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マーチャント・バンカーズはNFTやバイオに積極展開、23年3月期売上高予想を上方修正

発行済 2022-12-23 09:48
更新済 2022-12-23 10:05
© Reuters.  マーチャント・バンカーズはNFTやバイオに積極展開、23年3月期売上高予想を上方修正

 マーチャント・バンカーズ<3121>(東証スタンダード)はマーチャント・バンキング事業として不動産・企業投資関連などを展開し、成長ドライバーとしてNFT(非代替可能性トークン)などのブロックチェーン関連事業や医療・健康などのバイオテック関連事業に積極展開している。23年3月期通期連結業績予想については12月19日に売上高予想を上方修正した。利益予想(大幅増益予想)は据え置いたが、精査のうえ修正が必要な場合は速やかに公表するとしている。マーチャント・バンキング事業の成長が牽引し、NFT関連やバイオ関連など新規領域への積極的な事業展開も寄与して中期的に収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化の影響で水準を切り下げる展開となったが、調整一巡して出直りを期待したい。

■マーチャント・バンキング事業とオペレーション事業を展開

 マーチャント・バンキング事業(不動産投資事業、企業投資事業、ブロックチェーン・テック事業)、およびオペレーション事業(宿泊施設・ボウリング場・インターネットカフェ店舗・服飾雑貨店の運営、病院食業務受託)を展開している。22年3月期のセグメント利益(全社費用等調整前営業利益)はマーチャント・バンキング事業が5億94百万円、オペレーション事業が▲61百万円、そして調整額が▲1億98百万円だった。マーチャント・バンキング事業は収益不動産からの賃料収入が安定収益源となっている。オペレーション事業はコロナ禍の影響を受けているが、22年3月期は赤字縮小した。

■不動産・企業投資関連

 マーチャント・バンキング事業では不動産投資関連および企業投資関連を展開している。

 不動産投資関連は、ネット利回り5%以上を期待できる大都市圏の賃貸用マンションなどの優良物件を保有し、年間約7億円の賃料収入を安定的に確保している。22年3月期は3物件を売却し、22年3月期末時点で全国に22棟の不動産賃貸ビルを保有している。さらに年間賃料収入10億円を目標に掲げて大都市部の居住用不動産取得を強化している。

 22年4月には不動産投資のさらなる収益性向上に向けて新築マンション開発事業に取り組むと発表した。第1号案件として大阪府堺市の200坪のマンション開発用地を取得してマンションを建設し、安定的で収益性の高い賃料収入を確保する。22年5月には不動産事業の強化に向けて田中土建工業と業務提携した。22年12月には札幌市西区の賃貸マンション「K-MODE琴似」を取得した。

 また、賃貸用不動産の取得・入替によって収益基盤強化を進めるとともに、不動産特定共同事業法にかかる許可を取得して多様な資金調達手段の確保にも取り組む方針だ。21年10月には不動産ファンド組成・運営に取り組むととともに、案件ごとに共同事業者とSPC(特別目的会社)を組成する取り組みを開始すると発表した。第三者の資金を活用して規模の大きい案件も積極的に手掛ける方針としている。また金融機関と連携して不動産バイアウト&リース事業を開始すると発表した。

 22年1月には在日中国人向け不動産事業(販売・賃貸仲介サービス)を開始すると発表した。22年7月には分譲マンションをリノベーションして販売する事業への取り組み開始を発表した。

 企業投資関連は、投資先とともに企業価値を創造するハンズオン型の投資を行い、バリューアップによるエグジットを目指す。投資実績としては、ブロックチェーンプラットフォーム開発のアーリーワークス、デジタルマーケティング支援のポイントスリー、ブライダル・ホテル運営のホロニック、見守り型介護ロボット開発のIVホールディングスなどがある。

