Ankur Banerjee
[シンガポール 6日 ロイター] - 中国に代わる投資先を探している国際投資家が今、インドの株式市場に資金を投じている。昨年は見放した市場であり、割高感も消えないが、慎重に銘柄を選びながら戻っている状態だ。
投資家によるとインドの魅力は、中国から切り離されている一方で、中国と並ぶ強力なオフショア製造業拠点として台頭しており、健全な消費者ベースを抱えている点にある。インド市場は伝統的に選挙の年に好調で、4月には総選挙が控えている。
しかし人気の高い優良株のバリュエーションは非常に高いため、投資家は銀行や優良企業を避け、自動車やハイテクなどのセクターを選んで投資せざるを得ない。
ゼロコロナ政策解除後も低迷する中国市場と経済に幻滅した投資家を引き寄せているのは、インドだけではない。
だが外国人が今年インド株につぎ込んだ約165億ドルという金額は、少なくとも2008年以来最大で、韓国の80億ドルや台湾の50億ドルを大きく凌ぐ。
フランクリン・テンプルトン・エマージング・マーケット・エクイティのポートフォリオ・マネージメント・ディレクター、スクマール・ラジャ氏は、「インド市場は、同地域の他市場と比べて魅力的だと思う」と述べ、同国の魅力的な人口動態、市場志向の経済、中間層の興隆を指摘した。
<地元勢VS外国勢>
優良株の SENSEX指数とNifty50指数はともに今年8%上昇した。これに対し、MSCI新興市場株価指数は3%上昇、MSCI日本を除くアジア株指数は横ばいにとどまっている。
しかし、インドの両指数は過去最高値に迫っており、外国人投資家にとっては見極めが不可欠だ。
フェデレーテッド・ハーミーズのグローバル新興市場責任者、クンジャール・ガラ氏は、米国のハイテクセクター回復に賭ける「逆張り」としてインドのハイテク株をとらえているほか、自動車メーカーやノンバンク系金融企業も有望視している。
英国を拠点とするオーブリー・キャピタル・マネジメントのポートフォリオ・マネージャー、ロブ・ブリューイス氏は消費者関連企業に注目しており、同氏のファンドではバルン・ビバレッジズを保有銘柄のトップに挙げている。米ペプシのボトリング企業である同社の株は、昨年123%という驚異的な急上昇を遂げた後、今年は41%上昇している。
外国人投資家は2022年にインドから170億ドルを引き揚げた。
新型コロナウイルスのパンデミックが始まった20年3月の安値から150%上昇したインド市場を引っ張ってきたのは国内投資家だ。外国人投資家が戻ってきた今年、その国内投資家は市場から手を引いている。
データによると、国内の機関投資家がインド資本市場に投入した金額は、昨年の約360億ドルに対し、今年は130億ドル余りにとどまる。
昨年末から銀行預金金利が急上昇しているため、国内投資家は現在、伝統的で安全な貯蓄にひかれている。10年物国債指標銘柄の利回りは7%を超え、1年物の銀行預金金利は約7%だ。
ムンバイのUBSで新興市場およびインドのストラテジストを務めるスニル・ティルマライ氏は、「国内投資家にとって、株式は他の選択肢に比べて割高に見え始めている」と述べた。
<バリュエーションに警戒感>
外国人投資家は長い間、インド株のバリュエーションの高さを警戒してきた。SENSEX指数の株価収益率(PER)は現在22.6倍なのに対し、MSCIの日本を除くアジア太平洋株指数は12.6倍だ。
フェデレーテッド・ハーミーズのガラ氏は、同氏のファンドは年初来インド株のポジションを縮小して「中立」にしたと述べた。「インドを見限ったわけではない。ただ、われわれが買いたい良質な企業、成長志向の企業は、妥当なバリュエーションでは手に入らない」と説明する。
空売りで知られる投資会社ヒンデンブルグ・リサーチが1月、インド財閥アダニ・グループの不正を指摘したため、コーポレート・ガバナンスに対する懸念も一部の投資家を遠ざけている。