英国が欧州連合(EU)から離脱するのではないかという懸念を受けて、先週の一週間は世界の金融市場はリスクオフムードが広がった。
そのなかで、世界で最も過剰な反応をしたのが日本市場だ。
日経平均株価は先週一週間で6.0%も下がり、マザーズ指数は18.4%も下落した。
為替ではドル・円が一時103円台までつける円の急騰がみられた。
問題となっている当の英国の株式市場は1.5%しか下落しておらず(FT100指数)、米国やドイツなどの代表的な株式指数も1−2%しか下落していない。
リスクオフがダイレクトに響く新興国市場でも概ね-2%程度である。
各国の金融市場は日本よりかなり冷静である。
日本の報道のなかには、英国がEUを離脱することによってリーマン・ショック級のショックや、この世の終わりでも来るかのような過激なトーンのものも見受けられたが、その影響もあるのだろうか。
しかし、仮に英国のEU離脱が決まったからといっても、国民投票の翌日からなにかがすぐに変わるわけではない。
英国がデフォルトするわけでも巨大金融機関が倒産するわけでもない。
国民投票で離脱派が勝ったとしても、英国がEUに離脱を「通告」し、その後離脱自体に最低2年(加盟国の同意によってはそれ以上延長)、英国と欧州各国の2国間交渉で5年程度はかかるとみられており、その後の枠組み構築には最低7年程度はかかるのである。
離脱派は上記の「通告」をすぐに行わず、まずEUと非公式の交渉を行う意向で、「通告」自体もが先延ばしになる可能性すらある。
英国経済が長い年月をかけて弱体化して行く可能性はかなり高いと思われるが、英国がEU離脱を決めたからといって、世界経済にただちに深刻なダメージを与えることはないのである。
欧州全体の経済状況も最悪期を脱し、やや上向いているように見受けられる。
現在のリスクオフムードは多分に心理的な面が大きいといえよう。
さらに、相変わらずよく分からないのが、日本円がクロス円ではまだしも、米ドルに対しても安全資産として過激に買われていることである。
(日米の金融政策が据え置きになったことを差し引いても)。
直近で日本国債は消費増税を見送ったことにより、大手格付け会社から見通しを引き下げられ、「A格」から転げ落ちる寸前となったにもかかわらず、である。
経済成長率、国債の「AAA」、財政健全化で日本より明らかに優位な米国の通貨より、日本円の方が「比較的安全な通貨」として買われるという説明はやはり腑に落ちない。
日経平均株価はドル円の影響が大きいため下げが増幅されたといえよう。
ただ、マザーズ指数は為替や海外・英国に最も無関係な市場であり、18%超も暴落するのは解せない。
最近上昇していたところにリスクオフが直撃したといえばそれまでだが、やはり心理的な面が大きいことの証左でもあるだろう。
センセーショナルな事件も重なり大騒ぎとなっているが、過剰な報道や見通しに惑わされず、冷静に事態を見極めて対処すべきだ。