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焦点:「暑すぎて働けない」、猛暑で変わる欧米の労働基準

発行済 2022-10-15 07:57
更新済 2022-10-15 08:09
© Reuters.  この夏の欧州は例年より高温かつ長期にわたる熱波に襲われ、数々の記録が塗り替えられた。気候変動に伴い熱波襲来の頻度は上がり、猛暑による事故、病気、死亡のリスクが増大してい

[ブリュッセル/ワシントン 7日 トムソン・ロイター財団] - この24年間というものイスマエル・ガルシアさん(42)は、焼けつくような日射しのもとで、スペインの首都マドリードの街路の清掃に携わってきた。だが、今年の夏は何かが違った。家族は、マドリードでの作業に出かけるガルシアさんをいつも気遣っていた。

トムソン・ロイター財団の取材に応じたガルシアさんは「誰もが『気をつけて、無理しないで』と言っていた。夕食のときはいつもその話題だ」と語る。

家族の懸念は正しかった。7月、マドリードで働く別の清掃作業員が熱中症で倒れ、その後亡くなった。60歳だった。これを機に、記録的な熱波のもとで労働者を保護する新たな対策が進められた。

この夏の欧州は例年より高温かつ長期にわたる熱波に襲われ、数々の記録が塗り替えられた。気候変動に伴い熱波襲来の頻度は上がり、猛暑による事故、病気、死亡のリスクが増大している。

欧州労働組合連盟(ETUC)が各国メディアの報道に基づいてまとめたところでは、今年、猛暑を原因とする就業中の死亡が、スペインでは9件、フランスでは6件生じている。

英国は7日、この夏、65歳以上の年代で2800人以上の超過死亡が見られたと発表した。熱波の襲来時に人々の健康を守る計画の策定が始まった2004年以降で最多となる。

米国では史上3番目に暑い夏となり、猛暑を職業上の危険として認識させるための取り組みが始まっている。

ETUCのイグナシオ・ドレステ上級顧問は「労働者の生命を救うために寸暇を惜しんで取り組むべき状況だ」と語る。

<悲しみの夏>

記事冒頭のガルシアさんのような清掃作業員は何年も前から猛暑の危険について警告してきたが、給水や休憩の確保は拒否されたという。

「これまでの夏は、暑さが厳しいのは1週間か15日くらいだったかもしれない。だが今年は逆だった。多少しのぎやすい日が15日あっただけで、残りはずっと猛暑だ」とガルシアさん。

7月の清掃作業員の死亡事故があって初めて、マドリードは猛暑のピーク時を避けて作業することに同意し、90分に1回の給水休憩を許可した。

「小さな1歩だが、多くの命が助かるだろう」とガルシアさんは語る。

熱中症、心臓疾患、慢性腎臓病、呼吸器疾患など、障害や死亡につながりかねない猛暑の悪影響に関する研究は進んでいる。

国際労働機関(ILO)によれば、多湿の状態で気温が35度以上になると「熱ストレス」が発生するという。

欧州の複数の労働組合は、こうした危険性が分かっているにもかかわらず、就業可能な気温上限や休憩の最低回数を定める法制度が地球温暖化に追いついていないと指摘する。

ETUCの調査では、ベルギー、ハンガリー、ラトビア、スロベニア、スペインでは複数の規制の組み合わせにより猛暑から労働者を保護しているが、他の欧州連合(EU)諸国では具体的な法制度はまったく存在していないことが分かった。

ベルギーは身体活動の度合いを基準とする方針を採り、就業可能な最高気温を軽作業の場合には29度、重労働の場合には18度と定めている。

スペインでは、オフィスの室温は27度以下に保たなければならず、軽作業の場合の最高気温は25度とされている。ただしこの規制は、あらゆる種類の労働者や全ての施設を対象にしているわけではない。

また、「軽作業」の定義には明確さや普遍性が欠けている。

ETUCは、猛暑のなかでEUの全労働者の安全を保障するような法的拘束力のある規制を求めているが、EUでこうした包括的な規制を導入するには、議論に5年、施行までにさらに2年を要することも珍しくない。

その一方で、ETUCは欧州委員会と協力して、猛暑下における安全な労働慣行のガイドラインを定める勧告を作成している。

ETUCのクラエス・ミカエル・スタール副事務局長は「さらに1年、猛暑の夏が来るのを甘んじて待つことはできない」と語る。

<先行する米国>

米国でも、猛暑を職業上の危険と認定するよう労働者たちが声を上げている。動きが顕著になったのは、記録的な高温のために道路が陥没し送電線が溶けてしまうほどの猛暑に襲われた2021年以降だ。

ベイシル・ダーリンさんは、ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)の配送ドライバー。荷物だけでなくニューヨーク一帯での気温上昇で体調を崩した同僚の1人を病院まで送り届ける羽目になったこともある。

「表情を見れば分かった。そう、生気が吸い取られていく感じだ。とにかく具合が悪そうだった」とダーリンさんは語る。

その同僚は40代で、既往症のために暑さに弱く、結局、最短でも1週間は欠勤することになった。

ダーリンさんは、気温が上昇したときのUPSの配送トラックを「移動式オーブン」に例える一方で、労働者の不安の声を経営陣に届けるのは難しいかもしれないと話す。

「『救急車に乗った』とでも言わないと、経営陣は真剣に考えない」

労働者たちは、広範な契約交渉の一環として猛暑対策を要求している。

UPSは一部の企業と異なり、全ての配送トラックにエアコンを搭載しているわけではない。同社は、車内のレイアウトを考えれば、エアコンを搭載してもドライバーを暑さから守るには非効率になると説明している。

UPSの広報担当、マシュー・オコナー氏は声明で、従業員の健康と安全は「当社の最優先事項」であるとし、暑熱に強いユニホームや冷却タオルの提供、一部車両への扇風機設置など、さまざまな取り組みを挙げた。

連邦政府は昨年、極端な暑さの中で労働者が就業を強いられないよう、史上初めて、暑さに関する全国レベルの基準の策定に乗り出した。

統一農場労働者組合で戦略的キャンペーンディレクターを務めるエリザベス・ストレーター氏は、「検討中の連邦レベルでの暑さに関する基準がいずれ実現すればありがたい。我々は何十年もそれを求めてきたのだから」と語る。

とはいえ、連邦レベルでのルール策定には何年もかかる場合があるため、州レベルでの規制を推進することが重要だとストレーター氏は強調し、「その方が早い」と言う。

UPSドライバーのダーリンさんは、次に猛暑の夏が来る前に法案を策定するには、連邦議員に圧力を掛ける必要があるのではないかと話す。

「そうした法律や規制を確立しなければ、多くの人々は屋外での仕事というだけで嫌がるようになるのではないか」とダーリンさん。「猛暑という条件が私たちに影響を与えているのだし、気候変動が消えてなくなる様子は見られない」

(Joanna Gill記者、David Sherfinski記者、翻訳:エァクレーレン)

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酷暑下における労働基準についてあれこれ言う前に、生活習慣・飲酒・睡眠時間の見直しをすることが大事ではないのか?むしろ、無人化・自動運転化・遠隔監視制御化を進め、人の介在を極力排除すべきでそれに沿った社会構造・街づくりを行うべきでは?
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