*09:00JST コラム:スペイン地方選に注目
ユーロ圏経済は回復に向かい、やや安心感が広がり始めました。
インフレ沈静化なら、域内経済の懸念はさらに和らぐでしょう。
ただ、政治情勢は安定感の乏しい状況。
5月のスペイン地方選は欧州連合(EU)の今後を占ううえで注目材料になりそうです。
足元で発表されたユーロ圏の経済指標は強弱まちまちながら、成長見通しは昨年末時点から改善しつつあります。
やはりドイツの持ち直しが大きく寄与しており、年後半も現行のペースを維持できれば世界経済のリスク要因は後退する見通し。
インフレはなお高止まり、欧州中央銀行(ECB)の引き締め圧力は続くものの、物価高が鎮静化に向かえば消費を押し上げるとみられ域内経済は好転しつつあります。
ただ、EU加盟各国の政治情勢は安定的とは言えないようです。
イタリアで昨年9月に発足した右派連合のメローニ連立政権は2月の地方選で右派勢力が圧勝したものの、連立内の結束が乱れれば現時点で封印している反EU路線に傾斜するリスクを抱えています。
また、5月21日のギリシャ総選挙でミツォタキス首相率いる中道右派、新民主主義党(ND)の過半数獲得は困難とみられ、警戒感が広がっています。
そして5月28日のスペイン地方選は今年12月の議会選の前哨戦として注目されます。
再選を目指すサンチェス首相はこのところ支持率が低迷し、中道左派の与党、社会労働党は地方選で劣勢に立たされています。
代わって目を引くのが2015年に旗揚げした右派ポピュリズム政党VOX。
反移民や反EUを掲げて党勢を強め、2019年には国政で第3党に躍進しました。
中道右派の最大野党、国民党(PP)に迫る勢いです。
スペイン北部カスティーリャ・イ・レオン州で昨年3月に行われた議会選でPPは第1党に返り咲いたものの、過半数を確保できませんでした。
そこでPPはVOXとの協議により連立政権を発足させています。
VOXにとっては初の政権入りで、来る総選挙でも同様の展開になるとの見方が広がっています。
戦後一貫して左派寄りだったスペインでその流れが変わるなら、先行きに不透明感が増すことになるでしょう。
スペインの国内総生産(GDP)はEU加盟国中第4位で、寄与度は10%程度にとどまります。
ただ、国際通貨基金(IMF)は低成長のEU内で今年+1.1%、来年+2.4%と、ドイツやフランス、イタリアを上回る高い伸びを見込んでいます。
域内のインフレは沈静化に向かっているとはいえ、格差が広がれば政治への不満が高まりやすくなるのはどこの国も同じ。
選挙結果を受けた対ドイツ国債利回りの格差が注視されます。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。
インフレ沈静化なら、域内経済の懸念はさらに和らぐでしょう。
ただ、政治情勢は安定感の乏しい状況。
5月のスペイン地方選は欧州連合(EU)の今後を占ううえで注目材料になりそうです。
足元で発表されたユーロ圏の経済指標は強弱まちまちながら、成長見通しは昨年末時点から改善しつつあります。
やはりドイツの持ち直しが大きく寄与しており、年後半も現行のペースを維持できれば世界経済のリスク要因は後退する見通し。
インフレはなお高止まり、欧州中央銀行(ECB)の引き締め圧力は続くものの、物価高が鎮静化に向かえば消費を押し上げるとみられ域内経済は好転しつつあります。
ただ、EU加盟各国の政治情勢は安定的とは言えないようです。
イタリアで昨年9月に発足した右派連合のメローニ連立政権は2月の地方選で右派勢力が圧勝したものの、連立内の結束が乱れれば現時点で封印している反EU路線に傾斜するリスクを抱えています。
また、5月21日のギリシャ総選挙でミツォタキス首相率いる中道右派、新民主主義党(ND)の過半数獲得は困難とみられ、警戒感が広がっています。
そして5月28日のスペイン地方選は今年12月の議会選の前哨戦として注目されます。
再選を目指すサンチェス首相はこのところ支持率が低迷し、中道左派の与党、社会労働党は地方選で劣勢に立たされています。
代わって目を引くのが2015年に旗揚げした右派ポピュリズム政党VOX。
反移民や反EUを掲げて党勢を強め、2019年には国政で第3党に躍進しました。
中道右派の最大野党、国民党(PP)に迫る勢いです。
スペイン北部カスティーリャ・イ・レオン州で昨年3月に行われた議会選でPPは第1党に返り咲いたものの、過半数を確保できませんでした。
そこでPPはVOXとの協議により連立政権を発足させています。
VOXにとっては初の政権入りで、来る総選挙でも同様の展開になるとの見方が広がっています。
戦後一貫して左派寄りだったスペインでその流れが変わるなら、先行きに不透明感が増すことになるでしょう。
スペインの国内総生産(GDP)はEU加盟国中第4位で、寄与度は10%程度にとどまります。
ただ、国際通貨基金(IMF)は低成長のEU内で今年+1.1%、来年+2.4%と、ドイツやフランス、イタリアを上回る高い伸びを見込んでいます。
域内のインフレは沈静化に向かっているとはいえ、格差が広がれば政治への不満が高まりやすくなるのはどこの国も同じ。
選挙結果を受けた対ドイツ国債利回りの格差が注視されます。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。