[シドニー 9日 ロイター] - オーストラリアのモリソン首相は9日、中国が香港への統制を強める「香港国家安全維持法」(国安法)が施行されたことを受け、香港との犯罪人引き渡し条約を停止すると発表した。香港市民に対するビザ(査証)延長などの措置も明らかにした。
モリソン首相は、国安法施行によって状況が根本的に変化したと判断し、犯罪人引き渡し条約の停止を決めたと説明した。同法の下では、容疑者は中国本土で裁判にかけられる可能性がある。
首相はその上で「香港市民の中には、別の土地で自身のスキルを生かして新しい生活を始めたいと希望する人もいるかもしれない」とし、豪在住の香港市民の滞在を支援する措置を発表した。
香港からの留学生は卒業後5年間、豪国内での滞在が認められ、その後永住権を申請することができる。一時就労ビザで滞在している香港市民も、5年のビザ延長とその後の永住権申請が可能になる。
中国政府は反発。外務省の趙立堅報道官は、豪政府は方針を転換し、中国の問題への介入をやめるべきとし、中国は報復措置を取る権利を有すると警告した。
豪にとって、中国は最大の輸出先。駐豪中国大使は、豪政府が干渉をやめなければ代償を払うことになると警告した。
<人材受け入れ、企業誘致>
豪政府によると、国内には現在、学生ビザと一時就労ビザで1万人の香港市民が滞在、そのほか1250件の申請がされている。香港市民の申請は「Global Talent Scheme」などの制度の下で優先処理される。また、香港市民は難民向けビザの申請もできるという。
アジアの拠点を香港に置いている金融サービスや、コンサルティング、メディアなどの企業の移転も誘致する。インセンティブや従業員の異動に必要なビザを提供するとしている。
一方、豪国民に対しては、香港で拘束されるリスクが高まったとして、渡航を控えるよう呼び掛けるとともに、現地に居住している国民には滞在の必要性を再考するよう促した。
国安法施行を受けた措置としては、カナダ政府が先週、香港との犯罪人引き渡し条約停止を発表。
ニュージーランドも9日、容疑者の引き渡しや戦略的製品の輸出、渡航勧告など、あらゆる点において香港との関係を見直すと発表した。
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