*16:12JST NATOワシントン宣言「中国が侵略の決定的支援者」は日本を戦争に巻き込むシナリオ(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。
ワシントンで開かれていたNATOサミットがアメリカ時間7月10日に宣言を出し、その中で中国に関して、ロシアの侵攻に対する「決定的な支援者だ」と批判した。
インド太平洋地域は米欧の安全保障に影響するとし、日本や韓国との協力強化も盛り込んだ。
これに対して中国は激しく抗議している。
両者の言い分を考察すると、日本人がやがてアメリカの駒として戦場で戦わされるシナリオが見えてくる。
◆NATOワシントン宣言の対中批難部分アメリカ時間7月10日、NATOサミットは(※2)というタイトルの宣言を発表した。
その4項目目に「戦略的競争、蔓延する不安定性、そしてくり返されるショックが、われわれのより広範な安全保障環境を特徴づけている」とした上で、中国に対する警告が盛り込まれている。
また26項目および27項目にも対中批難が書かれているので、それらの概要をまとめて以下に記す。
●野心と威圧的な政策を表明してきた中華人民共和国(以下、中国)は、われわれの利益、安全保障と価値観に引き続き挑戦している。
●ロシアと中国の戦略的パートナーシップの深化と、ルールに基づく国際秩序を無効化させ再構築しようとする試みは、深刻な懸念の原因となっている。
われわれは、ハイブリッド、サイバー、宇宙、その他の脅威と悪意のある活動にも直面している。
●中国は、いわゆる「無制限」のパートナーシップとロシアの防衛産業基盤への大規模な支援を通じて、ロシアのウクライナに対する戦争を決定的に可能にしている。
これにより、ロシアが近隣諸国と欧州大西洋の安全保障に及ぼす脅威が増大している。
われわれは中国に対し、ロシアの戦争活動に対するすべての物質的および政治的支援を停止するよう求める。
●中国は、自国の利益と評判に悪影響を及ぼさずに、ヨーロッパにおける近年最大の戦争を可能にすることはできない。
●中国は、欧州大西洋の安全保障に体系的な挑戦を取り続けている。
われわれは、中国に起因する偽情報を含む悪意のあるサイバー活動とハイブリッド活動が継続しているのを目にしている。
われわれは中国に対し、サイバー空間で責任ある行動をとるという約束を守るよう求める。
●われわれは中国の宇宙能力と活動の発展を懸念している。
われわれは中国に対し、責任ある宇宙行動を促進するための国際的な取り組みを支持するよう求める。
●中国は核弾頭の増加と高度な運搬手段の増加により、核兵器の急速な拡大と多様化を続けている。
われわれは中国に対し、戦略的リスク削減の議論に参加し、透明性を通じて安定を促進するよう求める。
(概ね以上)
◆中国の反論これに対して駐EUの中国使節団の報道官は、7月11日の記者会見で以下のように反論した(※3)。
●NATOサミットの宣言は、冷戦のメンタリティと好戦的なレトリックに満ちており、中国関連の内容は、挑発、嘘、扇動、中傷に満ちている。
●周知の通り、中国はウクライナ危機の生みの親でもなければ当事者でもない。
ウクライナ問題に関する中国の核心的立場は、和平交渉と政治的解決を促進することであり、これは国際社会から広く認識され、高く評価されている。
●中国は紛争当事者に殺傷力のある武器を提供したことはなく、民生用ドローンの輸出を含む軍民両用物品を常に厳しく管理してきた。
中国とロシアの間の正常な貿易は第三者に向けられたものではなく、外部からの干渉や強制の対象であってはならない。
●ウクライナ危機は今のところ長引いているが、誰が火に油を注いでいるのか、誰がこの機会を利用して個人的な利益を求めているのか。
国際社会は、このことをはっきりと認識している。
われわれはNATOに対し、国際社会の正当な声に注意深く耳を傾け、自らが行っていることを深く反省し、責任を転嫁したり他国を非難したりするのではなく、事態の悪化を緩和し、問題を解決するための具体的な行動をとるよう求める。
●アジア太平洋地域は平和的発展の高地であり、地政学的な駆け引きの競技場ではない。
NATOは再三再四にわたって「ユーラシア安全保障のつながり」誇大宣伝しているが、その意図は何処(いずこ)にあるや?
