【先週の概況】■米中貿易協議継続の思惑でリスク回避のドル売り縮小先週のドル・円はやや強含み。
米国家経済会議(NEC)のクドロー委員長が米中交渉の合意まで「距離がある」との見方を示したことから、米中貿易協議の進展に対する市場の期待は一時後退した。
協議期限延長の思惑が浮上したことや、2月下旬に行われる二度目の米朝会談への期待が広がったことから、リスク回避のドル売りはやや縮小した。
5日に発表された1月ISM非製造業景況指数は市場予想を下回ったものの、6日発表された11月米貿易収支で貿易赤字幅の縮小が確認されたことから、米国経済の持続的な成長に対する期待が広がった。
8日のニューヨーク外為市場でドル・円は、109円88銭から一時109円67銭まで下落。
世界経済の成長減速や米中貿易協議の先行きは不透明との見方が広がり、ドル売りがやや優勢となったが、3月1日に予定されている米中貿易協議の期限は延期される可能性があると報じられたことから、リスク回避のドル売りは縮小。
ドル・円は109円77銭でこの週の取引を終えた。
ドル・円の取引レンジ:109円43銭−110円16銭。
【今週の見通し】■欧州通貨売り継続を意識してドル・円は下げ渋りか今週のドル・円は下げ渋りか。
米連邦準備制度理事会(FRB)が1月29-30日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)でややハト派寄りの見解を示し、利上げ停止観測が浮上した。
しかしながら、欧州経済の減速や英国の合意なき欧州連合(EU)離脱への警戒感も高まっており、安全逃避目的のドル買い・欧州通貨売りはしばらく継続する可能性がある。
1月の米雇用統計で失業率は上昇し、雇用情勢のさらなる改善は期待できないとの見方が広がったことや、製造業の景況感がやや悪化していることから、今週発表される1月消費者物価指数や12月小売売上高などの主要指標が予想を下回った場合、市場は米利上げ休止をより強く意識してドル売りが再び強まる可能性がある。
ただ、欧州経済(ユーロ圏経済)の減速を警戒してユーロ売り・ドル買いは継続する可能性があることは無視できない。
ドイツやユーロ圏の経済指標内容が悪化した場合、ユーロ売り・米ドル買いが強まる見通し。
また、14日に英国議会で政府のEU離脱に関する修正案の採決が予定されているが、否決された場合、合意なきEU離脱の可能性が高まるため、ポンド売り・米ドル買いが強まりそうだ。
欧州通貨に対してドルが強い動きを見せた場合、ドル・円の取引でもドルが消去法的に買われる可能性があり、ドルは全般的に底堅い値動きとなりそうだ。
壁建設をめぐるトランプ政権の議会運営が度々批判されており、与野党協議が難航して再び政府機関が閉鎖されるリスクは除去されていないが、政府機関の再閉鎖を警戒したリスク回避的なドル売りがただちに拡大する可能性は低いとみられる。
【米・1月消費者物価指数(CPI)】(13日発表予定)13日発表の1月消費者物価指数(CPI)は、前年比+1.5%、コア指数は同比+2.1%と予想されている。
コアCPIが市場予想を下回った場合、米国経済の成長鈍化を意識して利上げ休止観測は一段と広がり、ドル売りを誘発しそうだ。
【米・12月小売売上高】(14日発表予定)政府機関閉鎖の影響で発表が遅れていた12月小売売上高は、前月比+0.1%と予想されている。
伸び率は11月実績をやや下回る可能性があるが、小幅な増加でもドルにとっては好材料になるとの見方が多い。
予想レンジ:108円50銭−111円00銭