなかった。
「今の市場価格と比べると、パウエル議長の講演内容はその期待に応えない可能性が高いと考えています。引き続き米ドルは強いでしょうし、為替市場における高ベータ通貨は安くなる可能性があります」とニューヨーク銀行のストラテジストであるジョン・ヴェリス氏は顧客向けにレポートしている。
しかし、ヴェリス氏は「より積極的な行動を期待している市場の方が、FOMCのタカ派よりも現実に近いと信じています。政治的リスクと不確実性が解決しない限り第4四半期から2020年にかけてハト派政策をとることになると思います」と述べた。
すでに欧州と日本でマイナス金利となっているこの暗い長期的見通しは、ますます多くのエコノミストの共通認識となっている。
「市場が確信をもって日本と欧州の今後を予想しているのは、金利がゼロに張り付き、脱出の見込みはないという意味でブラックホール的な経済だということであり、実質的に数十年にわたってゼロまたはマイナスの利回りとなるということです」とサマーズ元財務長官は木曜日にツイッターで述べた。
その他では、人民元が2日連続で11年ぶりの安値をつけた。また、ポンド/ドルはジョンソン英首相とマクロン仏大統領・メルケル独首相との会談後に上昇した分(ポンド安)の半値まで戻しており、0.39%安の1.2202となっている。
日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄という驚きの決断を下したことで、ウォン安が進んだドル/ウォンは0.04%高の1209.90まで戻している。