[東京 15日 ロイター] - 日経平均株価が約30年半ぶりに3万円の大台を回復した。岡三オンライン証券のチーフストラテジスト、伊藤嘉洋氏は、3万円という水準について、かつてのバブル崩壊時の下げ局面とは逆方向の大台突破であり、上値追いの期待ができるとの見方を示す。現在の株高の背景には新型コロナウイルス感染拡大の終息と景気回復への期待感があり、今後は企業業績の回復が焦点になると指摘する。
伊藤氏は、1962年に岡三証券に入社。株式部市場課で株式売買を主とする、いわゆる「場立ち」から始め、相場見通しや注目銘柄を解説してきた。岡三投資顧問常務取締役、岡三アセットマネジメント上席ストラテジストを歴任し、2010年から現職。
──30年前との違いは何か。
「30年前は、バブル崩壊局面で『下げ過程の3万円』だったが、今回は逆。新型コロナの感染者が減少傾向にあり、景気回復期待も高まっており、世界的な株高となっている。日経平均は今後さらに上昇する可能性もあるのが前回との違いだ。足元では相場の過熱感はみられず、上値追いへの期待もある」
「かつてのバブルとの違いは手元の資金で相場が上がっているという点だ。当時は企業や個人が、借金をしてでも株や不動産に投資したことから様々な資産価格が上昇したが、今はそうではない。そこが大きな違いだろう」
──個人投資家の動きはどうか。
「きょうの市場の動きもそうだが、出遅れ銘柄であった銀行業や証券業が値上がり率上位に入っており、個人投資家の姿勢が前向きになっていることがうかがえる。投資家心理は改善しており、上値追いへの期待が高まりやすい状況だ」
──今の日本株をどう評価するか。
「今の日本の株高は、先行きへの期待感によるものだ。新型コロナウイルスの感染者が減少傾向にあり、国内でもワクチン接種が始まる見込みとなっている。経済正常化への期待が先行しているが、今後は企業業績の回復がしっかり確認できるかどうかが焦点になるのではないか」
──今の株式市場の特徴は。
「日経平均は1990年から暴落したが、今は『いつか来た道』を逆にたどっている状況だ。過去に経験した水準なので手探りではなく、投資家の不安も多くはない。ただ、今後は企業業績との兼ね合いで、数字でしっかり景気回復を確認できるかどうかが、上値を追うポイントとなりそうだ」
――株式市場にとって今後のリスクは何か。
「以前のように借金までして株を買ったり、PER(株価収益率)が全体的に40─50倍まで上がってきたりしたら警戒しなければならない。また、以前は指数銘柄だけで日経平均が1万円も上がったこともあった。そうした指数寄与度の高い銘柄群の異様な急騰にも注意が必要だろう」
(聞き手:浜田寛子)