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「リーマン・ショック前と同様の状況」はあながち間違いではない

発行済 2016-05-30 07:57
更新済 2016-05-30 08:00
「リーマン・ショック前と同様の状況」はあながち間違いではない
安倍首相が消費増税の先送りの意向を党幹部に示したようである。
安倍首相は従前からリーマン・ショックや東日本大震災のような事態が発生しない限り予定どおり消費増税を実行すると述べていたが、先日の伊勢志摩サミットで現在の世界経済の情勢についてリーマン・ショック前と同様の情勢にあるという見方を示し、消費増税の延期の地ならしをしたのではないかと見られていた。
 安倍首相の世界経済の現状認識については、サミット各国の首脳から「現在の情勢はリーマン・ショック時とは違う」という意見が出た他、国内でもリーマン・ショックを持ちだしたのは消費増税延期の口実ではないかという声が多く聞かれる。
 確かに、現時点ではリーマン・ショック時のような激烈な経済の落ち込みの最中というわけではない。
特に、世界最大の経済大国である米国は思ったより経済指標が底堅く、数ヶ月内に2回目の利上げが行われそうである。
 しかし、新興国なかでも世界第二位の経済規模となった中国の情勢は非常に危うい(ところで世界第二位となった中国を今後も新興国と呼ぶのだろうか)。
昨年夏、今年初めと2回のチャイナショックを経たが、中国の過剰設備・供給問題、債務過剰の問題は未だ解決していない。
回復の兆しも見えつつあったが、足元の経済指標は再び弱含んでいる。
にもかかわらず、都市部の不動産価格は先般の不動産バブルを超えるような急上昇を見せている。
中国経済がさらに変調をきたしバブルが破裂すれば、そのショックはリーマン・ショック級となる可能性は十分ある。
 従って、安倍首相の「リーマン・ショック前」と同じような情勢という認識はあながち間違いとはいえない。
 もし、中国のバブル破裂と消費増税が重なったら、日本は増税したのに逆に税収が減少するという無意味な事態になるだけでなく、まさにリーマン・ショック級の事態となろう。
 中国は数十兆円にものぼる交通インフラ投資や構造改革でソフトランディングを目指しているが、ソフトランディングが確実になるまで情勢を見極めるのは賢明といえる。
 リーマン・ショック前には引き金となったサブプライムローンは規模が小さく、全体に影響は及ばないだろうという楽観的な見方が大勢だった。
しかし、その後の展開はご存知の通りである。
 今回も米国が堅調だから大丈夫だろうではなく、新興国・中国発の危機に備えておく必要がある。
楽観的な情勢判断をするより、悲観的に見てちょうどいいくらいと思われる。

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