[香港/上海 2日 ロイター] - 中国本土株から外国人投資家が資金引き揚げに動く一方で、国内の投資家が押し目買いの好機とみて買い出動している。外国勢の中国に対する見方が悲観的過ぎるとの理由だ。
上海と香港に重複上場している中国株は現在、国内投資家向け上海A株上場銘柄に比べ、香港上場銘柄の方が約55%割安だ。国内勢と国外勢の乖離度を示す指数は2009年以来の広がりだ。
10月には香港株式市場ハンセン指数 (HSI)が15%下落した。月間下落率では14年ぶりの大きさだった。中国共産党大会で習近平総書記(国家主席)が独裁的な強権体制を強め、中国が政治思想を重視し経済成長を軽視するとの懸念が海外勢の間で広がったことが背景だ。
上海証券取引所と香港証券取引所の相互接続制度では、外国人投資家が10月第4週に中国株を18億ドル売り越した。ところが国内投資家は10月全体で買い越しで、金額では昨年初め以降で最大の120億ドルだった。
中国拠点のヘッジファンド、ウォーター・ウィズダム・アセット・マネジメントのファンドマネジャー、ユアン・ユーウェイ氏は、米利上げサイクルが香港株にとって良い環境ではないのは分かるにしても、「騰訊控股(テンセント・ホールディングス)のような大手中国企業が株価収益率(PER)でたったの9倍だ」とし、さらなる値下がりはファンダメンタルズで妥当に説明できないと語った。
上海重陽投資のワン・シン会長は「われわれは党大会が過ぎたことで主な不透明材料は取り除かれたとみている」とし、中国株には自信を持ち続けているとした。新型コロナ感染対策の厳しい制限措置からも中国は少しずつ脱却するとの期待を示した。
しかし、外国投資家は習氏が厳しいコロナ政策を長引かせ、民間部門の締め付けも続けると懸念している。ゴールドマン・サックスによると、国際的なファンドは過去1年で中国株を約300億ドル売り越しており、中国株組み入れ比率を20年のピーク15%に比べ8%に縮めている。
<好機到来>
中国証券当局は2日、中国の経済成長は依然として国の優先課題であり、経済の改革と自由化を続けると表明。投資家の懸念払しょくに躍起になった。国内投資家などはなおさらこれをもって、買いの好機到来とみている。
特に中国の大手企業が焦点になっている。ゴールドマンによると、先週には外国人がろうばい売りを出している局面で、国内投資家が上海・香港相互接続で買った銘柄上位にテンセントやバイオ医薬品の薬明生物技術、料理宅配大手の美団、動画配信の快手科技などが並んだ。
ウォーターのユアン氏によると、A株は国際的な資金の流れに左右されにくい特性があり、これも多大な投資機会をもたらすという。
香港拠点のアロワナ・アセット・マネジメントのピエール・ホーブレヒト最高投資責任者は先週、金融とインフラのセクターで大型株を幾つか買った。
ホーブレヒト氏は「中国が終わりを迎えると思うのでなければ、こうした企業の行き詰まりも考えにくい。そして、中国は終わるのかという論争はわれわれには馬鹿げて見える」とし、「長期投資家なのに、この水準で中国株を買い始めないとすれば、いつなら買えるのか疑問に思わざるを得ない」と強気の発言を展開した。
(Summer Zhen記者、Samuel Shen記者)