[ジュネーブ 12日 ロイター] - 国連の国際労働機関(ILO)は12日発表した報告書で、貧困などの危機によって日常的な「現代の奴隷制」の状態に苦しんでいる人が5000万人近くに上り、2016年より約930万人増えたとの推計を明らかにした。
報告書によると、うち半数超が強制労働に従事させられ、残りは強制的に結婚させられている。「脅迫、暴力、詐欺、権力の乱用といった強制のために拒否できなかったり、離れることができなかったりする」ため、どちらも「現代の奴隷」の状態に該当する。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)、武力紛争、気候変動などの危機でより多くの人々が極度の貧困状態に陥り、移住を余儀なくされているのが状況を悪化させていると指摘した。
ILOのライダー事務局長はロイターに対し「全般的に見て、われわれが手を緩めてしまったと思う。強制労働に関して目を離してきた」との見方を示し、雇用慣行と労務管理の改善を求めた。
ライダー氏は、欧州連合(EU)が現在検討している強制労働による製品や輸入品の禁止などの貿易措置も役立つと指摘した。
推計の一部は家計調査に基づいており、強制労働の半数超が中高所得国で発生し、被害を受けているのは移住労働者が現地居住者の3倍超に当たる可能性が高いとした。
報告書では、中国の一部での強制労働に対する懸念も示した。