[日本インタビュ新聞社] - ジェイテック<2479>(東証グロース、名証メイン)はテクノロジスト派遣の「技術商社」を標榜し、製造業の開発・設計部門に技術者を派遣する技術職知財リース事業を主力としている。中期目標としてテクノロジスト700名体制早期実現に向けた人材採用・教育の強化、長期目標としてM&Aや新規事業による強固かつ多角的な経営基盤の構築を推進している。25年3月期第2四半期累計(中間期)は大幅増益だった。技術職知財リース事業のテクノロジストの需要が安定的に推移したことに加え、業務効率化によるコストダウン効果も寄与した。そして通期大幅増益予想を据え置いた。テクノロジストに対する需要が高水準に推移する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は第2四半期累計大幅増益も好感して反発の動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。
■技術者派遣の「技術職知財リース事業」が主力
製造業の開発・設計部門に技術者を派遣する技術職知財リース事業を主力としている。なお一般派遣およびエンジニア派遣事業については、コロナ禍の影響に端を発して一部業務を停止していたが、25年3月期より全業務を休止した。
専門教育による知識を基盤として、新たな付加価値を顧客に提供する社員を「テクノロジスト」と呼称し、一般的なエンジニアと区別している。そして「技術商社」を標榜し、テクノロジストが保有する知恵を提供(リース)することで顧客とともに新たな価値を創造する「技術職知財リース事業」としている。
独立系の技術者派遣会社として、上場企業および優良中堅企業160社以上と幅広く取引があり、機械設計開発、電気・電子設計開発、ソフトウェア開発、建築設計の4分野を柱として、業種別にも幅広く展開していることが特徴だ。
24年3月期の連結ベースの業種別売上高構成比は、自動車関連が20%、産業用機器関連が24%、電子・電気機器関連が7%、半導体・集積回路関連が6%、情報・通信機器関連が4%、精密機器関連が4%、航空機・宇宙関連が3%、情報処理関連が13%、建築関連が14%、一般派遣・その他が6%だった。産業用機器関連が上昇傾向となっているが、これは半導体関連装置の増加によるものである。これを除けば特定の業種に偏らない構成となっている。
売上上位顧客企業(順不同)はデンソーテン、ヤマハ発動機、本田技研工業、アイシンソフトウェア、日立GEニュークリア・エナジー、ヤマハ、三菱重工業、東レエンジニアリング、村田機械、LIXILだった。なお取引先数は上場企業および優良中堅企業を中心に160社以上となっている。
連結ベースの在籍テクノロジスト数は24年3月期末時点で385名となり、24年4月の新卒採用は43名だった。単体ベースの在籍テクノロジスト数は24年3月期末時点で212名となり、24年4月の新卒採用は13名だった。
平均稼働率(休職者を除く)の推移は、22年3月期の上期が89.8%、下期が93.9%、23年3月期の上期が95.6%、下期が97.2%、24年3月期の上期が97.7%、下期が98.6%となった。コロナ禍の影響が和らいで回復基調である。
単体ベースの稼働時間(平均月間工数)の推移は、22年3月期が177.6時間/人、23年3月期が177.3時間/人、24年3月期が175.5時間/人となっている。働き方の変化などにより減少傾向となっている。
単体ベースの平均単価(知財リース)の推移は、22年3月期上期が4479円、下期が4408円、23年3月期上期が4465円、下期が4498円、24年3月期上期が4729円、下期が4715円となっている。22年3月期は21年4月に過去最多となる100名の新卒テクノロジストが入社した影響で平均単価を押し下げたが、24年3月期上期に大幅上昇した。
■テクノロジスト700名体制の早期実現目指す
成長戦略としては、中期目標としてのテクノロジスト700名体制の早期実現に向けた人材採用・教育の強化、長期目標としてのM&Aや新規事業による強固かつ多角的な経営基盤の構築を掲げている。
中期経営計画(25年3月期~27年3月期)では、最終年度27年3月期の業績目標値を売上高45億50百万円、営業利益5億40百万円、経常利益5億40百万円、親会社株主帰属当期純利益2億97百万円としている。基本方針としては、持続的な成長に向けた収益基盤の強化、財務基盤の一層の強化と安定した株主還元、投資の拡大による成長の促進と多角的な収益源の確保を推進し、技術職知財リース事業の事業基盤をより強固なものとしつつ、事業の多角化により企業価値の向上・株主価値の向上を実現することを目指す。
持続的な成長に向けた収益基盤の強化では、能力を重視した厳選採用の継続によるテクノロジスト700名体制の早期実現、技術力と高いヒューマンスキルを兼ね備えた特長のあるテクノロジストの育成、グループ内連携による採用・営業の強化と効率化を推進する。財務基盤の一層の強化と安定した株主還元では、ROEに重点を置いた経営、配当等による株主還元の強化を推進する。投資の拡大による成長の促進と多角的な収益源の確保では、新技術分野へのアライアンスやM&Aへの注力、収益源の多角化による事業ポートフォリオ拡大を推進する。