 22年2月には、セナードと業務提携して販売しているコンプライアンスチェックシステム「minuku(ミヌク)」を大幅バージョンアップし、ロボット検索機能を搭載して販売開始すると発表した。さらに、中小型の上場株式を対象とする投資事業を強化すると発表した。第1号案件としてZOA<3375>の株式10万株(議決権総数に対する割合6.88%)を取得した。

■成長ドライバーとしてNFT関連やバイオ関連を強化

 成長ドライバーとして、STO(Security Token Offering)を活用した金融サービス、不動産流動化、資金調達、NFT(Non―Fungible Token=非代替性トークン)などのブロックチェーン関連、および医療・健康などのバイオテック関連ビジネスに積極展開している。

 ブロックチェーン関連では、20年2月にサービス開始したエストニア暗号資産交換所ANGOO FinTech関連、海外投資家向けを中心とする日本不動産プラットフォームの不動産テック関連、医療エコシステムのメディテックプラットフォーム関連、NFTプラットフォーム関連の強化を推進している。

 20年10月にはバルティック・フィンテック・ホールディングス(BFH社)にANGOO FinTech運営を移管し、エストニアでの事業統括会社と位置付けた。

 21年3月には子会社MBKブロックチェーンが、ブロックチェーン不動産取引プラットフォーム「MBK Realty」をリリースした。また香港の子会社MBK ASIA LIMITEDにおいてトークン「MBK COIN」を発行するとともに、海外投資家専用不動産取引プラットフォームを構築した。21年4月にはMBKブロックチェーンが、お宝グッズのNFT化・売買プラットフォーム「NFTバンカーズ」運営を開始した。21年5月には暗号資産ハッキングに対するセキュリティ技術を手掛けるStudioMakyuと業務提携した。

 21年8月にはエストニアの子会社EJTC社と連携し、エストニアの企業に対して、日本企業を対象とした投資やM&Aに関するアドバイザリーを開始した。第1号案件として、遠隔医療システム開発のVIVEO Health社の日本市場進出ための日本企業との資本提携に取り組む。また第2号案件として、医療関連アプリ開発のCognuse社の日本企業への投資に取り組む。

 21年9月には不動産バイアウト&リースの開始を発表した。幅広い物件を対象に金融機関と協力し、取得する物件は安全で比較的小さいロットの投資案件として不動産テックを通じて紹介していく。また不動産NFTに本格的に取り組むため、NFTプラットフォーム開発の世界と業務提携した。第1号案件として山中湖山荘をNFT化する。

 21年11月には、エストニアの子会社EJTC社がNasdaq Baltic上場会社(21年3月上場)としての信用力を活かして日本の金融機関の協力体制を確保したため、不動産事業として日本国内のマンション取得を進めると発表した。第1号案件として21年10月に兵庫県神戸市内のマンションを購入した。さらに21年12月にはEJTC社がエストニアの不動産ファンドと提携し、エストニアでの不動産事業を本格的に展開すると発表した。

 21年11月には、MBKブロックチェーンが「NFTバンカーズ」をリニューアルオープンした。世界的に人気のあるジャパニーズキャラクターを取り揃えるなどコンテンツを強化して、世界マーケットに向けた展開を本格化させる。子会社ケンテンが運営するショッピングサイト「KENTEN×lafan」内のNFTコーナーも「NFT LaFan」としてリニューアルオープンした。

 なお22年4月に子会社MBKブロックチェーンの商号をMBKバイオテックに変更した。エストニア暗号資産交換所ANGOO FinTech関連、NFTプラットフォーム関連などのブロックチェーン関連に加えて、医療・健康をテーマにしたバイオテック関連事業や投資にも積極的に取り組む方針だ。11月14日にはMBKバイオテックが新規事業として中堅企業向けwebサイト制作・保守管理請負事業を開始すると発表した。

