[東京 21日 ロイター] - ルネサスエレクトロニクスは21日午後、主に自動車向け半導体を手掛ける那珂工場(茨城県ひたちなか市)で19日発生した火災について会見し、1カ月程度で元の生産水準に戻すことを目指すと明らかにした。世界的に半導体が不足する中で起きたトラブルで、ルネサスは代替生産も検討して影響を最小限に抑えたい考え。
柴田英利社長は「なんとか1カ月以内での生産再開にたどり着きたい」とした上で、1カ月での生産再開目標は「元のキャパシティ(生産能力)に戻ることも含めたターゲット」と語った。入れ替えの必要な製造設備があることなどから、「不透明感は残っている」とも述べた。
火災が起きたのは先端品を扱う300ミリラインのめっき装置。同ラインの2%に当たる11台が焼損した。19日午前3時前に火災が発生し、午前8時過ぎに鎮火を確認した。
影響を受けた半導体の3分の2が自動車向けで、残りは産業やインフラ、情報通信向け。すでにラインに乗っていた仕掛品が受けた影響の全容が判明するのは1週間くらいかかるという。200ミリラインとウェハーテスト工程は稼働しており、製品の出荷は継続している。
復旧作業は焼損の激しい部分の修繕とクリーンルーム全般のすす汚れの影響の除去が中心で、自動車メーカーや自動車部品メーカーなど取引先の約50人の支援も受けている。
半導体は世界的に需給が逼迫しており、自動車メーカーの一部はすでに生産を調整している。この火災でさらに影響が広がる恐れがある。
柴田社長は「半導体供給への影響は大変大きくなると危惧している。代替生産などあらゆる方策で最小化したい」と述べた。火災の影響を受けた製品の3分の2は、自社の他工場や生産委託先のファンドリーでの代替生産が技術的には可能で、すでに検討や依頼を始めたと説明した。ただ、「業界全体で生産能力に空きがない分、代替生産は困難になっている」(柴田社長)としている。
同社はウェハー上に回路を形成する前工程を終えた仕掛品を在庫として持ち、需要変動に対応する仕組みを取り入れていたが、2月にも福島県沖を震源とする地震の影響で同工場が一時生産を停止したため、足元はこうした在庫がほとんどない状況だという。
生産再開後の出荷までの期間は、火災被害のなかった装置の中にどの程度の仕掛品が残っているかによる。那珂工場は前工程を手掛けており、原料のウェハー投入から出荷までの期間は主力製品で約70日。
300ミリラインは月商にして1カ月170億円前後で、全社の売り上げの3割弱を占める。売り上げへの影響の多くは4―6月期に出てくる見込み。
火災のあった那珂工場は、2011年の東日本大震災で被災し、ルネサスから車載用半導体の供給を受けられなくなった自動車部品メーカーが生産調整を迫られた経緯があった。
(平田紀之 編集:久保信博)