●われわれはNATOに対し、北大西洋における地域防衛機関としての地位を堅持し、アジア太平洋地域の平和と安定を台無しにしたり、特定の大国の覇権の道具にならないよう要請する。
●中国は世界平和の建設者であり、世界の発展に貢献し、国際秩序の擁護者である。
われわれはNATOに対し、中国に対する誤った認識を直ちに正し、冷戦のメンタリティとゼロサムゲームを放棄し、いわゆる中国の脅威を声高に叫ぶのをやめ、対立と対抗を扇動するのをやめ、世界の平和と安定のためにより実践的なことを行うことを要求する。
(以上)
一方、中国の外交部はやはり7月11日の記者会見で(※4)以下のように抗議している。
●NATOの「ワシントン首脳宣言」は、アジア太平洋地域の緊張を誇張し、冷戦思考と好戦的な発言に満ちており、中国関連の内容には偏見・中傷・挑発に満ちており、われわれは強烈な不満を抱いており、断固として反対する。
●今回のNATOサミットにはNATO創設75周年という背景がある。
存続の必要性を示すために、米国とNATOは会合前にNATOの「栄光」と「団結」を誇示し、NATOを「平和維持組織」であるかのように見せかけているが、実は「冷戦の遺物」であることを覆い隠すことはできない。
●NATO軍は「人道的災害の回避」を旗印にしながら、かつてユーゴスラビアに対して78日間にわたる爆撃を実施した。
NATOの黒い手が伸びるところはどこでも、混乱が現れる。
NATOのいわゆる安全保障は、他国の安全保障を犠牲にして成り立っている。
NATOが売り込む「安全保障上の不安」の多くは、NATO自身が引き起こしている。
NATOが誇るいわゆる「成功」や「力」は世界にとって大きな危険を意味する。
「仮想敵国」を設定することで存在を維持し、国境を越えて勢力を拡大するのはNATOの常套手段であり、中国に対する「体制的挑戦」の誤った位置付けに固執し、中国の内政・外交政策の信頼を損なうことはまさにそれを体現している。
●ウクライナ問題に関して、NATOが「中国の責任」論を主張するのは荒唐無稽であり、邪悪な意図がある。
NATOはいかなる証拠もなく、米国が捏造した虚偽の情報を拡散し続け、公然と中国を中傷し、中国とEUの関係を破壊し中欧協力を潰したいのだ。
ウクライナ危機を今日まで延期させ、火に油を注いでいるのが誰であるか、国際社会は知っている。
NATOは、危機の根本原因と自らの行動を熟考し、国際社会の公正な声に注意深く耳を傾け、責任を転嫁したり他国を非難するのではなく、状況を緩和するために実際的な行動を取るよう勧告する。
●NATOはその範囲をアジア太平洋にまで拡大し、中国の近隣諸国や米国の同盟国との軍事・安全保障上の関係を強化し、「インド太平洋戦略」の実施において米国に協力してきたが、その行為は中国の利益を損ない、アジア太平洋地域の平和と安定を破壊し、すでに地域諸国の疑念と反対を引き起こしている。
●中国はNATOに対し、冷戦思考・陣営対立・ゼロサムゲームという時代遅れの概念を放棄し、中国に対する誤った理解を正し、中国の内政干渉をやめ、中国のイメージを汚し、中国とEUの関係に干渉しないよう求める。
ヨーロッパを混乱させた後、アジア太平洋を混乱させるのをやめよ。
●中国は自国の主権・安全保障・発展利益を断固として守り、自国の発展と対外協力を通して、世界の平和と安定にさらなる安定と前向きなエネルギーを注ぎたい。
(以上)
外交部のこの回答は7月11日の新華網(※5)が掲載し、中央テレビ局CCTV(※6)も同じ内容で報道した。
したがって、外交部の記者会見での回答が中国政府の正式見解であると解釈していいだろう。
「(NATOワシントン宣言「中国が侵略の決定的支援者」は日本を戦争に巻き込むシナリオ2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。
この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※7)より転載しました。
NATOワシントン首脳会議で会見するバイデン大統領 写真: ロイター/アフロ
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://www.nato.int/cps/en/natohq/official_texts_227678.htm
(※3)http://eu.china-mission.gov.cn/stxw/202407/t20240711_11451831.htm
(※4)https://www.fmprc.gov.cn/fyrbt_673021/202407/t20240711_11452358.shtml