 バイオテック関連事業では22年1月に、国立大学法人滋賀医科大学と産学連携プロジェクトとして糖尿病治療薬開発に取り組むために、事業推進主体となる創薬ベンチャーとして子会社バイオジップコードを設立した。22年4月にはバイオジップコードが、国立大学法人滋賀医科大学がPCT(特許協力条約)国際出願した発明について、特許が登録となった際に当該特許を受ける権利を国立大学法人滋賀医科大学から取得すると発表した。

 22年6月には子会社バイオジップコードが、糖尿病等の難治性疾患を完治する治療薬の研究・開発に取り組む一方で、再生医療・形成(美容)外科分野(幹細胞培養時に発生する培養上清液の販売、細胞培養受託、美容系医療機器の開発・販売など)に取り組むと発表した。さらに安定的収益基盤構築に向けて「バイオジップコード」ブランドによる健康食品販売事業にも取り組む。22年8月には第一弾として「バイオジップコード」ブランドの冬虫夏草の販売を開始した。22年9月にはバイオジップコードが医薬品・健康食品メーカー等向けに、糖尿病や再生医療に関するアドバイザリー業務(学術・技術指導など)への取り組みを開始した。

 22年10月には、子会社バイオジップコードの糖尿病完治治療薬開発の進捗状況として、滋賀医科大学との共同基礎研究をほぼ完了し、製薬会社との提携に向けてステップアップすると発表した。また新薬開発のパイプライン(7件)を策定した。また22年11月には、子会社バイオジップコードの糖尿病治療薬等の国際特許出願状況について、日本、米国、欧州、中国、オーストラリア、韓国への国内段階移行手続が完了し、審査が開始したとリリースしている。

 12月6日には、子会社バイオジップコードが、研究リソースシェアリングプラットフォーム「Co-LABO MAKER」を運営する東北大学発ベンチャーのCo-LABO MAKERと業務提携したと発表している。再生医療や動物実験などの具体的な研究リソースを「Co-LABO MAKER」に公開し、バイオジップコードのアドバイザリー業務の対象先とのマッチングを図る方針としている。

 新分野に関しては22年8月に、娯楽TVが設立した円谷メディア・コンテンツの株式を譲り受けて子会社化し、商号を娯楽TVメディア・コンテンツに変更してキャラクターおよびコンテンツビジネスへの展開を開始した。22年8月には、01年公開のアニメ映画「シャム猫」について、娯楽TVメディア・コンテンツが100%窓口となってコンテンツ販売とマーチャンダイジングを展開すると発表した。

 22年8月には娯楽TVメディア・コンテンツが、映像制作会社のエス・フィールドの株式33.3%を取得して資本・業務提携した。なお22年9月には、娯楽TVメディア・コンテンツの株式をエストニアの子会社EJTC社に譲渡して、娯楽TVメディア・コンテンツを孫会社化した。グローバルにキャラクターやコンテンツを展開する。

 22年10月には娯楽TVメディア・コンテンツが公式キャラクター「マーチャントマン」のテーマソングを完成した。NFTマーケットプレイス「NFT LaFan」においてダウンロード販売する。

 またSDGsへの取り組みの一環として、22年1月に障がい者アーティストを発掘・育成・支援するパラリンアートに取り組む一般社団法人障がい者自立推進機構とオフシャルパートナー契約を締結し、「NFT LaFan」においてパラリンアート作品の販売を開始した。さらに22年4月にはパラリンアート作品のプレミアム販売を開始した。

■オペレーション事業は活性化を推進

 オペレーション事業は岐阜県土岐市の土岐ボウリング運営、愛媛大学医学部付属病院の病院食業務受託、東京都内2店舗のインターネットカフェ運営、子会社ケンテンの服飾雑貨店運営・ネット通販を展開している。ホテルオペレーション事業はコロナ禍の影響を受けたため撤退(自社物件のブルーポートホテル苅田北九州空港は自社オペレーションによって収益力を高めたうえで売却)した。

