Alexandra Alper
[ワシントン 13日 ロイター] - 中国の半導体受託生産最大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)が出資する中国の半導体設計企業が、米国による輸出制限措置をかいくぐって米国製ソフトウエアを購入し、米国から資金も調達していることが、ロイターの調査で分かった。米国が中国の半導体産業を支えるのを阻止するための制限措置に、実効性を持たせる難しさが鮮明になった。
この半導体設計企業はブライト・セミコンダクター。ロイターが企業の発表文書や規制当局への申請書類、学術記事などを検証したところ、同社は少なくとも6つの中国軍事サプライヤー企業に半導体の設計サービスを提供している。
ブライトの株式19%を保有する2番目の大株主であり、最大のサプライヤーでもあるSMICは、中国軍との結びつきが疑われるとして米政権の「エンティティーリスト」に掲載され、一部製品について米企業からの購入を実質的に禁じられている。
そうした実態にもかかわらず、ブライトは米大手銀ウェルズ・ファーゴとキリスト教系大学が支援する米ベンチャーキャピタルから資金を調達している上、米ソフトウエア企業のシノプシスおよびケイデンス・デザインの2社から、センシティブな米国技術を入手し続けていることが、各種文書から分かった。
ロイターは、ブライトと米企業との関係が何らかの規制に違反している証拠は確認していない。
バイデン政権は超党派の支持を得て、中国半導体産業への技術と投資を止めることに腐心してきた。昨年10月には、米国製半導体および半導体製造装置の対中輸出を一部停止する規則を発表。今年8月には同業界への米国の新規投資の一部禁止を発表した。また、主に中国軍との関係を理由に、数十社の中国企業をエンティティーリストに加えた。
ブライトはコメント要請に応じなかった。米商務省とホワイトハウスはコメントを控えた。在米中国大使館はブライトについてコメントしなかった。
ブライトによる米技術へのアクセスは、米国の制裁の課題を浮き彫りにしている。より多くの企業を制裁対象に加え、レーダーをかいくぐるのを防がなければ、中国軍への技術や資金の流出を阻止するのは難しそうだ。
対中タカ派として強い影響力を持つ共和党のマルコ・ルビオ上院議員は、ブライトに関するロイターの調査結果を見て「懸念」を表明。「中国の軍事サプライチェーンに関わる企業を、米国の技術や投資にアクセスさせるべきではない。輸出規制と投資制限に対するバイデン政権の行き当たりばったりのアプローチは、明らかに機能していない」と述べた。
ブライトの事例は、中国が知名度の低い企業を使って大手企業に対する米国の輸出禁止措置をすり抜けられることを示している、との指摘もある。
中国国防省とSMICは、ブライトとの関係についての質問に答えなかった。
ブライトは2008年に米ベンチャーキャピタルと中国企業の合弁会社として発足し、長年にわたりSMICと結びついてきた。
SMICは昨年までブライトの筆頭株主だった。ブライトのウェブサイトによると、この関係により同社は「中国ナンバーワンの半導体受託生産企業であるSMIC」と、半導体設計を必要とする他企業との「橋渡し役」になった。
ロイターの調査によると、ブライトは上海のコムナブ・テクノロジーにも半導体設計サービスを提供販売している。コムナブは海軍や中国人民解放軍の戦略支援軍(情報、電子、サイバー戦争を監督する部隊)向けに衛星ナビゲーションシステムを製造している。
<米国から資金調達>
ブライトに対する米国最大の投資家であるノーウェスト・ベンチャー・パートナーズは、保有するブライト株の99.7%がウェルズ・ファーゴからの資金で支えられている。
ノーウェストによると、ブライトに最初に出資したのは15年前で、出資は「適用される法を順守している」。ただ同社は、「規制環境は変化しており、新規制が施行されるのに伴い、それらを順守する決意だ」と付け加えた。
カリフォルニアのキリスト教系大学、ビオラ大学もブライトに5.43%出資している。同大はブライトへの出資についてコメントを控えた。
法律家によると、ノーウェストとビオラの投資は以前から続いているため、中国の最先端半導体その他ハイテク産業への新規投資を制限する規制に抵触することはないとみられる。