(※5)http://www.news.cn/world/20240711/9707b00c867b4840bef0f9f4da2e6ac8/c.html
(※6)https://tv.cctv.com/2024/07/11/VIDENC0MeGRaeb3gQsqlcFeW240711.shtml
(※7)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/6c7ff82141848f044f808a47da2869a323564cef <CS>
ワシントンで開かれていたNATOサミットがアメリカ時間7月10日に宣言を出し、その中で中国に関して、ロシアの侵攻に対する「決定的な支援者だ」と批判した。
インド太平洋地域は米欧の安全保障に影響するとし、日本や韓国との協力強化も盛り込んだ。
これに対して中国は激しく抗議している。
両者の言い分を考察すると、日本人がやがてアメリカの駒として戦場で戦わされるシナリオが見えてくる。
◆NATOワシントン宣言の対中批難部分アメリカ時間7月10日、NATOサミットは(※2)というタイトルの宣言を発表した。
その4項目目に「戦略的競争、蔓延する不安定性、そしてくり返されるショックが、われわれのより広範な安全保障環境を特徴づけている」とした上で、中国に対する警告が盛り込まれている。
また26項目および27項目にも対中批難が書かれているので、それらの概要をまとめて以下に記す。
●野心と威圧的な政策を表明してきた中華人民共和国(以下、中国)は、われわれの利益、安全保障と価値観に引き続き挑戦している。
●ロシアと中国の戦略的パートナーシップの深化と、ルールに基づく国際秩序を無効化させ再構築しようとする試みは、深刻な懸念の原因となっている。
われわれは、ハイブリッド、サイバー、宇宙、その他の脅威と悪意のある活動にも直面している。
●中国は、いわゆる「無制限」のパートナーシップとロシアの防衛産業基盤への大規模な支援を通じて、ロシアのウクライナに対する戦争を決定的に可能にしている。
これにより、ロシアが近隣諸国と欧州大西洋の安全保障に及ぼす脅威が増大している。
われわれは中国に対し、ロシアの戦争活動に対するすべての物質的および政治的支援を停止するよう求める。
●中国は、自国の利益と評判に悪影響を及ぼさずに、ヨーロッパにおける近年最大の戦争を可能にすることはできない。
●中国は、欧州大西洋の安全保障に体系的な挑戦を取り続けている。
われわれは、中国に起因する偽情報を含む悪意のあるサイバー活動とハイブリッド活動が継続しているのを目にしている。
われわれは中国に対し、サイバー空間で責任ある行動をとるという約束を守るよう求める。
●われわれは中国の宇宙能力と活動の発展を懸念している。
われわれは中国に対し、責任ある宇宙行動を促進するための国際的な取り組みを支持するよう求める。
●中国は核弾頭の増加と高度な運搬手段の増加により、核兵器の急速な拡大と多様化を続けている。
われわれは中国に対し、戦略的リスク削減の議論に参加し、透明性を通じて安定を促進するよう求める。
(概ね以上)
◆中国の反論これに対して駐EUの中国使節団の報道官は、7月11日の記者会見で以下のように反論した(※3)。
●NATOサミットの宣言は、冷戦のメンタリティと好戦的なレトリックに満ちており、中国関連の内容は、挑発、嘘、扇動、中傷に満ちている。
●周知の通り、中国はウクライナ危機の生みの親でもなければ当事者でもない。
ウクライナ問題に関する中国の核心的立場は、和平交渉と政治的解決を促進することであり、これは国際社会から広く認識され、高く評価されている。
●中国は紛争当事者に殺傷力のある武器を提供したことはなく、民生用ドローンの輸出を含む軍民両用物品を常に厳しく管理してきた。
中国とロシアの間の正常な貿易は第三者に向けられたものではなく、外部からの干渉や強制の対象であってはならない。
●ウクライナ危機は今のところ長引いているが、誰が火に油を注いでいるのか、誰がこの機会を利用して個人的な利益を求めているのか。
国際社会は、このことをはっきりと認識している。
われわれはNATOに対し、国際社会の正当な声に注意深く耳を傾け、自らが行っていることを深く反省し、責任を転嫁したり他国を非難したりするのではなく、事態の悪化を緩和し、問題を解決するための具体的な行動をとるよう求める。
●アジア太平洋地域は平和的発展の高地であり、地政学的な駆け引きの競技場ではない。
NATOは再三再四にわたって「ユーラシア安全保障のつながり」誇大宣伝しているが、その意図は何処(いずこ)にあるや?
