[キーウ(キエフ)/ロンドン/ワシントン 19日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領は19日、併合宣言をしたウクライナ東部・南部4州に「戒厳令」を導入すると明らかにした。
テレビ放映された安全保障会議で大統領は、これらの地域での戦力強化に向けミシュスティン首相の下に特別調整評議会を設置するよう政府に指示した。
大統領府は、2014年に併合したクリミアを含むウクライナへの隣接8地域で「経済動員」を発令、これらの地域からの移動を制限するとした。
プーチン大統領は今回指示した措置によって「特別軍事作戦」支援に向け、経済、産業、生産の安定性が高まると指摘。専門の治安機関だけでなく「全体の国家行政システム」を整備する必要があるとした。
また、ロシアの80を超える全地域の指導者に対し、重要施設の保護、治安の維持、戦力支援に向けた増産などの権限を追加で付与した。
ただ、新たな措置によってロシアの軍事的立場が強化される効果やそのスピード、また世論に与える影響などは不明。
国内メディアによると、ロシアが任命したウクライナのヘルソン州責任者、ウラジミール・サルド氏は権力を軍に委譲すると確認。ただ、モスクワのソビャーニン市長のほか、多くの地方責任者は直ちに何も変更しないとしている。
ウクライナ大統領府のポドリャク顧問は、プーチン氏の動きについて「ウクライナの資産の略奪を疑似的に合法化するもの」と非難。「ウクライナにとって何も変わらない。引き続き領土の奪還を進める」とツイッターに投稿した。
米国務省のパテル副報道官は定例記者会見で「ロシアがウクライナ4州で支配権を行使しようと必死の戦術に訴えていることは、驚くべきことではない」と述べた。
<プーチン氏、対応に苦慮との見方>
ロシア専門家のマーク・ガレオッティ氏は「ロシア全土に及ぶ多様な戒厳令の宣言」に相当するとし、一定の緊急規制がロシア全土に適用されると指摘。ただ、地方の責任者が中央政府が望むように動くかは分からないと述べた。
カーネギー国際平和財団のロシア専門家、ポール・ストロンスキー氏は、プーチン氏は地方首長に戦争態勢に入るよう命令することでより大きな責任を負わせようとしているが、実際に何をするべきか明確にしていないと指摘。「プーチン氏の計画はうまくいっておらず、戦争をどのように継続していくか、いまだにビジョンを修正できていない」とし、プーチン氏の命令は効果的な侵攻計画の実施にロシア政府が苦慮していることを示しているとの見方を示した。
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