[ブリュッセル 16日 ロイター] - 欧州連合(EU)次期7カ年予算について欧州委員会は増額を提案したが、ドイツは現行予算並みに規模を抑えるよう主張しており、対立が鮮明になっている。EU当局者によると、早急に合意がまとまらない場合、EU側が景気浮揚などに向けた提案の縮小を余儀なくされる可能性がある。
EUは2021年─27年の予算について検討を開始しているが、域内経済がリセッション(景気後退)入りするとの懸念が高まり、EU予算の負担額が最も多い加盟国の1つである英国のEU離脱を巡る不透明感があるなか、中期予算を巡る加盟国間の意見の隔たりが過去に比べて大きくなっている。
欧州委員会のエッティンガー委員(予算・人事担当)はブリュッセルで開かれたEU閣僚会議で「1月1日までに予算で合意できなければ、EUが経済的、地政学的に厳しい状況に陥ると強く懸念している」と表明した。ドイツなど加盟国の景気停滞を背景とする域内経済の不調によって合意の緊急性は高まったと強調した。
EUは7カ年予算の策定後に各年の予算を改めて作成する必要があるため、中期予算の交渉を早めに決着する必要がある。
EUの執行機関である欧州委は昨年、総額1兆1000億ユーロ(1兆2200億ドル)の中期予算を提示。国民総所得(GNI)比で1.11%の規模となる。英国の拠出金は含まれていない。
ただ、ロイターが閲覧した資料によると、EU最大の経済大国で拠出金も多いドイツは対GNI比率を1%にとどめたいとの考えを表明。スウェーデン、デンマーク、オランダもドイツの慎重な提案に支持を示している。
現行の2014─20年予算の規模もGNI比で1%となっているが、欧州委は研究やデジタル経済、国境管理、国防などへの支出を引き上げるために前回からの増額を求めている。
一方、独政府は、予算規模をGNI比1%にとどめても、英国の拠出がないため、加盟国の負担額は増えると強調する。
これに対し、欧州議会は、EU予算の純受益国の南・東欧諸国の主張を反映し、GNI比1.3%まで予算を増額することを求めている。議員らはまた、フォンデアライエン次期欧州委員長が新たな優先課題として掲げた気候変動対策や失業給付の財源を確保するよう訴えている。
<野心的予算は困難との見方>
スペインのアギリアノ欧州問題担当相は、閣僚会議で、予算を巡る意見対立は、年内に妥協点を見いだすことをほぼ不可能にしているとの見方を示した。
ただ、あるEU当局者は、2020年上半期まで猶予はあると指摘する。
ポーランドのシマンスキー欧州問題担当相は閣僚会議で、予算規模が低く設定されれば、野心的な政策目標も縮小を余儀なくされると述べた。