●われわれはNATOに対し、北大西洋における地域防衛機関としての地位を堅持し、アジア太平洋地域の平和と安定を台無しにしたり、特定の大国の覇権の道具にならないよう要請する。
●中国は世界平和の建設者であり、世界の発展に貢献し、国際秩序の擁護者である。
われわれはNATOに対し、中国に対する誤った認識を直ちに正し、冷戦のメンタリティとゼロサムゲームを放棄し、いわゆる中国の脅威を声高に叫ぶのをやめ、対立と対抗を扇動するのをやめ、世界の平和と安定のためにより実践的なことを行うことを要求する。
(以上)
一方、中国の外交部はやはり7月11日の記者会見で(※4)以下のように抗議している。
●NATOの「ワシントン首脳宣言」は、アジア太平洋地域の緊張を誇張し、冷戦思考と好戦的な発言に満ちており、中国関連の内容には偏見・中傷・挑発に満ちており、われわれは強烈な不満を抱いており、断固として反対する。
●今回のNATOサミットにはNATO創設75周年という背景がある。
存続の必要性を示すために、米国とNATOは会合前にNATOの「栄光」と「団結」を誇示し、NATOを「平和維持組織」であるかのように見せかけているが、実は「冷戦の遺物」であることを覆い隠すことはできない。
●NATO軍は「人道的災害の回避」を旗印にしながら、かつてユーゴスラビアに対して78日間にわたる爆撃を実施した。
NATOの黒い手が伸びるところはどこでも、混乱が現れる。
NATOのいわゆる安全保障は、他国の安全保障を犠牲にして成り立っている。
NATOが売り込む「安全保障上の不安」の多くは、NATO自身が引き起こしている。
NATOが誇るいわゆる「成功」や「力」は世界にとって大きな危険を意味する。
「仮想敵国」を設定することで存在を維持し、国境を越えて勢力を拡大するのはNATOの常套手段であり、中国に対する「体制的挑戦」の誤った位置付けに固執し、中国の内政・外交政策の信頼を損なうことはまさにそれを体現している。
●ウクライナ問題に関して、NATOが「中国の責任」論を主張するのは荒唐無稽であり、邪悪な意図がある。
NATOはいかなる証拠もなく、米国が捏造した虚偽の情報を拡散し続け、公然と中国を中傷し、中国とEUの関係を破壊し中欧協力を潰したいのだ。
ウクライナ危機を今日まで延期させ、火に油を注いでいるのが誰であるか、国際社会は知っている。
NATOは、危機の根本原因と自らの行動を熟考し、国際社会の公正な声に注意深く耳を傾け、責任を転嫁したり他国を非難するのではなく、状況を緩和するために実際的な行動を取るよう勧告する。
●NATOはその範囲をアジア太平洋にまで拡大し、中国の近隣諸国や米国の同盟国との軍事・安全保障上の関係を強化し、「インド太平洋戦略」の実施において米国に協力してきたが、その行為は中国の利益を損ない、アジア太平洋地域の平和と安定を破壊し、すでに地域諸国の疑念と反対を引き起こしている。
●中国はNATOに対し、冷戦思考・陣営対立・ゼロサムゲームという時代遅れの概念を放棄し、中国に対する誤った理解を正し、中国の内政干渉をやめ、中国のイメージを汚し、中国とEUの関係に干渉しないよう求める。
ヨーロッパを混乱させた後、アジア太平洋を混乱させるのをやめよ。
●中国は自国の主権・安全保障・発展利益を断固として守り、自国の発展と対外協力を通して、世界の平和と安定にさらなる安定と前向きなエネルギーを注ぎたい。
(以上)
外交部のこの回答は7月11日の新華網(※5)が掲載し、中央テレビ局CCTV(※6)も同じ内容で報道した。
したがって、外交部の記者会見での回答が中国政府の正式見解であると解釈していいだろう。
「(NATOワシントン宣言「中国が侵略の決定的支援者」は日本を戦争に巻き込むシナリオ2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。
この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※7)より転載しました。
NATOワシントン首脳会議で会見するバイデン大統領 写真: ロイター/アフロ
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://www.nato.int/cps/en/natohq/official_texts_227678.htm
(※3)http://eu.china-mission.gov.cn/stxw/202407/t20240711_11451831.htm
(※4)https://www.fmprc.gov.cn/fyrbt_673021/202407/t20240711_11452358.shtml
(※5)http://www.news.cn/world/20240711/9707b00c867b4840bef0f9f4da2e6ac8/c.html
(※6)https://tv.cctv.com/2024/07/11/VIDENC0MeGRaeb3gQsqlcFeW240711.shtml
(※7)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/6c7ff82141848f044f808a47da2869a323564cef <CS>