[ロンドン 14日 ロイター] - 英金融大手バークレイズは、気候変動に最も影響を受けにくい通貨はユーロだとする報告書を公表した。人民元と円は、地球温暖化の影響を和らげる取り組みが強化されなければ、最も大きな影響を受けると警告した。
バークレイズは、気温の上昇とそれに関連する経済コストが為替レートに対して実際に影響を及ぼし、リスクの増大をもたらす可能性があると指摘した。
バークレイズが想定する最も深刻なシナリオでは、ユーロはドルに対して2030年までに0.5%上昇し、向こう50年間にわたる10年ごとの平均では3.9%上昇する見通し。ユーロ圏内の貿易が自由化されていることが、地球温暖化の経済的影響を和らげるのに寄与する。
人民元は30年までに5.5%下落し、31年から40年までにはさらに約7%値下がりする見込み。長期的には10年ごとの平均で10%余り下落すると予想されている。
中国の過去20年間に及ぶ急速な工業化と「手ぬるい環境政策」の結果、人民元は向こう50年間で実質的価値が53%下落する可能性がある。
バークレイズは「環境より成長を優先することに伴うリスクと国内での(非政府組織=NGO、弁護士、ジャーナリストなどの)環境ネットワークの欠如が、依然として大きな課題となっている」と指摘した。
日本にとっては海面上昇が最大のリスクで、環境要因により円は30年までに約3%下落すると予想。向こう50年間では55%下落し、今世紀半ばには世界で最も値下がりの大きい通貨になる可能性があるとした。
一方、ドルは「米経済の多様性」に支えられてアウトパフォームする見込み。
バークレイズは、現在の各通貨の状況を踏まえ、向こう50年間にわたる各国の生産性と資本フローの見通しを用いて、各国の成長と通貨が気候変動によってどのような影響を受けるかをモデル化したと説明。分析に盛り込んだ要素として海面の上昇、穀物収穫高の変化、疾病発生の変化、観光、気温上昇による労働生産性への影響を挙げた。
「生産性の低下や生産の減少に見舞われる国は資本フローも減少する公算が大きく」、その結果として通貨も下落するという。