〇10月まで膠着状態の公算、危機感で米状況改善〇
6日、米中首脳会談が行われ、習近平中国国家主席が「平和的対話」を求め、トランプ大統領は軍事行動が「第一の選択肢でない」と述べた。
国連安保理での米国の制裁強化案が明らかとなり、全面的な石油禁輸と並んで、金正恩委員長の海外資産凍結・渡航禁止、原則として北朝鮮労働者雇用や合弁事業の禁止が骨子と伝えられた。
11日の採決まで、激しい攻防となろう。
北朝鮮が暴発してしまえばそれまでだが、当面は「対話」を軸に展開するものと思われる。
一応の目安は、10月18日の中国共産党大会。
習近平主導体制が確立しないと、中国は従来の姿勢を変えないと見られ、最も重要な「ポスト金正恩」体制の行方が見えてこない。
なお、中国内の権力闘争の焦点は、腐敗追及の先頭に立つ王岐山氏の動向。
5日、湖南省に突然3日間姿を現し、地元幹部と握手し、講話する姿が伝えられた。
定年制(69歳)で引退か、首相就任か(李克強の失脚を意味する)、特別ポスト就任か、様々な憶測が飛び交っている。
北朝鮮との「対話」で、意外な注目点はイラン。
7日から北朝鮮代表団がテヘラン入りする(元駐イラン大使が団長)。
イランは核・ミサイルの商売相手と見られ、「水爆」を手にするようだと、イスラエルやサウジが危機感を高め、それを受けて米国も一気に軍事オプションに傾く可能性がある。
その直前にイランに乗り込み、対北圧力への協力要請を行ったのが高村自民党副総裁。
独自のパイプを持ち、イランを訪問できる数少ない要人の一人。
ロウハニ大統領、ザリーフ外相と会談を行った。
高村折衝が奏功するか、北朝鮮の孤立度・焦りを見極めることになろう。
対北危機感も後押ししたと見られるが、米国債務上限問題が遠のいた。
表面上は大型ハリケーン「ハービー」被災への対処(80億ドル規模)承認と絡んで、「12月中旬」までの短期債務引き上げ案で米民主党と合意した。
また、最新のFRB経済報告が発表され、「米景気の緩やかな拡大」の見方を持続した。
今月のFOMCで資産規模縮小に動くとの見方が戻って来た。
この日はカナダ中銀が予想外の利上げ(25bp引き上げ政策金利1.0%)で、ドルがカナダドルに対し最大1.9%下落したため、全体としてはドルは横ばいだったが、一応、ドル安に歯止めを掛ける材料が相次いだ格好。
米10年債利回りは、一時2.054%に低下した後、急上昇し2.1064%。
前日、2.7%割れにあった30年債利回りは2.7239%。
債務上限問題が遠のいたことでリスク回避が薄らいだ。
なお、フィッシャーFRB副議長が10月中旬をもって退任すると表明し、CNNはFRB議長候補からコーンNEC委員長は消えたと報じ、FRB人事が揺れたが、金融政策に影響はないと報じられた。
非常に大雑把なイメージでは、金利駆け引きによるドル攻防から、中国が対北交渉で主導権を握ると、中国の出方(例えば、人民元安定のため原油取引を人民元建てに切り替えるなど)で、ドル相場が左右される方向に向かう可能性があると見る。
北朝鮮問題は、対話路線で進んだとしても、そう言った「分岐点」となる公算がある。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/9/7号)