Summer Zhen
[香港 15日 ロイター] - ここ何カ月も中国株投資を避けてきた国際的な資産運用会社やヘッジファンドが、市場の地合い改善を示すかすかな兆しや、大幅な値下がりに伴う値ごろ感に着目し始めている。
外国からの資金流入状況を見る限り、彼らの中国株への投資姿勢はまだ決して本腰とは言えないが、以前と言い方が変わってきた。中国回帰の理由として挙げられるのは、米国株の不安化や、中国当局が突然のように経済対策を立て続けに打ち出していることだ。
フィデリティ・インターナショナルは、中国の「より緩和的な金融政策」に加え、最近になって政府が1兆元(1371億ドル)の国債増発で経済を支えると表明したことが、株式市場の追い風だと強調した。
同社のアジア太平洋株責任者マーティー・ドロプキン氏は「世界を見渡せば、リスク許容度の程度にもよるが、強弱材料が入り交じる構図がある。そこで今は、米国から中国に軸足を移す時期かもしれないと考えている」と述べた。
ロンドンに拠点を置くサマセット・キャピタル・マネジメントも中国に期待感を抱く。アジア戦略を担うポートフォリオマネジャー、マーク・ウィリアムズ氏は、緩和的な金融・財政政策が「われわれの保有銘柄全般にわたる業績の魅力的な改善」につながっていると説明した。
サマセット・キャピタルは、個人消費の高まりで恩恵を受けるスポーツウェアと電気自動車(EV)分野への投資を拡大しつつある。
中国に対する悲観ムードは、今月に入って底を打った。当局がこれまでよりも規模の大きな景気刺激策を発表し、低迷する不動産セクターのてこ入れ措置まで講じたからだ。
MSCI中国株指数は年初来で11%下落し、この間に15%と32%の値上がりを見せた米S&P総合500種やナスダック総合などに対してアンダーパフォームした。その中国株もまだ上向きに転じていないが、下げ止まっている。
モルガン・スタンレーの推計では、ロングオンリー型の外国投資家の中国株と香港株に対するアンダーウエートの度合いは、数年来で最も大きい。過去3カ月間の中国株の売越額は100億ドル弱で、2018年以降で最大だ。
この結果、中国株は割安化が進み、株価収益率(PER)は11%と、主要アジア株で一番低い。
ロンドンを拠点とするヘッジファンド助言会社サセックス・パートナーズのマネジングパートナー、パトリック・ガリ氏は、以前には「中国に資金配分したくない」と言っていた顧客たちが、現在は中国への逆張り投資や市場再参入のタイミングを検討していると明かした。
<資金フロー好転>
モルガン・スタンレーのデータからは、中国向け資金フローがやや好転したことも分かる。今月2-8日の株式相互接続制度経由の外国人による中国A株投資は9億2400万ドルの買い越しで、8月以降初めての純資金流入となった。
香港株式市場のハンセン指数は10月まで3カ月連続マイナスだったが、今月これまでは1.7%の上昇。ヘルスケアとハイテクがけん引しており、ハンセン・ハイテク指数は月初めから5.1%上がっている。
ボストンに拠点を置く投資会社ケンブリッジ・アソシエーツは、中東の一部投資家が中国株の割安さに魅力を感じ、投資に動いていると述べた。
香港のヘッジファンド、トリアタ・キャピタルは、中国のインターネットと電子商取引の大手企業のリスクリワードに妙味があると想定し、過剰な悲観論がバリュエーションをゆがめていると分析。ショーン・ホー最高投資責任者は「投資家は(人工知能=AI関連)ソフトウエアやインターネット(銘柄)の中期的に大きな上昇余地を過小評価している」と主張した。
サンフランシスコの資産運用会社マシューズ・アジアのポートフォリオマネジャー、ビベク・タネル氏は、中国の消費者信頼感改善や米中の緊張緩和による市場心理の持ち直しを見込んで、中国株のオーバーウエートを維持していると話す。選び抜いた工業株や旅行サービス、医療サービスの銘柄を積み増しているという。