■業績見通し
1. 2023年3月期の業績見通し
2023年3月期の連結業績予想についてワコム (TYO:6727)は、上期実績や今後の見通し等を踏まえ、2022年10月14日に減額修正を公表した※。
売上高は前期比9.4%増の119,000百万円、営業利益は同53.9%減の6,000百万円、経常利益は同45.0%減の7,900百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同46.1%減の5,900百万円と通期でも増収減益となる見通しである。
※期初予想から、7月29日と10月14日の2回の業績修正を行った。
その結果、売上高は期初予想比9,000百万円減、営業利益は同7,700百万円減、経常利益は同5,800百万円減、親会社株主に帰属する当期純利益は同4,300百万円減となった。
売上高予想を減額修正したのは、主に「ブランド製品事業」によるものであり、市場環境の変化に鑑み、1)「ペンタブレット製品」及び「ディスプレイ製品」における中低価格帯モデルの販売予測を見直したこと、2)一部製品の市場投入時期を延期したことが理由である。
その結果、「ブランド製品事業」は前期比で減収となる一方、「テクノロジーソリューション事業」は、円安によるプラス効果※やOEM提供先メーカーとの強い関係を維持することで、通期でも大幅な増収を確保する見通しとなっている。
※想定為替レート(2022年10月以降)は、1米ドル=140円(前期の通期平均は112.86円)、1ユーロ=138円(同131.01円)を前提としており、年間売上高(全体)を前期比で約160億円、年間営業利益(全体)を約10億円押し上げる要因と見ているようだ(弊社推定)。
損益面では、「テクノロジーソリューション事業」の伸びや円安によるプラス効果はあるものの、「ブランド製品事業」における販売予測の見直し等による売上減に加え、上期同様に製品ミックスの悪化やドル高傾向継続によるマイナス影響に伴う粗利益率の低下により、大幅な減益となる見通しである。
なお、将来を見据えた研究開発投資については年間7,000百万円(前期比27.8%増)を予定しており、積極的な方針に変化はない。
事業別の業績見通しと活動方針については以下のとおりである。
(1) ブランド製品事業
売上高を前期比1.2%減の52,000百万円、セグメント利益を同92.0%減の700百万円と見込んでいる。
売上高は、市場環境の変化に鑑み、中低価格帯モデルの販売予測を見直したことや、一部製品の市場投入時期の延期により微減収となる見通しである。
一方、損益面では、上期同様に製品ミックスの悪化やドル高傾向継続によるマイナス影響による粗利益率の低下に加えて、積極的な研究開発投資を継続する方針の下、通期では黒字を確保するものの大幅な減益を見込んでいる。
(2) テクノロジーソリューション事業
売上高を前期比19.3%増の67,000百万円、セグメント利益を同18.1%増の10,500百万円と見込んでいる。
タブレット・ノートPC市場の需要減退による影響を見込むものの、上期に引き続き円安によるプラス効果やOEM提供先メーカーとの強い関係の維持・発展により、増収となる見通しである。
損益面では、将来に向けた積極的な研究開発投資を加速しつつも、増収による収益の押し上げにより増益を確保する想定となっている。
2. 弊社の見方
修正後の業績予想を達成するためには、下期売上高64,862百万円(前年同期比10.8%増)、営業利益3,716百万円(同32.0%減)が必要となる。
弊社では、世界的に不安定な経済情勢や為替相場の動向、サプライチェーンの混乱など、先行き不透明な事業環境については決して楽観視できないものの、同社の業績予想はそういった不確実性についても合理的な範囲で反映した水準となっており、十分に達成可能であると見ている。
なお、「ブランド製品事業」における粗利益率の低下要因の1つとなっている為替変動影響を含む仕入コストの上昇については、価格転嫁でカバーする方針のようだ。
また、新製品についても、部材高騰の要素を含めて、新しく実装する価値に見合った価格付けを進める考えであり、こういった価格戦略が損益の改善にどのように寄与してくるのかもポイントになると言えるだろう。
注目すべきは、中期経営方針「Wacom Chapter 3」の成長イメージへのキャッチアップに向けて、どのようにリカバリーしていくのかにある。
まずは、前述した「事業リカバリーの方向性と取り組み」を確実に執行する方針としており、その具体的な進捗と成果をフォローしていきたい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