 連結子会社のケンテンは20年4月にラファンと協業してネット販売を強化し、メタバース空間にバーチャルショッピングサイト「KENTEN×LaFan」を出店している。

 持分法適用関連会社のアビスジャパンは、LED照明・節水装置の製造・販売・設置工事を主力として、空き家対策事業、電力小売事業、非接触式AI検温システムの販売も展開している。

■24年3月期営業利益10億円目標

 新中期経営計画「Develop the New Market」では、最終年度24年3月期の目標値(21年8月に売上高を上方修正)として、売上高30億円(マーチャント・バンキング事業の不動産関連15億円、海外投資・エストニア関連6億50百万円、ネット販売関連1億50百万円、オペレーション事業7億円)、営業利益10億円、経常利益9億円、当期純利益5億80百万円、EPS20円80銭、1株当たり配当金7円、配当性向33.7%を掲げている。

 不動産関連およびオペレーション事業で得られる安定収益をベースとして、企業投資関連、およびブロックチェーン関連・バイオテック関連(不動産テックプラットフォーム、NFTプラットフォーム、メディテックプラットフォームなど)の拡大に注力する方針だ。

■23年3月期通期売上高予想を上方修正、利益は大幅増益予想据え置き

 23年3月期連結業績予想(12月19日付で売上高を前回予想に対して8億円上方修正、各利益を据え置き)は、売上高が22年3月期比29.1%増の35億50百万円、営業利益が49.2%増の5億円、経常利益が64.4%増の3億60百万円、親会社株主帰属当期純利益が3.3倍の2億30百万円としている。配当予想は据え置いて22年3月期と同額の2円(期末一括)としている。

 第3四半期に販売用不動産3物件(千葉県成田市社宅、大阪市中央区マンション、ブルーポートホテル苅田北九州空港)の売却を実行し、合計15億97百万円を売上高に計上した。利益予想は据え置いたが、精査のうえ、修正が必要な場合は速やかに公表するとしている。

 なお第2四半期累計は売上高が前年同期比30.1%減の13億86百万円、営業利益が57.7%減の1億39百万円、経常利益が66.5%減の96百万円、親会社株主帰属四半期純利益が62.5%減の79百万円だった。前年同期の収益不動産売却益の反動、第2四半期に予定していた投資案件計上の期ズレなどで減益だった。この要因を除けば概ね順調だった。

 マーチャント・バンキング事業は売上高が35.6%減の10億69百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が49.3%減の2億41百万円だった。千葉県成田市の販売用不動産の売却に加えて、賃貸用不動産から得られる賃貸収入が安定的に推移したが、前年同期の国内および海外企業からの投資収益、収益不動産の一部売却の反動で減益だった。

 オペレーション事業は売上高が2.0%減の3億31百万円、利益が19百万円の赤字(前年同期は30百万円の赤字)だった。コロナ禍の影響で減収・赤字だが、行動制限の緩和によって各事業の業績は持ち直し傾向となっている。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が3億11百万円で営業利益が25百万円の赤字、第2四半期は売上高が10億75百万円で営業利益が1億64百万円の黒字だった。

 通期は事業環境として、コロナ禍の影響が和らいで下期以降に経済活動の回復を見込んでいる。そしてマーチャント・バンキング事業の成長が牽引し、オペレーション事業におけるホテルオペレーション撤退などの影響を吸収して大幅増益予想としている。マーチャント・バンキング事業の成長が牽引し、NFT関連やバイオ関連など新規領域への積極的な事業展開も寄与して中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は調整一巡

 22年8月10日発表の自己株式取得(上限26万株・65百万円、取得期間22年8月12日~22年12月30日)については、22年11月30日時点の累計取得株式総数が21万8200株となっている。

 株価は地合い悪化の影響で水準を切り下げる展開となったが、調整一巡して出直りを期待したい。12月22日の終値は270円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS7円80銭で算出)は約35倍、今期予想配当利回り(会社予想の2円で算出)は約0.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS139円96銭で算出)は約1.9倍、そして時価総額は約80億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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