22年1月には、リスキリングビジネスおよび空間ビジネスの新規事業領域として「まなクル事業」を発表した。独自の人材育成カリキュラムや最新技術に関するノウハウを基軸として生活支援コミュニティー・スペースを提供し、法人から個人に至るまで「働くこと」「学ぶこと」を支援するサービスである。23年3月期末の直営店は全国8拠点で、24年3月期はフランチャイズ出店を計画している。23年3月には「まなクル事業」の拠点を活用した上名古屋学区防災安心まちづくり委員会(名古屋市)との「大規模災害時における地域と事業所との支援協力に関する覚書」の締結を発表した。全国8拠点の「まなクル事業」を活用して社会貢献活動に貢献する方針だ。
また23年3月には、日本ウインドサーフィン協会とオフィシャルパートナー契約を締結した。日本ウインドサーフィン協会のオフィシャルパートナーとして、大学生対象の種目である学連主催の主要な大会の振興を積極的に支援する。そして23年8月には愛知県蒲郡の海陽ヨットハーバーで開催された「第32回プリンセスカップ」に協賛、24年1月には神奈川県横須賀市津久井浜海岸沖で開催された「関東学生選手権」に協賛、24年3月には静岡県浜松市の舘山寺サンビーチ海岸・沖合で開催された「2024年度インカレ新人戦レース」に協賛した。
■東証スタンダード市場への市場区分変更申請に向けた準備を開始
22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編ではグロース市場を選択した。さらに自動車産業の盛んな東海地区での認知度向上に向けて、23年12月25日付で名証メイン市場へ上場して東証グロース市場との重複上場とした。24年1月には東証スタンダード市場への市場区分変更に向けた準備を開始すると発表した。スタンダード市場上場の形式基準を全て充足している。
24年6月には、グロース市場の上場維持基準への適合に向けた計画(21年12月16日付で提出)の進捗状況を公表した。24年3月末時点で時価総額が基準を充たしていないため、計画期間を25年3月期に変更して、上場維持基準適合に向けた各種取組を推進するとしている。
■25年3月期2Q累計大幅増益と順調、通期も大幅増益予想
25年3月期の連結業績予想は売上高が24年3月期比15.6%増の37億50百万円、営業利益が52.7%増の3億50百万円、経常利益が54.6%増の3億50百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が17.8%増の1億93百万円としている。配当予想については未定としている。
第2四半期累計(中間期)は売上高が前年同期比1.4%増の16億47百万円、営業利益が48.9%増の98百万円、経常利益が50.1%増の98百万円、親会社株主帰属四半期(中間)純利益が91.4%増の63百万円だった。技術職知財リース事業のテクノロジストの需要が安定的に推移したことに加え、業務効率化によるコストダウン効果も寄与した。
セグメント別に見ると、技術職知財リース事業は売上高が2.3%増の16億47百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が26.6%増の3億05百万円だった。一般派遣およびエンジニア派遣事業は当期より全業務を休止した。
全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が8億19百万円で営業利益が38百万円、第2四半期は売上高が8億28百万円で営業利益が60百万円だった。
通期連結業績予想は据え置いている。テクノロジストに対する需要が高水準に推移する見込みだ。第2四半期累計の進捗率は売上高が44%、営業利益が28%、経常利益が28%、親会社株主帰属当期純利益が33%と低水準の形だが、新卒技術者が順次稼働して全体の稼働率が上昇していく収益構造であり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は反発の動き
株価は第2四半期累計大幅増益も好感して反発の動きを強めている。週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて26週移動平均線突破の動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。11月12日の終値は242円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS24円10銭で算出)は約10倍、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS150円58銭で算出)は約1.6倍、そして時価総額は約21億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)