1. 2023年3月期の業績見通し
2023年3月期の連結業績予想についてワコム (TYO:6727)は、上期実績や今後の見通し等を踏まえ、2022年10月14日に減額修正を公表した※。
売上高は前期比9.4%増の119,000百万円、営業利益は同53.9%減の6,000百万円、経常利益は同45.0%減の7,900百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同46.1%減の5,900百万円と通期でも増収減益となる見通しである。
※期初予想から、7月29日と10月14日の2回の業績修正を行った。
その結果、売上高は期初予想比9,000百万円減、営業利益は同7,700百万円減、経常利益は同5,800百万円減、親会社株主に帰属する当期純利益は同4,300百万円減となった。
売上高予想を減額修正したのは、主に「ブランド製品事業」によるものであり、市場環境の変化に鑑み、1)「ペンタブレット製品」及び「ディスプレイ製品」における中低価格帯モデルの販売予測を見直したこと、2)一部製品の市場投入時期を延期したことが理由である。
その結果、「ブランド製品事業」は前期比で減収となる一方、「テクノロジーソリューション事業」は、円安によるプラス効果※やOEM提供先メーカーとの強い関係を維持することで、通期でも大幅な増収を確保する見通しとなっている。
※想定為替レート(2022年10月以降)は、1米ドル=140円(前期の通期平均は112.86円)、1ユーロ=138円(同131.01円)を前提としており、年間売上高(全体)を前期比で約160億円、年間営業利益(全体)を約10億円押し上げる要因と見ているようだ(弊社推定)。
損益面では、「テクノロジーソリューション事業」の伸びや円安によるプラス効果はあるものの、「ブランド製品事業」における販売予測の見直し等による売上減に加え、上期同様に製品ミックスの悪化やドル高傾向継続によるマイナス影響に伴う粗利益率の低下により、大幅な減益となる見通しである。
なお、将来を見据えた研究開発投資については年間7,000百万円(前期比27.8%増)を予定しており、積極的な方針に変化はない。
事業別の業績見通しと活動方針については以下のとおりである。
(1) ブランド製品事業
売上高を前期比1.2%減の52,000百万円、セグメント利益を同92.0%減の700百万円と見込んでいる。
売上高は、市場環境の変化に鑑み、中低価格帯モデルの販売予測を見直したことや、一部製品の市場投入時期の延期により微減収となる見通しである。
一方、損益面では、上期同様に製品ミックスの悪化やドル高傾向継続によるマイナス影響による粗利益率の低下に加えて、積極的な研究開発投資を継続する方針の下、通期では黒字を確保するものの大幅な減益を見込んでいる。
(2) テクノロジーソリューション事業
売上高を前期比19.3%増の67,000百万円、セグメント利益を同18.1%増の10,500百万円と見込んでいる。
タブレット・ノートPC市場の需要減退による影響を見込むものの、上期に引き続き円安によるプラス効果やOEM提供先メーカーとの強い関係の維持・発展により、増収となる見通しである。
損益面では、将来に向けた積極的な研究開発投資を加速しつつも、増収による収益の押し上げにより増益を確保する想定となっている。
2. 弊社の見方
修正後の業績予想を達成するためには、下期売上高64,862百万円(前年同期比10.8%増)、営業利益3,716百万円(同32.0%減)が必要となる。
弊社では、世界的に不安定な経済情勢や為替相場の動向、サプライチェーンの混乱など、先行き不透明な事業環境については決して楽観視できないものの、同社の業績予想はそういった不確実性についても合理的な範囲で反映した水準となっており、十分に達成可能であると見ている。
なお、「ブランド製品事業」における粗利益率の低下要因の1つとなっている為替変動影響を含む仕入コストの上昇については、価格転嫁でカバーする方針のようだ。
また、新製品についても、部材高騰の要素を含めて、新しく実装する価値に見合った価格付けを進める考えであり、こういった価格戦略が損益の改善にどのように寄与してくるのかもポイントになると言えるだろう。
注目すべきは、中期経営方針「Wacom Chapter 3」の成長イメージへのキャッチアップに向けて、どのようにリカバリーしていくのかにある。
まずは、前述した「事業リカバリーの方向性と取り組み」を確実に執行する方針としており、その具体的な進捗と成果をフォローしていきたい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)