[東京 20日 ロイター] - 政府の韓国向け輸出管理強化やホワイト国除外について、経済的な影響を懸念している企業は40%台で、半数以上の企業はあまり懸念していないことがロイター調査で明らかになった。懸念しているのは主に半導体関連企業で、反日不買運動や訪日客への懸念はあるものの、サプライチェーンへの打撃や輸出全体への影響は軽微との見方が大勢。韓国が世界貿易機関(WTO)に提訴した場合、日本が勝訴するとの回答が9割を超えた。
今回の調査期間は、7月31日━8月14日。調査票発送企業は504社、回答社数は250社程度だった。
<ホワイト国除外、経済的影響は限定的 交流停滞には懸念>
日本政府の対韓輸出管理強化では、半導体原料3品目の輸出管理を強化しているが、その経済的影響について「あまり懸念していない」と「全く懸念していない」を合わせた回答が56%と半数強を占めた。
一方、44%が「大いに懸念している」、「やや懸念している」と回答。その多くは半導体関連企業からのもので、「半導体の単価が上がると製造原価に跳ね返る」(電機)などの声が出ている。
懸念を示す企業からは、どのような影響を最も懸念しているかについて「日本企業の収益悪化」や「世界経済減速」との回答が2割ずつを占め、一時的な影響を懸念する声が上がっている。一方、「世界的供給網への打撃」や「中長期的な日本企業の競争力低下」といった懸念はまだ少ない。
輸出手続きを簡略化できる「ホワイト国」(輸出優遇国)のリストから韓国を除外し、案件ごとの輸出内容審査に切り替える措置についても、「あまり懸念していない」、「全く懸念していない」との回答が54%と半数強を占めた。
「大いに懸念している」、「やや懸念している」との回答は46%。「日韓関係悪化」を懸念する回答が最も多かった。「民間交流も減少していくことで友好的関係が崩れ、経済的影響が出る」(運輸)といった声がある。
また、「日本企業の収益悪化」や「貿易摩擦拡大」といった影響を懸念する回答は2割未満となり、「日本製品の不買運動」や「世界経済減速」への懸念は数%にとどまった。「日本経済全体でみれば、大きな問題ではない」(化学)といった見方がほとんど。
<政府説明を評価、WTO提訴されても勝訴>
こうした輸出管理強化について日本政府は「外交上の問題で信頼関係が著しく損なわれているうえ、安全保障上、不適切な事案があったため」と説明している。これにより説明が「十分なされている」との回答は20%、「ある程度なされている」が53%を占め、大方が評価できるとしている。
韓国が今回の措置を不当だとしてWTOに提訴した場合について聞いたところ、94%が日本が勝訴できると回答した。
その理由としては「安全保障上の懸念に基づく輸出管理制度の見直し」(建設)であり、「WTOで議論する問題に当たらない」(ゴム製品)といった見方が多かった。また「輸出自体を規制しているわけではなく、手順が変わるだけ」(機械)との受け止めも多い。
実際に輸出手続きを経験している企業からは、単なる手続き上の問題にすぎないとの認識を示す声が多く、「韓国の(反応)は感情論」(機械)との指摘もあった。
一方、敗訴を予想する企業からは「輸出制限の理由は説得力が弱い」(情報サービス)、「もっと早く実施すべきだった。諸外国からみれば徴用工問題と関係づけられても仕方がない」(小売)といった声も出ている。
(中川泉 編集:石田仁志)