[ロンドン 20日 ロイター] - 欧州でハイイールド債の発行が回復している。金利上昇を背景に投資家のリスク選好度が高まっていることが背景。
昨年はウクライナ戦争で市場が凍結状態にあったが、リフィニティブのデータによると、今月の発行額は現時点で14億ドル、昨年12月の発行額は約22億ドルに達した。11月は7億6000万ドルだった。
前年同期の水準は、依然大幅に下回っているが、アナリストは発行増加は良い傾向だと指摘している。
クレジット運用に特化した運用会社ミューズニッチの公開市場担当共同ヘッド、Tatjana Greil Castro氏は「ハイイールド債市場は昨年、非常に長期にわたってほぼ閉鎖状態にあったが、その後回復しつつある」と述べた。
リフィニティブのデータによると、前年同期の発行額は70億ドル。その後、ロシアがウクライナに侵攻した昨年2月に市場は閉鎖状態となった。記録的な高インフレや中央銀行の利上げも債券市場の重しとなり、投資家のリスク回避姿勢が強まっていた。
だがこのところは、一段の金利上昇を前に新規の資金を確保する動きや借り換えを目指す動きが出ている。
通信大手テレコム・イタリアは19日、短期債務の借り換えで少なくとも5億ドルの起債を開始。同業のアルティス・フランスも約60億ドルの融資と約20億ユーロ(22億ドル)の融資の返済期限を2028年8月まで延長する手続きを開始した。
先週には航空大手エールフランスKLMが初のサステナビリティー・リンク・ボンド(SLB)を起債、10億ユーロを調達した。欧州では数カ月ぶりのハイイールド債の大型起債となった。
ハイイールド債の保証コストは今週、昨年4月以来の水準に低下。投資家のリスク選好度が高まっていることが浮き彫りとなった。
大半の企業は、今年償還期限を迎えるハイイールド債への対応を済ませたが、一部の企業はできる限り早期の借り換えを迫られている。アナリストは、そうした企業が新発債の起債で苦戦し、株主に支援を求める必要が生じる可能性があると指摘している。
ロイターが入手した文書によると、イタリアの医療機器メーカー、リマ・コーポレートは17日、8月に償還期限を迎える社債(2億7500万ユーロ)の借り換えに向け2億9500万ユーロの起債を開始したが、大株主であるプライベートエクイティのEQTは財務を強化して投資家の安心感を高めるため同社への資本注入を実施している。